「と言う訳で、みんな体育祭、お疲れ様〜。かんぱーい!」 「かんぱーい!」×9 「って、何でこんな事になってるんだ!?」 体育祭終了後。 何故か、みんなが俺の家に集まっていた。 「とりあえず、色々突っ込みどころはありますが……。」 その中でも、俺は一番に突っ込みたいところを見る。 「かーさんは家主。御薙先生は百歩譲りましょう。  ……何故にゆずはさんが此処に!?」 「あらあら、ゆずはさん、だなんて。  いいんですよ、『お義母さん』って呼んで下さって。」 くすくすと笑うゆずはさん。 その言葉に、幾つかの目線が鋭くなる。 ……勘弁して下さい。 「そ、それに!なんでかーさん達までその……そんな格好なんだ!?」 「えー……鈴莉ちゃん、ゆずはちゃん、何処か変かしら?」 「いいえ?その身体にとっても似合ってると思うわよ、音羽。」 「はい。その慎ましい身体に、とってもフィットしていると思います。」 「それは良かったわ〜……って、二人とも馬鹿にしてる?」 むー、と先生とゆずはさんを睨むかーさん。 ……でも、その三人も……何故かブルマなんですけど。 「かーさんが貧乳で幼児体型なのは今はどうでもいい!  それより、なんでそんな格好をしているかを聞いてるんだ!」 「どうしてって、ねぇ……。」 「勿論、雄真さんの反応が楽しそうだからですよ?」 笑顔で答える魔法界の権威と世界最高の先見者。 ……うう、俺が変なのか? 「ところで、雄真くん……今、かーさんになんて言ったかなぁ?」 ごごごごごごごご。 「ひ、ひぃっ!?」 魔王かーさん、降臨。 「も・う・い・ち・ど、言ってみてくれないかな、雄真くん?」 「か、かーさんは、とても素晴らしい女性です!はい!!」 「よろしい。でも、次も間違ったら……怖いわよ?」 にっこり。 「は、はひっ!」 「と、雄真くんもかーさんの素晴らしさを分かってくれたところで。  みんな〜、ご馳走たっぷり作ってあるし、明日はお休みだから、  いっぱい楽しんでね〜。」 そう言い残し、かーさんは台所の方に。 「こ、怖かった……。」 「流石は音羽さんね……伊達に長く」 「準ちゃーん、何か言ったかしらー?」 「何も言ってませんっ!」 「そーおー?うふふふふ……。」 ……お、恐ろしい人だ、かーさん。 準も、額に汗が。 「……って言うか、お前もブルマかよ!」 「だってだって、ずっと履けなかったのよ!  だから、ここでぐらいは履いたっていいじゃないっ。」 「いいじゃない、って言われてもなぁ……。」 ちらり。 ……オトコのアレは、一体何処に仕舞ってるんだろう? ちょっと気になる。 「ま、雄真ってばそんな目で見て……いやん、ケダモノな雄真に食べられちゃうっ♪」 「そう言いながら抱きつくな迫るな擦り寄るなっ!!」 「駄目です準さんっ。に〜さんに抱きつくには、まず義妹であるわたしに許可を得て下さいっ!」 ぎゅ。 すももが、準と俺の間に割って入り、そのまま俺に抱きつく。 「うわ、酒くさっ!すもも、お前もしかしてお酒を!?」 「違いますー。わたしは、みょーに変な味の水しか飲んでませんっ。」 「変な味の水って……。」 嫌な予感がして、俺は慌ててテーブルの上を見る。 「ああ、やっぱり清酒かぁっ!?」 「す、すみません小日向様っ!ちょっと目を離したすきに、すもも様が一気に……。」 「と言うか、なんで酒!?」 「無粋だな。集まりと言えば酒。当然であろう?」 「花見の時の惨状を知ってて言うか伊吹っ!?」 「……おお。」 「おお、じゃ無いっ!」 だ、駄目だ。コレは花見の時と同じ展開になりそうな……。 ……はっ。 「春姫と杏璃は……。」 「うふふふふふ。」 「あははははは。」 「……遅かった。」 がっくり、と膝をつく俺。 「に〜さんっ、わたし、頑張りましたよー。」 「……ああ、頑張った頑張った。すももは良く頑張ったよ……。」 こうなったら、酔いつぶれるまで面倒を見るしかない。 覚悟を決め、俺は擦り寄るすももの頭を撫でる。 