※完全な番外編です。話の繋がりはありません。  そして馬鹿話なので、そのつもりでお読み下さい。 「大変です兄さん!魔王ハチさんが復活したらしいです!」 「いや、そこで魔王に『さん』付けするのはどうなんだすもも……。」 冷静に突っ込む俺。って言うかハチが魔王かよ。 「さー雄真くん。実は貴方は偉大なる勇者の血を引いていたのです。  と言う訳で、世界を救ってきてちょーだい。」 「いや、滅茶苦茶無理言ってませんかかーさん!?」 「大丈夫よ雄真くん。酒場に行って、仲間を集めて来なさい。  きっと雄真くんを助けてくれるわ。」 「……は、はぁ。」 「あ、でも先に王様に挨拶してきてね?」 と言う訳で、俺はまず、王様に挨拶に行く事にした。 「いやーん、ようこそ、ゆ・う・ま♪」 「って、無茶な設定するな作者っ!?」 目の前には、王様……って言うか、どう見ても準が居た。 「ふっふーん、そんな事言ってもいいのかな、雄真?  今回はわたしが王様なんだから♪」 「…王様って事は、オトコだよな。」 「……王様やーめた。」 「早!?」 あっさり王冠を投げ捨てる準。 「まぁ兎に角、ちゃーんと頑張ってくるのよ、雄真。  ……寂しくなったら、いつでもあたしが……慰めてあ、げ、る♪」 「…魔王倒すまで絶対帰ってこないから安心しろ。」 「いらっしゃーい、かふぇて…じゃ無かった、酒場『Oasis』へようこそ〜。」 「って、やっぱりかーさんか!」 酒場。 そこには……案の定、かーさんが居た。 「…で、仲間ってどうすればいいんだ?」 「大丈夫、ちゃーんとかーさんがいいお仲間を見繕っておいたから。  さ、こっちに来てー。」 かーさんに呼ばれ、姿を現したのは。 「あ、あの……よろしくね、雄真くん。」 酒場でもトップクラスの魔法使い、春姫。 「世界を救う……あたしに相応しい仕事だわっ!」 春姫のライバル(自称)、良くも悪くもトラブルメーカーの魔法使い、杏璃。 「うふふ、世界を旅して、色んなお酒とカレーを食べ放題……楽しみです。」 不幸マスター、謀略と策略を任せたら天下一品の魔法使い、小雪さん。 「一緒に頑張りましょう、兄さん!」 自分の領域に引きずり込んだら無敵な義妹さん、すもも。 「……えーと。ちょっとかーさん、一つ聞いていいか?」 「なーに?かーさんのチョイスに不満でもあるの?」 ぷー、と頬を膨らますかーさん。 ちょっと可愛い。 「………魔法使い3人に一般人のパーティが何処にある!?  バランス悪すぎだ!!」 「そこはみんなでレベルアップを頑張れば大丈夫よ。  ……ほら、エスパー4人でもメカ4人でもモンスター4人でもクリア出来るでしょ?」 「そりゃゲームボーイのSAGA2だ!」 …モンスター4人は本当に修羅の道だけどな。 魔法使い、春姫が仲間に加わった! 魔法使い、杏璃が仲間に加わった! 魔法使い、小雪が仲間に加わった! 一般人、すももが仲間に加わった! そして、旅は進む。 「雄真くん、モンスター!」 春姫が目の前にいたモンスターを知らせてくれた。 「よし、じゃあ」 「先手必勝、いっけー!」 「タマちゃん……ごー!」 『全体攻撃やで〜!』 ごっばおぉぉぉん。 敵、即座に消し炭。 「……えーと、俺が居る必要あるのか?コレ…。」 「ふー、今日も疲れたわねー。」 ぐったりとベッドに突っ伏す杏璃。 ようやく到着した街で宿に泊まる訳だが……何故この人数で一部屋なのだろう。 嫌がらせか? 「雄真さん、ココの温泉……混浴らしいですよ?」 俺の背後から、囁いてくる小雪さん。 「……べ、別に。気にしませんよ?」 「気にしないんだ……じゃあ、一緒に入ろう、雄真くん?」 がしっ。 「は、春姫!?」 春姫が俺の右腕を確保。 ぷにゅん、と胸が自己主張してきます。 「そうねぇ……気にしないのよね、雄真?」 がしっ。 「あ、杏璃まで!?」 