「……ふと思ったんだけど。」 「なんだ?」 朝。 僕は何時もの通り朝食を作り、ちゃぶ台に並べて食べていた。 そして、同じようにちゃぶ台に並んでいるのは彼女の生首。 「食事って、必要無いの?」 「食事か……。」 少し目を逸らし、何かを考える彼女。 そして。 「今まで黙っていたが、君の精液を毎日摂取しないと死んでしまうのだっ!」 「だったら初日の時点で死んでるでしょ。  って言うか今までどうやって生きてたの?」 「……。」 むにゅん。 「ちょっ……。」 「余計なツッコミを入れようとすると、胴体が食事の邪魔をするので気を付ける様に。」 突然背後に回り、背中から抱きついてくる胴体。 やっぱり下着を身に着けてないので、胸の柔らかさが僕の身体にダイレクトアタック。 「ちなみに、私自身に突っ込むのなら何時でもウエルカムだ。むしろ望ましい。」 「朝からそんなエロい事はいいから。」 「…馬鹿な。  健全な若者は、毎朝ケダモノでウハウハだと聞いていたのにっ。」 「……その知識は偏り過ぎだから訂正してね。」 ほぐした鮭を食べつつ、僕は律儀にもツッコミを入れた。 「で……本当のところ、食事についてはどうなの?」 「……ぶっちゃけてしまうと、食事自体は必要無い。  かと言って、血肉とか精液とかも残念ながら必要無い。」 「全然残念じゃないから。」 「本当に必要であれば、君と合法的にえっちな事を出来るいいチャンスだったのだが……。  ……淫魔連中に頼めば、何とかその辺を……。」 「いやいやいや。  そう言う無駄な事は本当にノーサンキューだから。」 食事を終え、僕は食器を流しに置く。 ……胴体が畳に人差し指を付けてイジイジしてるのは、拗ねてるぞってアピールなのだろうか。 「……。」 「……機嫌直してよ。」 「別に拗ねてなどいないぞ。」 いじいじ。 胴体の方は思いっきり拗ねていた。 ……ああもう、こういう仕草は本当にずるいなぁ。 「…よいしょ。」 きゅ。 なでなで。 「……むぅ。」 彼女の生首を胸に抱きしめ、頭を撫でる。 「少しはこれで機嫌が直ったかな?」 「……あっさりと認めるのは悔しいが、物凄く嬉しい。」 ぴとっ。 さっきまで拗ねていた胴体が、再び僕に身体を擦り付けてくる。 「ん、良かった。」 「…君は案外、女誑しなのかもしれないな。」 「え?そうなの?」 「……その上無自覚か。性質が悪いな。」 ふぅ、とため息を付く生首。 ……僕、何か悪い事したかなぁ。 「まあそれはそれで対策を考えるとして。  食事の類だが……肉体的には勝手に満たされるっぽいので問題無いな。  実際、今まで碌に食事を取った経験など無いしな。」 「…肉体的にはって事は、それ以外で必要な事があるの?」 「精神的な安定やら糧やらは人間でも必要だろう?  幾ら美味しい食事があっても、引きこもりニートだと美味しくないだろうに。」 「……それ、上の偉い人には言わないでね。本気で凹んでるから。」 「む?」 閑話休題。 「兎も角、精神的な安定で言うと……以前はデュラハンとしての責務がそれに値していたな。」 「そうなんだ……。」 「基本的に生まれからデュラハンだからな。違和感など感じないさ。」 「成程……。」 言われてみれば、生まれがデュラハンなのだからそうなのかもしれない。 ……あれ? 「……じゃあ、今は?」 「……。」 僕の問いに、彼女は顔を赤らめつつ僕を見上げる。 「…え?」 「……君に決まっているだろう。  だからこそ、君の事を求めて仕方が無いんだ。」 「そ、そうなんだ……。」 つまり、精神的な糧として僕とのいちゃいちゃが必要であると。 「ちなみにいちゃいちゃでも構わないのだが、出来れば  えっちな事の方が本能的に強いから更にグッドだ。」 ぐっ、と親指を立てる胴体。 「えっと、その……。」 