「だから、ご褒美下さい、に〜さんっ。」 「ご、ご褒美?」 「そうですっ。頑張った人には、ご褒美があるんですっ。」 「そ、そうだな……。」 ……今日は凄く頑張ったと思うんだけど。 俺はご褒美、貰えないんでしょうか? 「そうですね……でしたら、要りますか?『ご褒美』。」 いつの間にか俺の背後に居た小雪さんが、耳元で囁く。 「……心を読んだ事はもう突っ込みませんが、小雪さんの『ご褒美』は、  その……色々と。」 「……ブルマですよ?」 「うっ。」 「雄真さんの、好きにしても……いいですよ?」 ほんのりと赤く染まった小雪さん。 そんな小雪さんが、身体を俺に寄せ、囁いてくる。 「あ、う……。」 「って、駄目ですに〜さんっ。小雪さんも、に〜さんを誘惑しないで下さいっ。」 「あらあら、ばれてしまいました。」 小さく舌を出す小雪さん。 「なんですってぇ〜!こぉらゆうまぁ、アンタ小雪さんとすももちゃんに何したのよっ!」 「ず、ずるいです高峰先輩!私もゆ〜まくんを誘惑しますっ!」 「うわあああ、折角大人しくしてたのにっ。」 こちらに気づいた杏璃と春姫が、俺の方にやって来る……って、ちょっと!? 「杏璃、とっかーん!」 「は、春姫、とっかーん!」 「って、無茶するなっ!?」 むぎゅ。 むぎゅ。 俺は、春姫と杏璃の下敷きになっていた。 「んふふふふ、年貢の納め時よ、ゆうまっ。」 「わ、私の方が、高峰先輩より胸は大きいんだからっ。」 杏璃が脚の上、春姫が腰の上。 見事な二人のコンビネーションで、俺は全く身動きが取れない。 「……む、コレはいかんな、沙耶。」 「あ、あの、伊吹様?」 「我々も、小日向雄真を誘惑せねばなるまい。  すもも、我々も協力するぞ!」 「い、伊吹様、それは私もですか!?」 「大歓迎です、伊吹ちゃん、上条さんっ。  一緒にに〜さんを巨乳の魔の手から救い出しましょうっ。」 「……つまり、私は春姫さんと杏璃さんのお手伝いですね。  うふふ……雄真さん、たっぷりと苛めてさしあげますね?」 「じゃああたしは、すももちゃんの方をお手伝いしちゃうっ。」 「って、みんなして、ちょ、ちょっと!?」 あっと言う間に、俺は女の子達の中に埋もれる状態に。 いや、中には約一名程偽者が居るけど。 「ほらほら……みんな駄目よ、雄真くんを苛めちゃ。」 「そうですよ。雄真さんを苛めてはいけません。」 先生とゆずはさんの言葉には逆らえなかったのか、みんなが俺を解放する。 た、助かった……。 「ありがとう御薙先生、そしてゆずはさん。  助かりました……。」 「あら、お礼なんていいわよ、雄真くん。」 ぎゅ。 「……へ?」 先生が、俺の右側に抱きつく。 「その分、私達も雄真さんに抱きつかせてもらいますから……。」 きゅ。 ゆずはさんは、俺の左側。 ……って。 「これじゃ、全然意味無いっ!」 「あら、言ってくれるわね。」 「大人の魅力、と言うのもあるのですよ?」 「「せ、先生っ!!」」 「お母様っ!」 誘惑しようとする先生とゆずはさんに、春姫・杏璃・小雪さんが声を上げる。 「ほらほら、鈴莉ちゃんもゆずはちゃんもあんまり雄真くんを苛めちゃ駄目よ。  離れて離れて。」 追加の料理を持ってきたかーさんが、二人を俺から引き剥がす。 「ま、音羽ったらいい子ぶっちゃって。」 「ちょっとぐらい味見しちゃ、駄目ですか?」 「だーめ。ほらほら、ブランデーとワインならたっぷりあるから、大人しくしてなさいっ。」 文句を言いつつも、ブランデーとワインをそれぞれ受け取り、大人しくなる先生とゆずはさん。 「ああかーさん、かーさんが今だけは天使に見える……。」 「今だけは、ってのがとっても気になるけど……とりあえず、見逃してあげる。  だって……。」 ぎゅ。 「……え”?」 「さあ雄真くん、かーさんの胸にたっぷり甘えていいからね〜。」 かーさんが俺を抱きしめ、そのまま俺を押し倒す。 