ぴんぽーん。 「ん、誰だろ。」 「むう……折角イチャイチャ具合が高まってきたと言うのに。」 夜。 彼女の頭を撫で撫でしていた僕は、チャイムの音に立ち上がった。 とりあえず、手に持っていた彼女の生首は置いておこう。持ったままだと怖いだろうし。 ……後、大人しく正座してる胴体は胴体でどうなんだろう。 「はーい。」 がちゃり。 「お届物です。署名をお願いします。」 「……えーと。」 僕の目に映ったのは、これでもか、ってぐらいの大量のダンボール箱っぽい何か。 そして、目の前の多分女性な配達員さんには悪魔っぽい羽が。 「……聞くまでも無いですけど、彼女宛ですね?」 「言うまでも無いとは思いますが、その通りです。」 さも当たり前の様に答える配達員さん。 「…おーい、お届物らしいよー。」 「む?私にか?」 「って、ちゃんと服を着てよ!」 「着てるではないか、下着を。」 「それ服じゃないし!」 「淫魔から見たらコレも至って普通の服だから問題無い!」 「そう言う問題じゃないよ!?」 思わず頭を抱える僕。 後、頭を持ったまま来るのは止めて欲しい。デュラハンとしては正しいだろうけど。 「あ、あの……とりあえず、署名下さい……。」 「ああ、すまない。つい彼と一緒だとイチャイチャしてしまう。」 「今のはイチャイチャだったのか……。」 「そうだろう?」 「多分そうかと。」 デュラハンが聞き、悪魔っぽい配達員さんが肯定する。 どうやら魔界ではコレもイチャイチャらしい。 「ん、これでよし。  とりあえず荷物を入れてくれ。」 「畏まりました。」 「って、一人で背後の全部?  流石に辛いでしょうから、僕も手伝いますよ。」 腕まくりをして、荷物を持とうとする僕。 そんな僕の手を、そっと掴む配達員さん。 「いえ、大丈夫です。  この程度の荷物でしたら……。」 くいっ、と指をかざす配達員さん。 すると。 ひょい。ひょい。ひょいっ。 「……魔法みたいだ。」 「魔法です。」 勝手にダンボール箱が宙へ浮き、どんどんと家の中に入っていく。 1分も経たない内に、荷物は全て片付いてしまった。 「とりあえず使われて無いお部屋があるようでしたので、そちらに納めました。  配達間違い等は無いかと思いますが、もし何かありましたらこちらにご連絡下さいませ。」 「あ、はい。」 配達員さんから紙を受け取る。 ……うん、さっぱり読めない。 「ごめん、君が持ってて。  僕にはさっぱり読めないや。」 「ふむ……日本語では無いから当然だな。  まあそれはそれとして……代金の方だがコレで足りるか?」 じゃらり。 彼女が手を差し出すと、其処には綺麗な宝石が沢山。 「……えっと、その……。」 「ん?もしかして足りなかったか?  ならば……。」 じゃらじゃら。 彼女が何かを唱えると、空間に穴が開き、其処から更に宝石が降り始める。 「うわ、玄関が宝石だらけ……。」 「好きなだけ持っていくがいい。  もしコレでも足りぬの言うのなら、後日支払いに行こう。」 「いえ、あの……逆、なのですが……。」 「……逆、だと?」 「はい。  ……どの宝石を戴いても、こちらがお釣りを返せない程価値が高すぎます。」 困った顔をする配達員さん。 「そうなのか?  ……なら仕方が無い。釣りは要らぬから、適当に幾つか持っていくといい。」 「そ、それは困ります。  幾らなんでも、釣り合いが取れなさ過ぎですので!  それに私、個人経営ですし!」 「……えーと。  僕には良く分かって無いんだけど、そんなに釣り合いが取れてないの?」 正直宝石の価値なんてイマイチ分かって無いからなあ……。 更に言えば、魔界の配達業界の相場なんて知らないし。 「そうですね……。  人間界で例えると、チロルチョコを買うのに日本の国家予算を提示されている  と思っていただければ……。」 「……確かに無理だね。」   