※ハーレム大好きな作者なので、なんと、全員とコトに及んでいる設定で書いています。  後、伊吹・沙耶ルート後っぽい雰囲気ですぞ? ・幽霊 「そう言えば、最近出るらしいぜ。」 「……何が?」 昼休み。 俺達は、教室でそれぞれ弁当やパンを持ち寄り、食事をしていた。 メンバーは春姫、杏璃、ハチ、準、沙耶と信哉。 そして今日は、伊吹とすもも、小雪さんも参加していた。 ハチは『学園の良いところが揃ってる』とおおはしゃぎしていたが。 あと……全員ご都合良く出演だ、との突っ込みは禁止。 「幽霊だよ幽霊。最近良く噂になってるんだ。」 「って、どうせ学園7不思議みたいな、出鱈目じゃ無いのか?」 「そうよね、ハチの言う事ってば、大抵大ハズレだもの。」 すもも作超特大弁当からおかずをつまみつつ、準が突っ込みを入れる。 「ふむ…特に怪しい気配などは感じなかったが……。」 「いや、真剣に考える所じゃ無いぞ信哉。適当に聞いとけ。」 「あはは……。」 笑みを浮かべつつも、否定はしない春姫。 ハチの言動が大体分かってきたらしい。 「で、ハチが知ってる幽霊ってのはどんなのなのよ?」 「良くぞ聞いてくれました杏璃ちゃん!  …とりあえず、女性の幽霊らしい。そして、あちこちに出現し、すすり泣いているらしいんだ。」 「……泣き声、ですか。  でしたら、占い同好会の幽霊部員ではありませんね……。」 「…本当の幽霊部員だから笑えませんね小雪さん。」 「そうですか?皆さん、優しいですよ?」 …優しくても怖いものは怖いです。 「それで、何処に出現してるんですか、ハチさん?」 「えっと、俺の聞いた限りだと……確か、保健室と…。」 「えっ!?」 「なっ!?」 びくんっ。 「ど、どうしたの二人とも?」 顔を真っ赤にして俯いてしまった春姫と伊吹に、準が声を掛ける。 「……ほ、保健室なんだ…。」 「ま、まぁたかが幽霊、気にする事も無かろう……。」 気まずそうに目を逸らす二人。 ……ま、まぁ気まずいよな。 「そ、それで他には?」 「えっと、それから『Oasis』にも出た、って話も聞いたな。」 「ええっ!?」 びくんっ。 「えっと、杏璃ちゃん…大丈夫?」 先程と同様、俯いてしまった杏璃に準が声を掛ける。 「う、うん、ちょっと驚いただけで…あはははは……。」 ちらり。 そして、真っ赤な顔でこちらを見つめてくる。 ……いや、まぁ、その、なんだ…。 は、話を早く逸らそう。 「ははは、まぁ幽霊なんて気にせず……。」 「あ、それから占い同好会の部室も出たって噂もあるぞ。」 「っ!?」 びくんっ。 「………。」 全員が小雪さんの方を見る。 「……こほん。」 真っ赤な顔をしつつ、小雪さんは咳払いを一つ。 上手く誤魔化している……つもりらしい。 でも、顔が真っ赤な時点で駄目です。怪しさ満点です。 「…ほ、ほら、そろそろ食べ終わらないと、時間がやばいぞ?」 「…雄真、何か物凄く隠して無いか?」 「いや、そんな事は無いぞ?」 「雄真、あたしの目を見て、もう一度同じ台詞を言ってみて?」 「……そんな事は、無い、と思います。」 「ほら、やっぱりあたし達に何か隠してるんでしょう!  酷いわ、あたしとの関係は遊びだったのね!?」 「って、別に変な関係じゃねぇ!!」 即座に準に突っ込みを入れる。 「ハチ、後知ってる場所全部言ってみなさい。  もしかすると何か反応があるかもしれないわ。」 「後は……教室と屋上だな。普通だぞ。」 「ふぇっ?!」 「っ!?」 びくんっ。 「……大丈夫、すももちゃん?」 「沙耶、大丈夫か?どうしたのだ?」 準、そして信哉がそれぞれ声を掛ける。 「だ、だだだ大丈夫です!