「うふふふふ、ちょうど食べごろだし、すこーしなら全然きっとオッケーよね♪」 「オッケー、じゃありませんよお母さんっ!離れてくださいっ!」 すももが即座に反応し、かーさんを引き剥がす。 「むぅ、すももちゃんのケチ。」 「駄目ですっ。お母さんでも、に〜さんは駄目なんですっ。  に〜さんは、わたしのに〜さんなんですからっ。」 「ず、ずるいよすももちゃん!  ゆ〜まくんは私のなんだからっ。」 「うーっ。」 「むーっ。」 何故か唸り声を上げながら、お互いを威嚇する春姫とすもも。 「ゆうまぁ。……大好きっ。」 きゅ。 「いっぱい好きなの。  ……だから、あたしから離れちゃ、嫌だからね?」 完全に甘えっ子モードの杏璃。 俺の胸に擦り寄り、幸せそうにしている。 「はいはい、みんなちゅうもーく。」 かーさんの言葉に、みんなの目線が注目する。 「みんな雄真くんとラブラブしたいのよねー?」 その言葉に、みんなが頷く。 ……いや、先生とゆずはさんは頷いちゃ駄目です。 「それを叶えてくれるのが……コレ!王様ゲーム!」 かーさんの手には、厚紙と箱が。 「ルール知らない人の為に説明するわねー。  まず、みんな厚紙を引きます。この時、何を引いたかは見せないようにねー?  で、一枚だけ『王様』って書いてあるのがあるから、その人が王様。  王様は、番号を指定して命令を出します。王様の命令には絶対だけど、  あまり無茶な命令は駄目よー?」 「……ふむ、大体は理解出来たぞ。」 真剣に話を聞いていた伊吹が頷く。 「…またかーさん達で企んでたり仕組んでたりって事は無いよな?」 「実はー…って言いたいけど、コレは何も無し。真剣勝負なのよ。  ……で、みんなどうかなー?」 かーさんがみんなを見回す。 「…面白そうだし、やってみよう、杏璃ちゃん。」 「そうね。王様の命令は絶対みたいだし……覚悟しなさい、ゆうま♪」 「うふふ…面白そうです。」 「に、に〜さんとラブラブ……が、頑張りますっ。」 「……沙耶、遠慮は無しだ。小日向雄真を射止める為、頑張ろうぞ。」 「は、はい、伊吹様っ。」 どうやら、みんなやる気らしい。 「んじゃ、俺も混ざるか。」 「はーい、決定。  それじゃ、みんな引いてー。」 その言葉で、箱に伸ばされた手は10本。 ……って。 「準は想定の範囲内として、先生とゆずはさんもなのか!?」 「あら?雄真くんは、私達には参加しちゃ駄目って言うのかしら?」 「そうですよ雄真さん。私達だって、雄真さんとラブラブ……うふふ。」 「ちゃーんとかーさん達の分まで厚紙はあるわよー。」 ……だ、大丈夫だろうな、このゲーム……。 「さーて、栄えある1回目の王様、だーれだ?」 「はーい!あたしよっ!」 かーさんの問いに、『王様』と書かれた厚紙を掲げる杏璃。 「じゃあ杏璃ちゃん、命令どうぞ。」 「と言う訳だから雄真、あたしにたっぷりとキスしなさいっ!」 「って、全然ルール聞いて無いだろお前っ!!」 「え?え?」 即座に突っ込み。 「あのね杏璃ちゃん、番号でしか指定出来ないルールなの。」 「そ、そうなんだ……。」 そして、杏璃は俺を見つめ。 「ねー、ゆうまぁ……雄真の番号、知りたいな……。」 じー。 「……う。」 「ね、教えて?雄真に、いっぱいキスして欲しいの……。」 「う、ううっ……。」 瞳を潤ませ、俺を見つめる杏璃。 ……いかん。可愛すぎる。 「って、駄目ですよ杏璃さんっ。それじゃゲームになりませんっ!」 「そうじゃぞ柊杏璃!此処は直感で勝負する場所だ!」 「わ、分かったわよ……。」 すももと伊吹の猛抗議に、しぶしぶ杏璃が考え込む。 「……じゃあ、3番が私にたっぷりとキスをする!!」 杏璃の宣言に、みんなが自分の紙を確認する。 「わ、私、3番……。」 「春姫なの!?」 「あらあら……春姫さん、たっぷりと杏璃さんにキスをお願いしますね?」 呆然とする杏璃と、くすくす笑う小雪さん。 「ほ、ほら春姫、あたしは雄真だと思ってたから……だから、ちょっとだけで……。」 