ええっと、つまり今玄関には大量の国家予算がばら撒かれてるって訳ですか。 それは怖い。 「更に言えば……これがただの宝石でしたら戴こうかとも思ったのですが、  どれも魔力を帯びてますので……。」 「……もしかして、僕が迂闊に触ると危なかったりする?」 「……恐らくは。」 ……本当に怖くなった。 「とりあえず、大至急片付けて。  間違って踏んじゃって僕が危なくなったら困るし。」 「……すまない。  実は……さっきのは取り出すだけの魔法で、仕舞うには手で放り込まないといけないんだ。」 「……なんですと?」 うっかり、発動。 で、数十分後。 「よ、ようやく片付いた……。」 「つ、疲れました……。」 「……お疲れ様。とりあえずお茶でもどうぞ。」 彼女と配達員さんが空間に開いた穴に宝石を放り込み、ようやく宝石は片付いた。 ……僕も手伝いたかったけど、触ると危険だから触れないし。 「さて……結局のところ、支払いはどうしよう?」 「む……そうだった。  宝石を片付けたところで、根本的な解決にはなっていなかったな。」 「……あの、それなのですが……。  ひとつだけ、方法が無い訳でも無いのですが……。」 「あるの?」 「あるのか?」 僕と彼女の視線が、配達員さんに向けられる。 「その……私、実は吸血鬼でして……。」 あーん、と配達員さんが口を開ける。 確かに、配達員さんには牙が生えていた。 「それで……たまに、配達の代金として生き血を戴いたりもしているのですが……。」 「……生き血?」 なるほど。吸血鬼だし、生き血でも問題無いよね。 って、待てよ。 問題:此処に居るのはどんな人たちでしょう。 答え:デュラハンと人間と吸血鬼。 「……僕!?」 「だ、大丈夫です!  ちょっとだけちくっとしますけど、後はすっごく気持ちいいですから!  それに今回の配達量で言ったら、200ccぐらいですし!」 「だ、駄目だっ!  彼は私の夫なんだぞ!例え血の一滴だって渡せるものか!」 慌てて僕を抱きしめ、配達員さんを睨む彼女。 ……うん。その気持ちは凄く嬉しいんだけど。 「……他に丁度いい方法は無いんだよね?」 「その……申し訳御座いません。  素直に宝石を受け取ればいいのでしょうが、流石にそれは出来かねますので……。」 「チロルチョコに国家予算じゃ確かに無理だよね。  ……なら、仕方無いかな。」 「そ、そんなっ!?」 ぽろり。 わたわた。 「ああもう、落ち着いて……。」 動揺しすぎて落ちた彼女の頭を拾い上げる。 「これ以外に方法は無いんだから、仕方無いでしょ。  それに、わざわざ荷物を運んでくれた配達員さんをそんなに困らせたいの?」 「そ、そのように言われると……。  ……分かった。今回は我慢する。」 「と、言う訳なので……生き血でもいいですか?」 「は、はいっ。」 「では……宜しいでしょうか?」 「お願いします。」 玄関では流石にどうかと思ったので、配達員さんには家の中に入ってもらい。 今まさに、僕は吸血鬼に血を吸われると言う初体験の寸前だったりする。 ちなみに、座った僕の前から配達員さんが抱きついて吸うらしい。 これが一番吸いやすいのだとか。 「いただきます。」 「はい、どうぞ。」 かぷり。 「ん……。」 一瞬痛かったけど、それも注射程度の痛みだった。 これなら大丈夫かな。 ちゅー。 「……っ!?」 吸われ始めた瞬間、僕の身体にとんでもない衝撃が走った。 ……いや、これはなんていうか……。 「吸血鬼の吸血は、相手に様々な効果をもたらす。  そして、今回の場合は……性的興奮だったようだな。」 さわさわ。 「あうっ!?」 背後から伸びてきた手が、服の上から下半身を撫で回す。 「ふふ……少し撫でられただけで、とんでもなく感じてしまうだろう?」 「な、何をっ……。」 後ろを向きたいけど、配達員さんに吸われてる最中だから振り向けない。 「折角君にえっちで勝てそうな状況だからな。