杏璃が左腕を確保。 そのまま擦り寄ってくる。 「うふふ……では、私はお背中を流しましょうか?」 ぴとっ。 「こ、小雪さん…胸がっ…。」 背中は小雪さん。 むにむにとした二つの膨らみが、俺の理性を消し去りそうです。 「じゃ、じゃあ…わたしは兄さんの前を洗いますっ!」 ぎゅっ。 「いやそれ凄く不味いからすもも!?」 前からはすももが抱きつく。 …いかん、すももの甘いかおりが俺をくらくらさせる……。 「さ、温泉行こう、雄真くんっ。」 「あ、お肌にもいいらしいわよ、春姫。」 「うふふ、夜の事も考えると、たっぷりと肌を磨いておかないといけませんね……。」 「兄さんとお風呂、久しぶりです〜。」 「うわあああっ!?」 これ以上は良い子が読んでいるかもしれないので省略。 ……翌朝宿屋を出る時に、太陽が黄色かった、とだけ言っておく。 …まぁ、そんな旅の途中で、刺客が待ち受けていたり。 「ふはははは、此処から先は式守の名において通さぬぞ、小日向雄真!」 「お引取り下さい、小日向様…。」 絶大なる威力を誇る魔法使い、式守伊吹。 そして、伊吹をサポートする、結界を主力とした魔法使い、上条沙耶。 「くっ…この二人、強い!」 「ど、どうすれば……。」 「こんな事があろうかと、すでに貴女の弱点は調べてあります、伊吹さん。  ……これです!」 じゃーん。 「ああもうぷにぷにですすべすべですたまりません伊吹ちゃ〜んっ!」 目の色を変えたすももが、伊吹に襲い掛かる。 「うわああああっ!?」 がしっ。 「うふふふふ、もう絶対に離しませんよ伊吹ちゃん〜、たっぷりとラブラブです〜♪」 「だから私にその趣味は無いと…だ、駄目だ其処は触るなすももっ!?」 すももタイフーン、炸裂。 伊吹、あっと言う間に戦闘不能。 「い、伊吹様っ!?」 「今です、雄真さん!上条さんを押さえ込んで下さい、ケダモノのように!」 「無茶苦茶言わないで下さい小雪さんっ!  ……でも、今しか無い!てやあああっ!」 がしっ。 「きゃっ!?」 一瞬の隙を突き、上条さんを捕まえ、押さえ込む。 「捕まえた!これで終わりだ、上条さん!」 剣を突きつけ、降伏を迫る。 「…分かりました、小日向様。  ………ですが、あの、その……。」 「…?」 何故か頬を染める上条さん。 …そして、何故に上着のボタンを外すのですか? 「は、初めてですので……優しく、お願い致します……。」 「ちょっと待ってくれっ!?」 これ以上は良い子が読んでいるかもしれないので省略。 ……キャミソールは反則だ。 魔法使い、伊吹が仲間に加わった! 魔法使い、沙耶が仲間に加わった! そして…旅は終盤を迎える。 「ふむ、此処まで来たか……小日向殿。  この扉の先…玉座の間へ行きたくば、この俺を倒してからにしてもらおう。」 いかにも魔王が居そうな扉の前。 其処には、『風神雷神』を持った信哉が居た。 「……どうしても通す気は無いのか、信哉。」 「愚問だ。」 「なるほど……それじゃあ仕方が無い。」 「良かろう…来い、小日向殿!!」 気合を込め、構えを取る信哉。 …うーん、非常に言いにくいんだけど。 「いや、行くのは俺じゃ無いんだけどね……。」 「…何?」 「「「「「………。」」」」」 ごごごごごごごご。 俺の背後では、みんながすでに詠唱を完了していた。 「いや、ちょっと待て!この場面は俺と小日向殿の1対1の対決の場面……。」 「…雄真くんを傷つけようとする人に、容赦はしません。」 「ひ、卑怯な!?」 「戦いに卑怯も何もあったもんじゃ無いわ!一人で来た自分を恨みなさい!」 「ええ、杏璃さんの言う通りです。  ……戦争とは、如何に相手を完膚無きまでに粉砕するかを突き詰めたもの。  武士道とか礼儀とかなんてものは……雄真さんを護る為には必要ありません。」 「……まぁ、死なない程度に加減はしてやる。感謝しろ、信哉。」 