「駄目だよ杏璃ちゃん。」 がしっ。 「……え?」 春姫が、杏璃の両肩を掴む。 「命令は、絶対なんだから。」 「……そうだった。春姫、いい感じに酔っ払ってたんだったな。」 「ちょ、ちょっと春姫ー!?」 どさっ。 そのまま、春姫が杏璃を押し倒し。 「んっ……。」 「んー!?」 二人のキスが始まってしまった。 「……こ、これは……。」 「ひ、姫ちゃん……潔いです。カッコいいです!」 「す、すももよ、これはどうかと思うのだが……。」 目を輝かせて見入っているすももと、目を逸らしつつ突っ込む伊吹。 「……さーて、次行ってみよー!」 「って、春姫達は放置かよかーさん!?」 「はーい、春姫ちゃんと杏璃ちゃんはまだキスの最中なので、二人を除いて2回戦でーす。」 「ちょ、ちょっと助けてよみんなー!?」 「逃げちゃ駄目だよ、杏璃ちゃんっ。んー♪」 「春姫も正気に戻ってー!?」 部屋の隅っこで押さえ込まれている杏璃と、完全にキス魔になっている春姫。 …酔っ払いとは恐ろしい。 「……が、頑張れ杏璃。春姫も杏璃が好きだからの行為だろう……きっと。」 「それとこれとは話が別ー!?」 「うふふふふ、杏璃ちゃん、だーいすきっ。」 ……すまん、杏璃。 今の春姫は止められない。 「はーい、それじゃ引いてー。」 かーさんの言葉に従い、再び紙を引く。 「さーて、王様だーれだっ。」 「あら、私ね。」 次の王様は、先生らしい。 「うーん、さっきの柊さんみたいな事になっても困るし……。  それじゃ…2番が5番の胸を揉む、って事にしましょう。」 ……え。 「さー、2番と5番、手を上げてっ。」 その言葉に手を上げたのは……。 「上条さん!?」 「小日向様!?」 えーと。 「俺が2番って事は……上条さんが、5番、なんだよね……。」 「は、はいっ……。」 「さー雄真くん、思いっきりいっちゃえー。」 「い、いや、これは……。」 「駄目よ雄真くん。王様の命令は絶対、だったわよね?」 「うふふ……2回目にして、お楽しみな展開ですね。」 「うっ……。」 にやにや笑う三人のかーさんず。 それに対し、真っ赤な顔の俺と上条さん。 「小日向雄真よ、遊戯と言えども約束は約束だ。  潔く、沙耶の胸を揉め。」 「い、潔くって……。」 「い、伊吹様……。」 さも当たり前のように言う伊吹。 …はぁ、仕方無い。 「じゃ、じゃあ……いいかな、上条さん。」 「ははは、はいっ!?」 わたわたとする上条さんの背後に回る。 そして、上条さんを抱きしめる。 「その……痛くないようにするつもりだけど、ちょっとでも痛かったら言ってね?」 「よ、よろしくお願い致しますっ…。」 ふに。 背後から、上条さんの胸をそっと触る。 「んっ…。」 「あ、痛い?」 「い、いえ……少し、驚いただけです。」 「…そ、そうなんだ。」 「は、はい…。」 「……え、えっと。  もうちょっと、触ってみるね。」 ふにふに。 「……は、ぁ…。」 「…大丈夫?」 「……。」 「上条さん?」 ぼーっとした状態の上条さん。 不安になった俺は、上条さんに声をかける。 「…あ。  す、すみません……あまりにも、気持ち良くて……。」 「……え?」 「……あっ……。」 上条さんの言葉を聞き、顔を真っ赤にしたまま動きが止まってしまう。 上条さんも、真っ赤な顔で俯いたまま固まる。 「雄真さん、動きが止まっていますよ?」 「…無茶言わないで下さいよ小雪さん。  これ以上は、ちょっと……無理です。」 「……部室。」 ぼそり、と危険な言葉を呟く小雪さん。 「…兄さん?」 「な、なんでしょうか?」 「……部室が、なんですか?」 ごごごごごご。 「す、すもも?何故そんなに怒っておるのだ?」 「え!?な、なんでもないよ、伊吹ちゃんっ。」 ……どうやら、助かったらしい。 ナイス、伊吹。 「「…ちぇ。」」 そして其処の占いマスターなお二人、親子で舌打ちしないで下さい。 「…ひ、酷い目にあったわ……。」 