「もっと言えば、毎日君と結ばれると素晴らしい。  なんだったら一日中君と愛のある性交渉だと完璧だ。」 「いや、それ無理。絶対無理。」 「大丈夫だ、それについては理解している。  例え君が大丈夫だとしても……残念ながら、私の身体が君の快楽に耐えられないからな。」 つーっ。 何故か僕の背中を人差し指でなぞる胴体。 「流石は私の夫になる人間だ。  いとも簡単に、私の身体も心も征服してしまうとは。」 「……なんだろう、その言い方に色々と反論したいけど出来ないこの気持ちは。」 確かに、気が付くと彼女が息も絶え絶えな状態になってる事が多いからなぁ。 ……僕、そんなにえっちなのかな。 「…ま、いいや。  さてさて、今日もお店を開きますかねぇ。」 「……そうだった。その事で話があるのだ。」 きゅぽん。 首を引っ掴み、自分の胴体と接合させる彼女。 ……と言う事は、かなり真面目な話なのだろう。 「実は、私の知り合いが散髪して欲しいと言っているのだが。」 「そうなの?  ……って、つまりは……。」 「うむ。私と同族だ。」 デュラハンですか。成程。 「其処で、その……流石に此処まで来るのは厳しいらしくて、是非に出張を  お願いしたいと言われていて、だな……。」 「んー……今までそんな事はやった事無かったんだけどなぁ……。」 「いやその、ちゃんと鏡やら髪を洗う場所とかは準備してあるんだ。  それに、是非君に切って欲しいと言われているのだが……。」 「……むぅ。」 ……怪しい。 彼女の性格からすると、大抵の事はずばずばと言ってのける性格の筈だ。 にもかかわらず、こんなに歯切れの悪い言い方ばかりするって事は……。 「……何か隠してる?」 「……な、何も隠している訳が無いじゃないかっ。」 ぼとり。 わたわた。 よっぽど慌てたのか、接合があっさりと解けたようで。 手をブンブン振り回しながら慌てる胴体と、気まずそうな顔をする生首が。 「……とりあえず、何か言う事はある?」 「……事情は後で説明するから、是非ともお願いしたい。」 「……ナニコレ。」 ある程度の道具を纏めて出発しようと店の外に出たら、其処には矢鱈頑丈そうな スポーツカー……っぽい何かが。 「さあ乗るといい。出来れば助手席がグッドだ。」 「いや、僕は免許持ってないから助手席だけど……運転出来たの?  って言うか、そもそも免許は?」 「ふむ……免許は無いし、車の運転も出来ないが何か?」 「何か、じゃないよ。  どうやってコレを運転するのさ。つーかこの車は何処から持ってきたの?」 「む……時間が無い。  とりあえず説明は中でするから乗ってくれ。」 がちゃ。←助手席のドアを開けた ぽいっ。←中に放り込んだ がちゃ。←助手席のドアを閉めた 「うわ無理矢理……って、アレ?」 よく見ると、ドアを開ける為のレバーっぽいアレが何処にも付いてない。 って言うか、窓ガラスを開ける為のスイッチとかも無いし。 「ちゃんとシートベルトをしないと駄目だぞ。危ないからな。」 「え……うん。」 言われるがままに、シートベルトを付ける。 「ええっと、この車色々と突っ込みたいんだけど……。」 『そ、そんな……わたし、いきなり犯されちゃうんですか?』 「……は?」 今の声は、何処から聞こえた? 『で、でも……ご主人様が認める程の方ですし、ちょっとだけなら……きゃっ♪』 「五月蝿い黙れこの牝豚。つべこべ言わずに走り出せ。」 『ああっ、今日もご主人様の罵りが素敵……。』 ふむ。 ひとつ、彼女は全く動揺していない。 ふたつ、此処にあるのは僕と彼女とこの車っぽい何かだけ。 みっつ、謎の声がする度に微妙に揺れるこの車。 「……まさか、この車って。」 「ようやく気づいてくれたようだな。  さあさあとっとと自己紹介をするんだこの屑。」 