これを活用しない手は無いだろう?」 「いやいや、今は支払いの途中だから!」 「ぷぁ……あ、あの、私は見なかった事にしますので……。」 「そう言う問題じゃ無くて!」 「すまないが、出来るだけゆっくり吸ってくれると有難い。  その間に、彼をたっぷりと昇天させたいのでな。」 「か、畏まりました……あむっ。」 「貴女もあっさり言う事聞かなくてもっ!?」 うあ……吸われ始めた途端、再び変な気分にっ……。 「さて。  この体勢だと普通なら手でしか悪戯出来ないのだが、幸いにも私はデュラハンだ。」 きゅぽん。 「こうして顔だけを君のそそり立った一物に近づければ口でも奉仕可能!  私も喉奥を突かれて興奮し、君もいつも以上に濃い白濁を私の口内にたっぷりと!  更には君の射精を私の口で受け止める事により、配達員さんの服を汚さずに済む。  まさに一石三鳥のナイスアイディアだ!!」 「それ絶対に自分がごっくんしたいだけでしょ!?」 「ちゅるっ……これが今日最後の仕事ですから、白濁で汚されるのは吝かでも……。」 「あああっ、まともかと思ってた配達員さんもちょっと駄目っぽいっ!?」 「で、では……確かに代金、戴きました。」 「ああ。世話になった。」 ほんのりと頬を赤らめつつ、自分の衣服を整える配達員さん。 満面の笑みで言葉を返す彼女。 そして。 「……ぅ。」 「……だ、大丈夫ですか?」 「……大丈夫に見える?」 「あ、あはは……。」 色々と搾り取られ、げっそりとしてる僕が居たりする訳で。 「大丈夫だ。淫魔に比べたらこんなのは序の口だからな。」 「そう言う問題じゃ無いよね……。」 「だが結局のところ、君も暴走して色々やらかしただろう?」 「うぐ……。」 其処を言われると、非常に辛い。 何故なら……。 「わ、私は気にしておりませんので……。  そもそも精液でも糧に出来ますし、それに……久々に抱かれて、満足ですから。」 「ううっ……むしろ責めてくれた方が僕の精神的に……。」 どうやら、配達員さんの吸血で僕の精神が一時的に駄目になってしまったらしく。 彼女を好き勝手するだけで無く、配達員さんまでも無理矢理にシテしまったのだ。 「デュラハンと吸血鬼のご奉仕なんて、人間の身では味わえないぞ?  もっとも、悪魔でもそうそう無いシチュエーションだが。」 「昔は随分と人間相手に色々しましたが、まさかその人間に犯される日が来るなんて……。  ……しかもそれで悦ばされてしまうとは思いませんでした。」 「……は、針のむしろだ。」 二人とも僕にトドメをさしたいの?そうなの? 「それでは、失礼致します。  配達がありましたら、是非宜しくお願い致します。」 「了解した。  その際は是非連絡させて貰おう。」 「……その際の代金は……。」 「……生き血だな。」 くすり。 にやり。 「……悪魔。」 「違うな。デュラハンだ。」 「違います。吸血鬼です。」 ……ですよねー。 「……で、さっきの荷物って誰からだったの?」 「ふむ……。」 配達員さんが帰った後。 僕は疑問に思っていた事を彼女に問いかけた。 「……お爺様からだ。」 「お爺様って……この前のあの人?」 「うむ。品名は……『嫁入り道具』らしいぞ。」 「こんな大量に?」 「私も何が入っているのか分からないから、中身を見てみるか。」 がさごそ。 彼女がダンボールを開け、中身を引っ張り出す。 すると、出てきたのは。 「……セーラー服?」 間違っても水兵さんではない。 日本の高校生が着ている事が多いセーラー服だ。 がさごそ。 「こちらはブレザーだな。」 「……嫁入り道具、だよね?」 「さっき受け取った紙には、間違いなく『嫁入り道具』って書いてあるぞ。」 「いや、見せられても分からないから。」 日本語以外は読めません。 「とりあえず、箱の中身を適当に引っ張り出してみるか。」 「そうだね。」 がさごそ。 