「ご、ごめんね杏璃ちゃん。少し、調子にのりすぎちゃった……。」 「ううん、春姫は悪くないから。気にしなくていいの。」 ようやく春姫と杏璃が復帰。 さっきの一件で、二人とも酔いが随分醒めたらしい。 「さーて、3回戦行ってみよー!」 「相変わらずハイテンションだなかーさん……。」 再びみんなが厚紙を引く。 「あ、かーさんが王様!残り物に福があったわね。」 嬉しそうに『王様』と書かれた厚紙を見せるかーさん。 「さーて、どんな命令しようかなー。かーさん迷っちゃう。」 「…無茶な命令は無しだぞ。」 「大丈夫よ雄真くん。かーさんはそんなに酷くないわよ?」 「……その台詞がすでに嘘だ。」 体育祭は十分に辛かったぞ。 …まぁ、それ以上に楽しかったけど。 「それじゃあ……7番が8番に耳元でたっぷり愛を囁く、でお願いっ。」 「な、何っ!?」 かーさんの言葉に、即座に反応する伊吹。 「……もしかして、伊吹ちゃんが7番?」 そう言いつつ、すももが『8』と書かれた紙を床に置く。 「…す、すももに愛を囁けと!?  お、女同士で愛と言われても……!」 「……伊吹ちゃん、わたしの事嫌いなんですか……?」 「そ、そんな事があるか!すももは私の一番の親友だ!  嫌いになど、どのような事が起ころうと決してならぬ!!  すももの為ならば、この命すら惜しくなどないわっ!!」 「い、伊吹ちゃんっ……嬉しいです。  もうラブラブです、愛してます、抱き抱きしてフニフニしてスベスベでルパンダイブなんです〜〜っ!!」 がばっ! 「な、すももっ!?」 感極まったすももが、伊吹を押し倒す。 「伊吹ちゃんっ、伊吹ちゃんっ、伊吹ちゃ〜〜んっ!!」 「ちょ、ちょっと待てすもも、服に手を入れ……ふあぁっ!?」 ……。 えーと。 「ゆ、雄真……すももちゃん達、あのままでいいの?」 「杏璃……人間、止めようが無いものがあるんだ。  あの状態のすももを止める勇気は、俺には無いぞ……。」 『すももサイクロン』が発生している場所に背を向けつつ、俺は杏璃に言葉を返す。 他のみんなも、すもも達から目を逸らしている。 「……うわ、すももちゃんってばすごーいっ。  あんな事までしちゃうんだ……。」 ……いや、僅かながら準って例外が居たか。 「……さーて、次は4回戦よ!」 「また無視かよかーさん!?」 「ほら伊吹ちゃん、素直になって下さいっ。  素直になったら、もっと気持ち良いんですよ〜。」 「め、目を覚ませすもも……そ、そんな所を舐めるで……ひゃんっ!?」 ……。 「……す、すももちゃんと伊吹ちゃんは良く分からないけど仲良しさんみたいなので、  そっとしておいて4回戦ー!」 部屋の隅っこに居るであろう二人には目を合わせないようにして、みんな頷く。 ……何気にみんな鬼だな。 そしてすもも。 一体何をしてるのか、兄は非常に気になるが……知ったら知ったで怖そうだ。 「さて、王様だーれ?」 「……げ。」 俺は思わず、声を上げていた。 「…あ、雄真が王様なんだ。」 「って、覗くなよ杏璃。」 「いいでしょ、別に。どうせアンタが王様なんだし。」 「……まぁ、そうなんだけどさ。」 さて…困った。 「で、雄真くんはどんなお願いをするのかなー?」 「…今、考え中。」 「王様なんだから、日頃出来ないようなお願い事を言ってみたら?」 「そうですね。それはもう、とても出来ないような……うふふ。」 好き勝手言うかーさんずは無視。 と言うか、迂闊な事を言ったら、後が凄く大変な事になる。 「命令しない、なんてのは……。」 じー。 「…駄目、だよな。やっぱり。」 半目でみんなに睨まれた。 うう、どうすりゃいいんだ……。 「そんなお困りの雄真くんには、コレ!じゃじゃ〜ん。」 そう言ってかーさんが取り出したのは、三つの箱。 「…何コレ?」 「多分雄真くんは優柔不断で決められないだろうと思って、さっきかーさんが作ったの。  