別にびっくりなんてしてないですよっ!?」 「だ、大丈夫です……。」 ……全然大丈夫じゃありません。 むしろ、余計に怪しまれています。 「はは、はははははは……。」 で、放課後、屋上にて。 「……えーと、やっぱり俺が悪い……よな。ごめん。」 「あの……もうちょっと、噂にならないように……かな。」 「そ、そうね……春姫もあたしも、気を付けないとね。」 「その点、すももは一緒に住んでいると言うのは、強いな。」 「なら、伊吹ちゃんがお泊りに来たらいいんですよ。もう全力で歓迎しちゃいますよ〜。」 「い、いや、どのような事になるか予測できぬから、よい……。」 「いいんですか?やったぁ!」 「いや、そう言う意味の良い、では無いぞすもも!」 「……完全防音部室、など如何でしょう?」 「いや小雪さん、そんなものどうやって作るんですか……。」 「…ふふふ、秘密です。」 「………。」 じーっ。 「……さ、沙耶ちゃん……電柱を見てぼーっとするのは…。」 「え、あの……す、すみません。つい、思い出してしまって…。」 ・書き下ろしテレカが元ネタです:その1(ラオックス+オフィシャル通販) 「うーん、春姫ちゃんも杏璃ちゃんも良く似合ってるわ〜。  かーさん、思わずお持ち帰りしたいぐらいよ〜。」 カフェテリア『Oasis』。 その日は、新しいウェイトレス服の試着会が行われていた。 で、モデルとなったのが。 「あ、ありがとうございます…。」 「大丈夫よ、春姫。ちゃんと似合ってるわよ。  もっとも、Oasisのアイドルであるあたしには、かなわないけどね。」 えっへん、と言わんばかりに胸を張る杏璃。 そして、恥ずかしそうにしている春姫。 ちなみに、服装は某神戸のパン屋さんっぽい格好。 「ねえ雄真、あたしと春姫、どっちが似合う?」 「……え?」 「……。」 勿論あたしよね、と言わんばかりの顔をしている杏璃と、 こっちをじっ、と見つめてくる春姫。 そして、にやにや笑いのかーさん。 ……しまった、かーさんはこの展開を期待してたのか。 「さあさあ、きっぱりはっきりと答えなさい!」 「………両方、って答えはアリ?」 「雄真くん、それは……駄目。」 春姫に駄目出しを受けてしまった。 …困った。どっちを立てても後が大変な事になる。 ……何か、何か逃げ場所は無いか? 「お待たせしました、兄さん。」 「どうかしら、雄真♪可愛いでしょ?」 次に出てきたのは、すももと準。 こっちはメイドさんっぽい格好だ。 …すももは兎も角、準に対して違和感を抱かないのが怖い。 「あらあら、準ちゃんもすももちゃんも可愛いわ〜。」 「えへへ……。」 「ありがとうございます、音羽さん。」 「……しかし、違和感が無いのが恐ろしいな、準。」 「まぁね。伊達に女の子じゃ無いわよ♪」 「いやお前はオトコだし。」 突っ込まないと、本気で女だと錯覚しそうで怖いからな。 「ゆ〜う〜ま〜?」 「……雄真くん。」 「…う。」 背後に二つの視線を感じ、俺は慌てて振り返る。 「あたし達を無視するなんて、いい度胸じゃない?」 「……雄真くんの浮気者。」 「いや、別にそういう訳じゃ……。」 「んふふー、いい感じねー。」 さらににやにやするかーさん。 …息子を修羅場に送り込んでどうしたいのか。 「すももちゃん、雄真が誘惑されちゃってる。これは負けてられないわ!」 「はい、準さん!わたし達も、兄さんを誘惑です!」 きゅっ。 「にいさ〜ん。」 「ゆ〜うま〜♪」 「だあああ、これ以上ややこしくするなっ!」 背中にすもも、左腕に準がそれぞれ引っ付く。 …すももはともかく、準からも甘い香りがするのはどう言う事か。 ……いやいや、準はオトコだ。以前確認しただろ。←え? 「ま、負けてられないわ!行くわよ、春姫!」 「え?ええっ?」 がしっ。 「お前もか杏璃!」 「あったりまえでしょ!……あたしだって、雄真に抱きつきたいわよ。」 顔を赤らめつつ、呟く杏璃。 いつもは強気な杏璃だが、時々見せる女性らしさに、ドキッとする。 「……えいっ。」 ぷにゅん。 「は、春姫!?」 「わ、私だって…。」 正面から抱きついてくる春姫。 そして、凶悪なまでに自己主張するその胸。 「にいさ〜ん。」 「ゆ〜うま♪」 「雄真っ。」 「雄真くんっ。」 「あらあら、こんなにモテモテの息子を持って、かーさん鼻が高いわ〜。」 ぱしゃっ。 「そう言いながら写真を撮るのは止めろかーさん!と言うか、何とかしてくれっ!!」 …その後、写真をネタにかーさんに脅され、暫く『Oasis』でタダ働きをする俺だった。 ・書き下ろしテレカが元ネタです:その2(メッセサンオー) 「さて、今日も先生の所に行って勉強するか…。」 放課後。 今日も魔法の勉強をする為、俺は先生の研究室を訪れていた。 こんこん。 「先生、小日向雄真ですけどー。」 しーん。 「……あれ?留守かな?」 試しに、扉に手を掛けてみると、すんなりと開いた。 ……先に入って待っとくか。 がらららら。 「さて、今日もべんきょ……う?」 「……え?」 「……ゆう、ま?」 中に入ってみると、春姫と杏璃が居た。 別にそれだけなら普通だ。 だが、問題は……二人が魔法服に着替えている途中だった、と言う事だ。 「……あー。」 「………。」 「………。」 気まずい雰囲気が、部屋の中を支配する。 ……そして、その状況を一番最初に打ち破ったのは。 「あ、あんたは声も掛けずに入ってくるんじゃなーいっ!!」 「ぐへっ!?」 杏璃の見事なパエリアスウィングだった。 「全く、デリカシーの欠片も無いわね、あんたはっ!」 「で、デリカシーと言う単語が杏璃の口から出てきたのが驚きだ…。」 「ほほう、まだ減らず口を叩く余裕がありますか、雄真くんは……。」 ごごごごごごごご。 「ま、待て!悪かった!だからパエリアを構えるのは止めろっ!!」 「あ、杏璃ちゃん!とりあえず落ち着いて…。」 「むきーっ!」 今にも振りかぶらんとする杏璃を、春姫が宥める。 「離して春姫っ!雄真には身体で分からせるしかないのよっ!!」 「ほら、雄真くんだってワザとじゃ無いかもしれないじゃない。ね?」 「………。」 しかし…落ち着いて見ると、二人ともやっぱり可愛いし、綺麗だよな。 それに……魔法服も結構露出が高いけど、着替え途中…つまりは半脱ぎ状態な訳で。 何とも色っぽいと言うか、えっちな感じと言うか……。 「……雄真くん、目がえっちだよ。」 「そんな余裕があるんだ…へぇ〜。」 「……いや、これは、その…。」 身体を手で隠しつつ、半目で睨む春姫。 パエリアを両手で握り、上段に構える杏璃。 「……ごめんなさい。えっちな目で見てしまいました。」 否定しようが無いし、実際えっちな目で見てしまったので、素直に謝る。 「…もう。幾ら雄真くんでも……恥ずかしいんだからね?」 「って、春姫……許しちゃうの?」 「誰にだって、間違いはあるし……それに、えっちな目で見られたって事は、  それだけ魅力的だって事にもなるし…。」 頬を赤らめつつ呟く春姫。 「……あたしはどうなのよ、雄真。」 「…は?」 「あたしの事も……えっちな目で、見たの?」 上目遣いで見つめてくる杏璃。 「……ああ。だって、杏璃だから…。」 「そっか……ま、まぁこのあたしだから、そんな目で見るのも仕方が無いわよね。  