『初めまして……わたし、ご主人様の首無し馬で御座います。  名前はちゃんとありますが、個人的には牝豚なり雌奴隷なりが嬉しいです♪』 首無し馬。一般的に知られる名前は『コシュタ・バワー』。 デュラハンが乗る馬車を引く存在。 ……ってなっている筈なんだけど、コレは酷い。色々と酷い。 「ええっと……流石にその呼び名は勘弁して欲しいなぁ。  と言うか、ちゃんと走れるのコレ?」 「ふむ……この役立たずは性格は非常にアレだが、性能はバッチリだ。  走るし飛ぶし潜るしワープも出来るぞ。その上頑丈で強い。  ちょっとしたチート的乗り物だな。」 『うふふ……地球の中心までもひとっ飛びですよ。』 「いや、普通は溶けるから……。」 『その溶け具合がまたいいじゃないですか……ハァハァ。』 「うわ本格的に駄目だこの車っ!?」 主も主だが、その僕は更に駄目だ。 『それは兎も角。  時間も無いので、ひとっ走りしちゃいますね?』 「うむ。くれぐれも安全運転で頼むぞ。  ……もしも私の大事な夫を傷つけてみろ、二度と罵倒しないからな。」 『ひ、ひぃぃぃぃっ!?  頑張ります、超トップスピードでスーパー安全運転しますからぁっ!?』 「それは最大限の脅しになるんだ……。」 どうしたもんだろう、この乗り物。 『はい、到着です♪』 「…予定の30分前か。  相変わらず走りだけは見事だな。」 『勿論です。  そんじょそこらの首無しライダー程度には負けませんよ。』 「……。」 車と主が何か会話をしてるっぽいけど、僕は会話に参加する余裕なんて全然無かった。 「む……大丈夫か?」 「……あの滅茶苦茶な運転で大丈夫かと聞くの?」 「ふむ……いつも通りだったよな?」 『いつも以上に安全運転でしたよ?』 ……ああ、そうか。 そもそも人間の常識を求めていたのが間違いだったか。 「今度は、人間が大丈夫な運転でお願い……うぷっ。」 「だ、大丈夫かっ!?」 『は、はわわわわっ!?  わ、わたし罵倒抜きですかっ!?』 思わず吐きそうになる僕を、彼女と車が本気で心配する。 …二人(?)とも、悪気は無いんだよなぁ、きっと。 「…いや、今回は知らなかったんだからどっちも悪くないよ。  普通の人間が大丈夫な運転を教えなかった僕も悪いし……。」 「……っ。」 『……っ。』 「……ん?どうしたの?」 彼女の瞳が、何故か物凄く潤んでいるんだけど。 そして、何故かシートベルトがやけにきついんだけど。 『ご、ご主人様っ!  わたし、事もあろうに滅茶苦茶ときめいちゃいましたよ!?』 「当たり前だ!私だって今すぐ抱きついてラブラブチュッチュしたい気分だっ!!」 「…はいっ!?」 『……ご主人様。  まだ約束の時間までは余裕があるですよ……じゅるり。』 「そ、そうだな。  余り早く行っても、逆に迷惑だからな……じゅるり。」 「じゅるり、って何なのっ!?」 不味い。 何だか分からないけど、このままだと凄く不味い気がするっ! 『ちょ、ちょっとだけなら味見OKですか?』 「いや、それは駄目だ。  お前は其処で私と彼の子作りシーンを見せ付けられて悔しがるといい。」 『くっ……でも、それはそれで魅力的……っ。』 「いや、それはどうだろう!?  って言うか、準備にも時間が掛かるから早く行こうよっ!?」 「む……そう言われては仕方が無いか……。」 『あう……残念です。』 「はー……広いねぇ。」 「無駄に広いだけだがな。」 とりあえず車から脱出した僕は、彼女に連れられてとある部屋に案内された。 ちなみに、何故か彼女はちゃんとしたデュラハンの格好だ。つまりは甲冑姿。 「後少しで到着するらしいから、適当に準備してくれ。」 「準備って言われても……鏡も凄いのあるし、椅子も頭洗う準備も出来てるし。  使うのは持ってきた鋏ぐらいかなぁ……。」 