一つ目と二つ目には番号と王様って書かれた紙が入ってて、三つ目には命令が  書いた紙が入ってるのよ。」 「……つまり、コレでランダムに選べと?」 「そのとーり。  雄真くんが選んだ訳じゃないから、誰がどんな命令を受けても、みんな文句を言わないわよねー?」 ちらり。 かーさんが、みんなを見回す。 それに対し、頷くみんな。  「と言う訳で、ちゃっちゃと引いちゃいなさい、雄真くん。」 「……まぁ、確かにコレの方が困らないかもしれないな。」 がさごそ。 がさごそ。 がさごそ。 「よし、三つ引いた。」 「はーい、それじゃかーさんが発表するわねー。」 かーさんが、それぞれの紙を読み上げていく。 「えーと、王様と、7番が……ま、一緒にお風呂、ですって。」 「風呂……な、何っ!?」 それ、滅茶苦茶マズイじゃないか!? 「誰よ!7番って誰!?」 「わ、私じゃ無いよ。」 「……私でも無いです。」 杏璃・春姫・小雪さんの三人では無いらしい。 ……って、まさか。 「残念ながら、かーさんじゃ無いの。  あーあ、久しぶりに一緒にお風呂入りたったわー……。」 「私も違うわ。  折角雄真くんの成長を見れるかと思ったのに……。」 「……私でもありません。  折角『裸の付き合い』を出来るかと思いましたのに……。」 「……いえ、貴方達三人で無くて本当に良かったと思います。」 どれも洒落にならないからな。 「え?先生達でも無いって事は……。」 「も、もしかして……。」 みんなの視線が、さっきから発言してない人物に向けられる。 「雄真……今日はたっぷり、ご奉仕して……あ・げ・る♪」 「お前かぁぁぁっ!?」 7番の紙を見せつつ、俺にウインクする準。 って、待てよ。 「……いや、良く考えたら唯一の男なんだ。  そう言う意味では、当たり……なのか?」 ちらり。 「いやんっ。雄真、そんなケダモノな目であたしを見ないで……。  …でも、雄真になら……激しくされちゃってもいいかも♪」 「……いや、やっぱりハズレかもしれん。」 かぽーん。 「ふー、いいお湯ねー……。」 「…そうだな。」 実際、凄くいい気持ちだ。 やっぱり日本人は風呂だよなー、なんて思う。 「どうしたの雄真?やけに大人しいじゃない。」 「…別に、日頃から風呂場で暴れてる訳じゃ無いんだが。」 ただ、一緒に風呂に入っている準に迷惑を掛けないようにしているだけだ。 ……多分。 「……ふぅん。」 ぴとっ。 「!?」 俺の背中に、準が抱きついてくる。 「もしかして……あたしの事、意識してる?」 「ば、馬鹿な事を。  お前はオトコなんだから、意識なんてする訳無いだろ?」 「じゃあ、こっち向いてくれても大丈夫よね?  あたしはオトコなんだから、意識されてないんでしょ?」 「うっ……。」 「ほらほら、雄真ー?」 ぎゅ。 「ぐ、あ……。」 マズイ。とてもマズイ。 ぴっとりと引っ付く準の身体に、嫌でも反応しそうな俺が居る。 「うふふ、雄真ってば可愛いんだから。  そんな風に我慢されちゃうと……もっと苛めたくなっちゃう♪」 かぷ。 「っ!?」 耳を、準に甘噛みされた。 そして、そのまま息を耳に吹き込まれる。 「……っ!?」 …非常にヤバイ事態になった。 今の準の攻撃で……。 「……うふふ。  雄真……どうしてアソコを隠すの?」 「……な、なんとなくだっ。」 「へー、なんとなく、なんだ……。」 ぐいっ。 準の手が、俺の手を捕まえる。 「えいっ。」 「うわっ!?」 「……あらら。」 「〜〜〜っ!?」 み、見られてしまった……。 「…くすくす。  こっちの雄真は、素直じゃない♪」 「ち、違うぞ準!  これはその、たまたまそんな気分になってしまった、と言うか……。」 「んー?」 ぎゅっ。 準が、更に俺に抱き付いてくる。 そして、それに反応するかのように。 「あ、びくん、って動いた。  ……やっぱり、あたしに反応してるんじゃないの、雄真?」 「……そ、そんな事は無い、筈だ。」 それを認めてしまうと、こう…色々と駄目だ。