だ、だから……今回は許してあげる。感謝しなさい!」 そう言って、杏璃はそっぽを向く。 でも、顔が真っ赤なのは……照れてるんだろう。 「…と、とりあえず二人とも着替えの方を進めた方がいいんじゃないか?  俺は、外に出とくから……。」 そのまま、俺は二人に背中を向け、扉に手を掛け。 むにゅん。 「……え?」 「……雄真、くんっ。」 背後からの感触に、動けなくなった。 「は、春姫…?」 「…いい、よ?……えっちな、事…しても。」 「お、おいおい!?」 いや、此処は先生の研究室だし! それに、その…杏璃が居るだろ!? 「……杏璃ちゃんも、結構…その気みたいだし。」 「は!?」 「……。」 いつの間にか、杏璃が俺の前に移動していた。 きゅっ。 「あ、杏璃!?」 「……こんな気持ちになった責任、ちゃんと取りなさいよね。」 「いや、だって……。」 「…駄目?」 「……駄目なの、雄真?」 ……背後に春姫、目の前に杏璃。 この布陣で、勝てる訳も無く。 「……分かった。」 「雄真くんっ…。」 「雄真…。」 そして、そのまま――。 「こほんっ!」 「「「っ!?」」」 「貴方達、私の研究室で、一体何をしようとしてるのかしら?」 にっこり。 いつの間にか、扉の前には満面の笑みを浮かべた御薙先生……母さんが。 「せ、先生っ!?」 「雄真くん……先生として、その前に母親として…お説教が必要かしら?」 「あ、あの先生、これは……。」 「いいのよ神坂さん。悪いのは貴方や柊さんじゃ無いから。」 「で、でも…。」 「ああ、別に神坂さんと柊さんが雄真の事を好きとか、その……一線を越えた関係とか、そう言うのを  責めるつもりも無いわ。若いんだもの、色々頑張らなきゃね。」 笑顔で二人の応援をする先生。 …先生として、倫理面の突っ込みは無いらしい。 やっぱりこの人はかーさんと同類だ。 「とりあえず、こんな所であるって分かっててもえっちな事をしてしまいそうになった雄真くんには、  ちょっときつめのお仕置きが必要かしら?」 「……ど、どのぐらいでしょうか?」 「魔法の実践、したいって言ってたわよね?」 「は、はい……。」 「今日は実践にしましょう。私が魔法を唱えるから、ちゃんとキャンセルして頂戴?」 「……え?」 「キャンセルできなかったら……大変な事になっちゃうかも?」 「ええええっ!?」 そして。 「……雄真くん、大丈夫?」 「雄真……生きてる?」 「…………なんとか。」 「あら、割と大丈夫みたいね。それじゃ、本気で行きましょうか♪」 「勘弁してください…。」 ・書き下ろしテレカが元ネタです:その3(グッドウィル) ざざーん。 ざざーん。 「夜の星、波の音……うーん、まさにリゾートって感じだ。」 「……そうね。」 「えーと……。」 夏休み。 1学期の間にバイトを繰り返し、そのお金で俺と杏璃は水上バンガローを借り。 二人きりで、リゾートを楽しんでいる……筈、だったのだが……。 「あらあら、どうなさったのですか、雄真さん?」 「杏璃ちゃん……どうしたの?」 「ど、どうしたもこうしたも無いわよっ!  どうして、どーして小雪さんと春姫が此処に居るのよっ!?」 そう。 何故か、小雪さんと春姫が此処に居るのだ。 「……雄真、この旅行は二人っきりじゃ無かったの!?」 「も、勿論…そのつもりだったんだが……。」 「うふふ……雄真さんの行く先を私とお母様で占ってみたら、此処と出ましたので…。」 にっこりと微笑む小雪さん。 …お母様って……世界最高の先見術士である、ゆずはさんまで動かしたんですか? 「杏璃ちゃん、二人っきりで旅行なんて……ずるい。」 