ちゃきちゃき、と鋏を鳴らしつつ、僕は部屋の窓から外を眺める。 「……お空って、こんなにどす黒い色してたかなぁ……。」 「……夜で雨降りと言う意見はどうだろうか。」 「……此処、何処?」 「そ、それは……。」 ばたん。 「ん?」 扉が開き、入って来たのは大体50〜60歳ぐらいの初老の男性。 でも甲冑。……って事は、やっぱりデュラハンなのかな。 「っ!!」 がちゃり。 「え?どうしたの?」 そして、その男性の姿が見えた途端、片足を立てた状態でその場に屈む彼女。 「ふむ……君が、紹介のあった散髪屋さんかな?」 「は、はぁ……その通りですが……。」 「……成程。君が……。」 頷きながら、僕をじっくりと見つめる男性。 「っ……。」 がちゃがちゃ。 「ど、どうしたの?」 「……な、なんでもない。大丈夫だ。」 「……甲冑が鳴るぐらい震えてる状態の、何処が大丈夫なの?」 どうしたんだろう。 今日は朝から様子が変だったけど、今は益々変な状態だけど。 「何か具合が悪いんだったら、少し休んでた方が……。」 「そ、そう言う訳では無いんだ!  ただ、その……。」 ちらり。 「……私の顔に、何か付いてるかね?」 「っ!?い、いえ何もっ!?」 がちゃがちゃがちゃがちゃ。 「……。」 どうやら、原因は目の前の男性にあるっぽい。 良く分からないけど……きっと、偉い人か何かなんだろう。 まあ、僕は至って普通の人間だから良く分からないけど。 「…とりあえず、散髪を始めても宜しいですか?」 「……うむ。宜しく頼む。」 ちょきちょき。 「「「……。」」」 無言で髪を切る僕。 無言で髪を切られる男性。 無言でおろおろしている彼女。 「……むぅ。」 「……落ち着きませんか?」 「いや……あのような彼女を見るのは初めてでね。  実に面白い。」 「はうっ!?」 初老の男性に笑みを浮かべられ、思わず彼女が声を上げる。 ぼとり。 わたわた。 「く、首がっ……ああっ、間違って蹴って!?」 ごろごろ。 「……出て貰います?」 「いや、個人的には居て貰った方が楽しいかな。」 「それならいいんですけど……。」 後ろでパニック状態になってる彼女を放置した状態で、僕は散髪を続ける。 本当は手助けしたいけど、仕事はちゃんとしないといけないし。 ……だけど。 「は、はうっ……。」 「……。」 「よ、よし、ようやく落ち着いて……ぐおっ!?」 「…………ごめんなさい。  僕が落ち着かないので、手助けしてきても構いませんか?」 「……そのようだね。  すまないが、彼女の事をお願いしてもいいかな?」 「いえいえ。  むしろ落ち着いて散髪が出来ない僕が謝るべき場面ですから……。」 一旦鋏を置き、彼女の頭を拾う。 「よいしょ、っと。」 きゅぽんっ。 「……す、すまない。」 「大丈夫、ちゃんと断りを入れてからこっちに来たから。」 きゅ。 「あ……。」 男性に見えないように、そっと彼女の手を握る。 「…少しは落ち着いた?」 「……。」 こくん。 「ん、良かった。  もう少しで終わるから、それまで待っててね。」 「……ん。」 こくん。 小さく頷いた彼女の頭を少し撫で、僕は再び鋏を握る。 「お待たせしました。」 「いやいや、構わないよ。  しかし……君は凄いな。」 「はい?」 ちょきちょき。 「見たまえ。さっきまであんなに慌てていた彼女が嘘の様だ……。」 鏡を見ると、直立不動で立っている彼女の姿が映っていた。 どうやら落ち着いたらしい。 「…別に大した事はしてませんよ。  そもそも、彼女は元々しっかりした女性だと思いますし。」 ……しっかりし過ぎて、僕は手玉に取られる事が多いんだけど。 「っと……もうちょっと切りますか?」 「いや……大体こんな程度だろう。  ……本来の目的も果たせた事だし。」 「……はい?」 