男として。 「ま、これ以上すると雄真が本気でいじけそうだから、止めといてあげる。」 「……もう十分、男として死に掛けたけどな。」 俺、本当に駄目なんじゃないだろうか…。 「………あたしも、我慢出来なくなっちゃうし。」 「ん?何か言ったか、準?」 「え?ううん、何も?  それより、折角だから、雄真の背中流してあげる。」 「……変な事しないだろうな。」 「疑い深いわね……大丈夫。普通に背中を流してあげるだけよ。」 「…それなら、まぁ……お願いするかな。」 風呂から上がり、椅子に腰掛ける。 ……その間、準が俺の下半身をじーっと見ていたのが凄く気になった訳だが。 「お客さん、こういうところは初めてですかー?」 「…お前、そう言う事をすももに教えたりして無いだろうな?」 「……さーて、隅々まで綺麗にしてあげる。」 「質問に答えろよっ!」 思いっきり目を逸らす準。 ……今度、すももにちゃんとした知識を教えないとな。 「それじゃ雄真、行くわよ?」 にゅるん。 「……って、スポンジはどうした!?」 「お風呂と言ったら、手や素肌にボディソープが基本じゃなーい♪」 「それは何処の怪しい風呂の基本だ!?」 ぬりぬり。 「ぐぉぉぉぉ…。」 「ほーら、本当は気持ち良くて嬉しい癖に。」 準の手が、身体のあちこちを撫で回す。 ……しかも、擦り付けてくる身体が柔らかくて、また気持ちいい。 「…ね、雄真。前の方も……洗って欲しい?」 「……きょ、拒否!絶対に、駄目!」 「えー、いいじゃない。  男と男、裸の付き合いよ?」 「こんな時だけ男って言うな!」 「じゃあ、あたしの事を女の子として見てくれるの?」 ぴと。 ここぞとばかりに、準の身体が俺の背中に押し付けられる。 「……どうなの?」 「そ、そう言う問題じゃ無いだろ!  ともかく、前は絶対に駄目!何と言われようとも、駄目っ!!」 「…ちぇ。  折角雄真の大きくなったアレを撫でまわせると思ったのに。」 「……撫で回したいのかお前は。」 「愛しい人のなら、そうなっちゃうのよ。  …雄真なら、嫌と言う程心当たりがあるんじゃないの?」 「……ノーコメント。」 確かに、嫌…では無いけど、たっぷりと心当たりがあるな……。 「はい、おしまい。それじゃ、泡を流すわよ、雄真。」 「……。」 何か、悔しい。 このまま引き下がっては、小日向雄真の名が廃る気がする。 ……そうだ。リベンジだ。 「……雄真?」 くるり。 「…折角だから、俺もお前を洗ってやろう、準。」 「……え?」 腕をわきわきさせながら言う。 そんな俺を見て、慌てて手を振る準。 「あ、あたしは、別に……。」 「いやいや、俺だけってのも悪いじゃないか。  だから……問答無用で洗ってやるっ!!」 がしっ。 「だ、駄目だって雄真!あたしはあたしの洗い方が……。」 「やかましい!散々俺を苛めておいて、そんな事が通ると思うなよ!!」 ぬるぬる。 「ひゃんっ!?ちょ、ちょっと雄真!?」 「ふっふっふ、さっきされた事をそのままやり返してやる……。」 準にされたように、身体のあちこちを撫で回していく。 「…くふぅ……ゆ、雄真……んっ!?」 「……しかし、本当に準の肌は男とは思えないなぁ……。」 腕とか、脚とか、背中とか……全然傷一つ無い。 「だ、駄目っ……そんな、やんっ……。」 「……。」 ……いや、ちょっと待て。 その反応は、色々と不味いと思うんだが……。 …忘れよう、うん。 「…あれ?」 準の腰に巻かれたタオルが、不自然な形をしてる。 ……もしかして。 「なぁ、準。もしかして……大きくなったりしてないよなぁ?」 「っ!?」 慌てて準が脚を閉じようとする。 …が、慌てているからか、俺の動きの方が早い。 ぎゅっ。 「ふぁっ!?」 「…へー。人の事散々苛めておいて……。」 にぎにぎ。 「やっ…駄目、雄真っ……。」 「自分も、こんなに大きくしてるなんて……なぁ?」 タオルの上から握り締めた準のアレを、ゆっくりと撫で回す。 