「は、春姫だって雄真と二人だけでデートとかしてるじゃない!それと一緒よ!!」 「でも、デートとお泊りじゃ全然違うよ、杏璃ちゃん……。」 こちらはこちらで、仲良く喧嘩している春姫と杏璃。 「えーと、つまりは……俺と杏璃が二人っきりなのが嫌だったので、こっそり付いてきたって事ですか?」 「いえいえ、ただ偶然、同じ日に、隣のバンガローで私と神坂さんが一緒だっただけですよ?」 「偶然って、さっき占ったって言ったじゃないですか小雪さんっ!」 「……タマちゃん、フルスロットル。」 『あいあいさ〜。』 どぱーん。 タマちゃんが勢い良く発射され、海面で物凄い水しぶきをあげる。 「……すみません、タマちゃんの暴発でよく聞こえませんでした。」 「杏璃の発言の後にタマちゃんが飛びませんでした?」 「………気のせいです。」 うわ、無理やりすぎる!? 「ま、まぁ、隣のバンガローまでは……誤魔化されるとしても。  ……二人のその格好は何ですか。」 春姫と小雪さんも、杏璃と同じく水着だった。 ただし……。 「何か変ですか、雄真さん?」 「学校で使ってるやつだけど…雄真くん、何かおかしいかな?」 どうして、スク水なのか。 しかも、よりによってこの二人が。 「いや、おかしいと言えばおかしいですし、おかしくないと言えばおかしくないのですが……。」 問題は、だ。 「…変な雄真さんですね。」 ぷるん。ぷるん。 「大丈夫、雄真くん?」 ぷるん。ぷるん。 「………。」 小雪さんを見ても揺れる。春姫を見ても揺れる。 …もはやこれは凶器としか言いようが無い。見るだけでダメージを受ける。 そして。 「……ゆーうーまー?」 ごごごごごごごごご。 にっこりと微笑み、左手を握る杏璃。 ……ヤバイ。利き手である左手を握るって事は、本気で怒っている。 「すみませんごめんなさい。」 「…まったく。あんたはあたしと旅行に来たんでしょ!」 そう言いつつ、抱きついてくる杏璃。 「…だから、あたししか見ちゃ駄目なんだから。」 「杏璃……ごめんな。」 頭を撫でつつ、俺も杏璃を抱き寄せる。 「…と、言う訳だから、小雪さんも春姫もお引取り下さい。」 「そーよ。雄真はあたしだけしか見ちゃ駄目なんだからっ。」 「……仕方ありません。今日は、杏璃ちゃんにお譲りする事にしましょう。」 「え?た、高峰先輩!?」 ずるずる。 「さ、帰りましょう神坂さん。」 「え?ええっ!?ちょ、ちょっと高峰先輩っ……。」 何か言いたそうな春姫を捕まえ、小雪さんはバンガローから出て行ってくれた。 「……まったく、油断も隙も無いんだから。」 「まさか、此処を予言で当ててくるなんて思いもしなかったな……。」 「…今度こそ、二人きり……だよね?」 「多分な。さすがにこれ以上は無いだろう……。」 あったら本気で泣くけどな。 ……結論から言おう。甘かった。 策略大好きな小雪さんが、素直に引き下がる筈が無い。 杏璃との甘い一時で麻痺していた俺は、そんな当たり前の事を忘れていた。 「…ん……?」 真夜中。 杏璃とあんな事やこんな事や、あまつさえ凄いコトまでしてしまった後、 杏璃はぐっすりと夢の中へ。 逆に俺は目が冴えてしまい、夜空を見ながらお酒を嗜んでいた。 ……呑んじゃ駄目、って台詞はスルーの方向で。折角の旅行だし。 「今、何か動いたような……?」 しかも、やけに見慣れた……。 「こんばんは、雄真さん。」 「っ!?」 背後からした声に、慌てて振り向く。 そこには…。 「おつまみを持ってきちゃいました。要りますか?」 「こ、小雪さん!?」 ワインとおつまみを持った小雪さんが。 しかも、ワイングラスまで持って。 