「い、伊吹様!?何故そちらの側に!?」 「…お覚悟を、兄様。」 「沙耶までっ!?」 ごっばおぉぉぉん。 「そんな馬鹿なぁぁぁぁっ!?」 叫び声を上げ、信哉は倒れた。 「…これって、どちらかと言うと俺達が悪役じゃ無いのか?」 「そうなんですか?でも、兄さんが無事ならそれでいいと思いますよ?」 ぎぃぃぃぃ。 扉を開くと…其処には、玉座にふんぞりかえった魔王ハチが居た。 「良くぞ来た勇者達よ!此処まで来たのは、お前達がはじm」 ちゅごおおおおん。 ごすごすごすごす。 ずばっ。ずばっ。 かきーん。 ごっばおぉぉぉん。 「うぎゃあああああああっ!?」 ハチ、即座に負け。 「……哀れだ。台詞の途中で瞬殺される魔王なんて……。」 「でも、これで世界に平和が訪れるんですね……。」 「…そう。そして、あたしは世界を救った偉大なる魔法使いと呼ばれる事になるのよ。  さぁ、これからが忙しくなるわよー!」 「でも…この手のゲームのお約束で、裏ボスが居ると思ったのですが……。」 「うらぼす…ですか?うーん、わたし、あんまり詳しく無いんですよね…。」 「ふむ…魔王にしては、弱すぎだったからの。」 「でも、小日向様に怪我が無くて、何よりです…。」 まぁ、コレで無事家に帰れる。 そして、普通の生活を……。 と、思ったら。 帰ってきた街が、モンスターの巣窟になってました。 「うふふふふ、魔王ハチなんてものは、ただのダミーに過ぎないわ。  これからは、この御薙鈴莉と……。」 「この小日向音羽が、世界を征服しちゃうわよ〜。」 「って、あんたらが黒幕かっ!?」 頭を抱える俺。 って言うか、実の母と育ての母……通称『かーさんず』が諸悪の根源って……。 「どう、雄真くん。こっちに来ない?  そしたら、毎日たっぷり可愛がってあげちゃうわよ?」 「そうよ雄真くん。ランチメニューだって食べ放題なんだから。  更に、今なら特別キャンペーンとして……。」 「あたしの、あつ〜い愛を、たーっぷりとプレゼントしちゃうっ♪」 「しれっと悪の方に居るのはなんでだ準っ!?」 何故かレザースーツを着て、一緒に笑っている準。 ……似合ってるなぁ。 「そこのみんなも、こっち側に付かない?今なら色々お得よ?」 「あの、そんな笑顔で勧誘されても……。」 魔法の師匠である先生に言われ、困惑する春姫。 「ふふーん。偉大な魔法使いであるあたしを誘惑しようなんて、百年早いわっ!」 「……そうかしら?こっちには…切り札があるのよ?」 「切り札…ですか?」 「…気になる?高峰さん。」 「………少しだけ。」 「ふっふっふ、この切り札を聞けば、みんなこっちに来る事間違い無しよ。  …それは。」 「「「「「「「それは?」」」」」」」 そして、『かーさんず』の放った言葉は。 「「なんと、雄真くんとラブラブになれる権利!!」」 「って、俺の了承無いだろそれ!?」 即座に突っ込む俺。 「あら、だって…二人の親の公認よ?もう世界中何処でも、何時でも雄真くんといちゃついていいの。」 「朝でも夜でも、何時でも雄真くんに愛を囁いてもらえるのよ〜?」 「ソレを聞いて、思わずあたしもこっちに入っちゃった、って訳なのよ♪」 …無茶言うな。 って言うか、こんなのじゃ全然切り札でも何でも無い。 「そんな言葉には惑わされないぞ!なあ、みんな!」 「「「「「「………。」」」」」」 ……あの。 何故にみんな、俺から目を逸らしますか? 「あ、ちなみに世界制服した暁には、少しだけ法律を変える予定よ。」 「旦那さんは、お嫁さんを沢山貰ってもいい、って風に変えちゃいま〜す。  後、同性同士の結婚も認めちゃうわよ〜。」 「「「「「「!?」」」」」」 みんなの雰囲気が変わる。 …嫌な予感がする。 「……雄真くん、あのね?」 「な、なんでしょうか…?」 「……魔が差す事って、あるよね?」 「どう言う意味だ春姫!?」 