すっ、と突然立ち上がる男性。 「えっと……?」 「……たかが人間と思っていたが、それは私の間違いだった様だ。  君ならば、彼女を任せてもいいと思ったよ。」 「は、はい?」 ぽんぽん、と僕の肩を叩く男性。 ……はて。僕の知らないところで、何か大変な事が起きてる気がする。 「……彼なら、お前のいい夫になるだろう。  他の連中も、私が言い聞かせておこう。」 「ほ、本当ですかお爺様!?」 「……は?」 お爺様?誰が? 「うむ。  ……彼が人間の生を終えるまでの間、他の女性に奪われる事の無いようにな。」 「勿論です!  私の全身全霊を掛けて、彼に尽くす所存です!」 「お、おや……?」 なんだろう……この雰囲気って、もしかして……。 「ところで……彼とは、もう……?」 「……は、はい。」 「ほほう……で、どうだった?」 「そ、その……学んだ知識は、所詮知識でしかないと実感しました。  幾ら知識があっても、逞しい男の腕に抱かれてしまえば、ただの雌で……。」 「って、いきなりなんの会話をっ!?」 流石にこれ以上は聞き流せなくなった僕は、思わず会話に突っ込んでしまった。 「はっはっは……無論、健全な夜の生活だよ。」 「そんな笑顔で当たり前の様に言わないで下さいっ!  って言うか、お爺様とかいい夫とか、色々気になる単語が出てたんですけど……?」 「……む?」 其処で、男性の顔が僅かに歪み……彼女の方を見る。 「……伝えてなかったのか?」 「……す、すみません。  私に勇気が無いばかりに、伝える事が出来ず……。」 「えっと……何?僕は一体、何を聞いてないの?」 今度は僕が不安になって来たんですが……。 「ふむ……まあなんだ。  その辺の説明は……食事でもしながらにしようか。」 「ただいま……。」 ぱたん。 ようやく家に帰りついた僕は、そのまま畳の上に突っ伏した。 「その……怒って、いるよな……?」 「……そんなのを考える余裕すらまだ無いよ……。」 食事をしながら、初老の男性が語った事。 ひとつ、彼女は魔界でも5本の指に入る名家の一人娘。 ふたつ、彼女は結婚するのが嫌で家の反対を押し切り、デュラハンとして活動していた。 みっつ、彼女は君が好きで結婚したい。 よっつ、君は彼女と結婚すると、名家を継ぐ事になる。ただし人間の生を終えた後でOK。 いつつ、彼女が望んでるから是非えっちしてあげてくれ。濃厚な奴をたっぷりと。 ……最後のは本気で良く分からないけど、とりあえず事情は伝わった。 「つまり、今日のは僕をお祖父さんに見定めさせるつもりだったって事……?」 「……すまないとは思っている。  だが、我が家の連中に君の素晴らしさをちゃんと知って欲しかったんだ……。」 突っ伏した僕の横に、そっと置かれる彼女の生首。 胴体の方は、何故か土下座。 「……君が嫌だと言っても、それは仕方の無い事だと思う。  その時は、私も引き下がるしか無い……。」 「……。」 どうしたものかなぁ。 ぶっちゃけ、いきなり魔界の名家とか言われても、全然ピンと来ないし。 つーか、普通の人間にそんな事言われても困るし。 ……でもなぁ。 「……。」 こんな彼女の悲しそうな顔を見せられたらなぁ……。 ……ああもう。仕方が無い。 「……こら。」 むに。 「は、はうっ!?」 突然僕にほっぺたを摘まれ、彼女が変な声をあげる。 「……他の女性に奪われる事の無いように、全身全霊を掛けて尽くすんじゃ無かったの?」 「……は?」 「は、じゃ無くって。  自分のお祖父さんの前で、あれだけ啖呵を切ったんだから。」 「っ……!?  じゃ、じゃあっ……。」 「とりあえず……人生終わるまでは宜しく。」 「も、勿論だっ!  人生どころか、未来永劫一生嫌と言う程、君とラブラブしてやるからなっ!!」 めでたしめでたし。