「……今日は邪魔しないんじゃなかったんですか?」 「とっくに日付は替わってますよ?」 「…そう来ましたか。」 「はい、そう来ちゃいました。」 笑顔で答え、俺の横に座る小雪さん。 ……でも、やっぱりスク水なんですね。 「スク水がラッキーアイテム、と占いに出てましたので。」 「…人の考えを読むのは止めてください。  ……春姫は一緒じゃ無いんですね?」 「ぐっすり寝てたので、放って来ちゃいました。  ライバルは少ないに越した事はありませんし。」 そう言いつつ、ワイングラスにワインを注いでいく。 「さ、どうぞ雄真さん。」 「…飲まないって言ったら、怒ります?」 「……今後一ヶ月は不幸の占いしかしてあげませんよ?」 どう見ても死の予言です。本当に有難う御座いました。 飲むって選択肢しか無い訳ですね…。 「では、雄真さんと……皆さんの幸せに、乾杯。」 「幸せに…乾杯。」 ちんっ。 ワイングラスが鳴る。 「…んっ……あ、美味しい。」 「飲みやすいのを選んで持ってきたつもりですから。伊達に飲んではいませんよ?」 「……小雪さん、お酒は二十歳からって事は分かってますか?」 「………それにしても、いい夜空ですね。」 「無視ですか…。」 いや、小雪さんはいつもこのペースだからもう突っ込まないけど。 「…でも、まさか此処まで来るとは思ってませんでしたよ。」 「……いけないとは分かっていたんですけれど。でも…駄目でした。  ごめんなさい。」 ぺこり、と小雪さんが頭を下げる。 「……明日は二人きりにして下さいね?それで不問にしますから。」 「じゃあ、明後日は乱入OKと言う事で…。」 「…何故に明後日があるとご存知ですか?」 「……にやり。」 きゅぴーん。 小雪アイが今日も光る。 「…分かりました。明後日はみんなで一緒に遊びましょう。  杏璃のほうも説得しときますんで。」 「交渉成立、ですね。」 ぽふっ。 「…小雪さん?」 俺に寄りかかってきた小雪さんに声を掛ける。 「明日は大人しくしておきますから、その分、今……甘えてもいいですか?」 「…う。」 頬を赤らめ、上目遣いの小雪さんにお願いされたら……拒否できません。 「……ちょ、ちょっとだけですよ?」 「はい。ちょっとだけ、です。」 きゅっ。 すりすり。 「こ、小雪さん…?」 「ちょっとだけですから。ご心配無く。」 かぷっ。 「あ、甘噛みですかっ…?」 「……おつまみです。お酒にはおつまみが必要ですよ?」 「いや、つまみならまだ皿の上に……。」 ぽろん。 いつの間にか、小雪さんが胸を曝け出していた。 「…雄真さんも、おつまみ…如何ですか?おつまみ。……きっと、美味しいと思いますよ?」 「……ちょ、ちょっとだけですからね?」 「はい…ちょっとだけ、ですね。」 「だらしが無いわよ、雄真!もっとしゃきっとしなさい!」 「…わ、悪い。」 翌日。 元気一杯の杏璃と対照的に、疲れきった俺が居たり。 原因は、分かってるんだけどな。 …小雪さんのおつまみをご馳走になったり、俺が小雪さんにおつまみをご馳走したり。 ………なんでおつまみで疲れるんだよ、との突っ込みは禁止。 色々だよ、色々。 「……スク水小雪さんは、反則だ。ありゃ武器だ。」 「雄真、何か言った?」 「い、いや何も?」 「さーて、今日は二人っきりなんだから、遊んで遊んで遊びまくるわよー!!」 「……。」 …とりあえず生きる事を今日の目標にしよう。 そして、ぐっすりと寝て、明日の為に備えよう……。 「…雄真くん、小雪さんにワイン貰ったんだけど……一緒に、どうかな?」 「………今夜は春姫か。」 …………果たして、俺は生き残る事が出来るのだろうか?