がさごそ。 がさごそ。 「ナース服、ブルマ、バニー服、チャイナ服……。」 はて……お爺様はご乱心されましたか? 「えっと、そっちはどう?」 「激しく夜のアイテムだな。」 「……なにそれ。」 僕が振り向くと、其処には彼女が取り出したアイテムが並べられていた。 「……ろ、ローターにバイブ?」 「目隠しに鞭にアナルビーズもあるぞ。更にはこんなのもある。」 彼女が手に持っていたのは、輪っかっぽい何か。 「これ……まさか。」 「胸とか女性器とかに付けるピアスの類と思う。  実際に見た事は無いから詳しくは分からんが。」 「詳しく分からなくてもいいし、むしろそんなの要らないから。」 と言うか、何を送ってきてるんですかあの人は。 「メモがあった。お爺様からだ。」 箱の中から、一通の手紙を取り出す彼女。 「とりあえず読んでくれると嬉しい。  多分僕には読めないだろうから。」 「分かった。  『彼との夜の生活に潤いを与える品を送る。活用するように。』」 「……は?」 「『彼との夜の生活に潤いを与える品を送る。活用するように。』」 「いや、文章自体は分かってるんだ。分かってるんだけど……。」 ……僕を一体どんな風に見てたんだろう、あの人。 「……ふむ。  聞くが、君はこのような趣味はあるのか?」 ちゃらちゃらと、手に持った金属質な物を鳴らす彼女。 「無い。全く無いです。なのでとっとと送り――」 「送り……なんだ?」 にやり。 「……今度のゴミの日に捨てようね。うん。」 危ない。 送り返すとなると、絶対に呼ばれる。そしてまた吸われる事になってしまう。 「残念だ。折角また暴走する君が見れると思ったのだが。」 「僕が見たくないからご遠慮下さい。」 「それについては要相談として。衣服についてはどうする?」 「衣服……。」 セーラーとかブレザーとかブルマとかですか。 それは……。 「衣服は夜の潤いになりそうだな。保管するとしよう。」 「なっ!?」 「君の顔を見れば分かる。僅かではあったが、顔が緩んでいたぞ。」 「そ、そんな事は……。」 「ならば聞くが、私が今からこのセーラー服を着ると言ったらどうする?」 「はい?」 「その上、そのまま君とたっぷりえっちしたいと言ったら?」 「……なんですと?」 彼女が今からセーラー服を着て、そのまま僕とえっちしたい……。 ……はっ。 「……君は分かりやすくて助かるな、本当に。」 むにゅん。 くすくすと笑みを浮かべながら、僕の背後から抱きつく彼女。 そして当然の様に、彼女の手は僕の下腹部に伸びている訳で。 「あれだけ出したのに、もうこんなになってしまったのか?」 「こ、これは……。」 「構わん。それだけ私を求めていると言う事だからな。」 すりすり。 身体を摺り寄せ、僕の耳元で彼女が囁く。 「それで、どうする?」 「どうする、って……?」 「……セーラー服。」 むくむく。 「下の君は実に素直でいい。今度からこちらに聞く事にしよう。  ……ていっ。」 ひょいっ。 「なっ!?」 下腹部に伸びていた手が、いつの間に足に伸びていて。 僕は所謂、お姫様抱っこをされていた。 「さあ寝室に行こうか。そして早速セーラー服だ。」 「いやいや、ちょっと待ってよ!?」 「大丈夫だ。ちゃんとブルマも持って来ている。」 「そう言う問題じゃ無くてさ!?」 「ならばブルマは要らないな?」 「……突っ込むところは其処じゃ無いでしょ!」 「回答が遅かった。つまりは必要だと心の中で思ったな。」 その通りでした。ごめんなさい。 「さて、今日はどんなケダモノになってくれるのか楽しみだな。」 「だから待ってー!?」 んでもって。 「ふむ……セーラー服とブルマだと『先生プレイ』になるのだな。覚えておこう。」 「うううっ……僕の馬鹿……。」 駄目性癖を出した駄目な僕と、それを受け入れる駄目デュラハンが居たとか居なかったとか。 どっとはらい。