ヤバイ。春姫の目が輝いている。 小雪アイと同じ……春姫アイか!? 「あ、杏璃!杏璃は大丈夫……。」 「……ゆうまぁ…。」 潤んだ瞳で、俺を見つめる杏璃。 「…悪の魔法使いになっても……ずっと、一緒に居てくれるよね?」 「どんな告白だそれはっ!?」 いかん、これは不味い。 一旦、此処は退却だ! 「タマちゃん、絨毯爆撃♪」 『あいあいさ〜』 ちゅごごごごごごん。 「ひぃっ!?」 「駄目ですよ雄真さん。逃げだそうなんて、勇者として宜しくないですよ?」 きゅぴーん。 小雪アイが今日も光る。 …って、小雪さんも裏切る気か!? こ、こうなったら……。 「い、伊吹!」 「なんじゃ、小日向雄真?」 すでに詠唱完了。 流石は戦闘能力トップ。そのセンスは伊達じゃ無い。 …伊達じゃ無いんだけど。 「……どうしてピサイエが俺を向いてるのか、参考までに聞いてもいいか?」 「無論、お主を狙っているからだが、何か問題でもあるのか?」 「ありまくりだ!お前まで裏切るのか!?」 「…ふむ。裏切るとは心外だな。  考慮した結果、御薙鈴莉の側についた方が、お前と幸せになれると判断しただけの事だ。  ……お前を好きな気持ちを、裏切りと言うのか?」 「…う。」 悲しそうな顔をする伊吹。 そんな顔をされては、それ以上何も言えない。 だが……。 「す、すまん!俺は勇者である以上、世界を救わねばならないんだっ!!」 魔法が飛んでくるかもしれないが、それは根性で避ける! そう心に決め、俺はみんなに背を向け、此処から離れる為に走り出し! べちーん。 「ごふっ!?」 見えない壁にぶち当たり、地面に倒れた。 「な、何だ!?」 「…無駄です。背後に魔法障壁を作りました。」 「か、上条さん!?」 サンバッハを構えた上条さんが、いつの間にか俺の傍に。 「上条さんまで……。」 「あの、その…私、余り強く出るのは苦手で……。  ですが、御薙様に付けば、皆様に気にする事無く、小日向様に愛していただけますから……。」 顔を真っ赤にして呟く上条さん。 …くらっときた。 もう、このまま堕ちちゃおうか、って一瞬思うぐらい。 そして。 「兄さんっ。」 ぎゅ。 「うを!?」 「うふふふふ、兄さんゲットです〜。」 すももに、背後から抱きしめられた。 「は、離せすもも!」 「駄目ですよ。兄さんはこのまま悪の手に渡って、皆さんとラブラブなんですから。えいっ。」 かちゃり。 俺の手に、何かが掛けられた。 「…手錠か!?」 「大当たりです、流石は兄さんですね。」 「目を覚ませすもも!お前は勇者である俺の妹だろう!」 「……兄さん。不思議に思いませんでしたか?」 突然、すももが妙な事を言い始めた。 「……何を?」 「姫ちゃんや杏璃さん、それに小雪さんが居るのに、どうしてわたしが一緒に旅をしていたのか。」 「…それは、伊吹を止める為に……。」 「勿論、それもありますけど……実は、スパイだったって言ったら驚きますか?」 「何!?」 「そもそも、魔王ハチさんが復活したなんて、どうしてわたしが知ってたんでしょうね、兄さん?」 「……ま、まさか。」 蒼ざめる俺。 「気が付いたみたいですね、兄さん。  …そう、最初からわたしは鈴莉さんと母さん側の人間だったんですよ。」 「……なんてこった。」 がっくりと項垂れる。 「母さん、無事兄さんをゲットしましたよ〜。」 「偉かったわすももちゃん。これで障害も無くなったわねー。」 「……さて、雄真くんはこちらの手に渡ったけれど……みんなはどうするのかしら?」 先生の問いに、無言で頷きあうみんな。 「…ようこそ、素晴らしき悪の世界へ。」 こうして。 世界は、二人の魔王と、それに従う5人の魔法使い。 更に、優秀な参謀ふたりの策略により、あっと言う間に悪の手に落ちたのだった。 めでたしめでたし。 「全然めでたく無いだろこれ!?」