「…はっ……だ、駄目…ね、雄真っ……もう止めて……。」 顔を真っ赤にして、だらしなく口を半開きにしたまま、俺にお願いする準。 …なんか、逆に苛めたくなってくる。 「……じゃあ、もう変な事をすももに教えたりしないか?」 「べ、別に、あたしは変な事を教えたり、なんて……。」 「ほーう?」 準の言葉を遮るかのように、人差し指でてっぺんの辺りを撫で回す。 「やっ……そ、そんな……あんっ。」 「……教えないよな、準?」 「…わ、分かったわ。変な事、教えないから……っ!」 くたり。 力が抜けたのか、俺の胸に準がもたれ掛かる。 なんか、全身がぶるぶると震えてるみたいだけど。 それに、俺の手にある準のアレが、どくん、どくん、と脈打って……。 「…えっと。もしかして……。」 「………。」 「……いっちゃった?」 「……ゆ。」 「ゆ?」 「……雄真のっ………馬鹿ぁぁぁぁっ!!!」 ごすっ! 「ぐべらっ!?」 顎に一撃。 そのまま、俺は意識を失った。 「…ううっ…。」 …なんか、頭がぐらぐらする。 「…雄真?」 「……準?」 「良かった…気が付いたのね。」 ぎゅ。 準が、俺に抱き付いてきた。 …と言うか、一体、何が、どうなった? 「なぁ、準。俺は一体……っ!?」 ぎりぎりぎりぎり。 現状を確認するよりも早く、準が俺の手首を捻りあげる。 しかも、抱きついているからまわりが見えない。 「…よくも、あたしを辱めてくれたわね、雄真?」 じゅ、準さん?目が笑ってませんよ? 「あ、アレはお前が最初に俺を苛めるから悪いんだろうがっ。」 「……ふーん?」 ぎりぎりぎりぎり。 「いだだだだだっ!?」 「乙女を穢しておいて、そういう事言うの?」 「さっきは男って自分で言っただろ!」 「……兎に角。」 「シカトかよ!?」 ぐっ。 準の顔が、俺の目の前に来る。 「………あたしを本気にさせた、雄真が悪いんだからね。」 「…は?」 ちゅっ。 そのまま、俺の首筋に、準がキス…と言うより、吸い付く。 「……じゅ、準?」 「………うん。我ながら上出来♪」 「な、何が?」 「うーん……宣戦布告?」 「……はぁ?」 何の事だ? 「じゃ、今日はこのぐらいにしておいてあげる。  ……多分、この後が怖いし。」 くすくすと笑いつつ、準が俺から離れる。 「…いや、さっきから、全然話が見えないんだけど?」 「……その内分かるわよ。  あ、一応まだ寝てた方がいいわよ。結構強く殴っちゃったし。」 「ぐっ……。」 準の言うとおり、まだ頭がぐらぐらしてて、そう簡単には動けそうになかった。 「…そう思うなら、思いっきり殴るなよ。」 「……仕方無いでしょ。  まさか、雄真の手であたしが、その…いっちゃうなんて、思って無かったもの……。  …逆は考えてたんだけど。」 「考えるな!!」 「それだけ叫べれば、大丈夫ね。  …それじゃ、お大事に。……後、頑張ってね♪」 ばたん。 好き勝手な事を言い残し、準が扉を閉じた。 ……と言うか、此処は俺の部屋だったのか。今気づいたぞ。 どたどたどたどた。 「……ん?」 なんか、物凄い勢いで階段を上ってくるような音が……? ばたんっ! 「雄真くんっ!」 「雄真!」 「兄さんっ!」 「小日向雄真!」 「うおっ!?」 扉が開く…と言うよりは、蹴破るぐらいの勢いで開かれて。 春姫・杏璃、すもも・伊吹がなだれ込むかのように入ってきた。 ……あ、その後ろには小雪さんと上条さんも居る。 「大丈夫ですか兄さん!何処か痛むところは無いですか!?」 「い、いや、まだ頭がぐらぐらするぐらいで、それ以外は別に……。」 「…ホント?雄真、嘘付いちゃ駄目なんだからね…?」 「ああもう、そんな泣きそうな顔をするな杏璃。本当にそれだけだから…。」 どアップのすももと杏璃を、とりあえず宥める。 「……あれ?」 「ん?どうかしたのか、春姫?」 「……。」 じろり。 「……え?」 何故に、俺は春姫に睨まれているのでしょうか? そんな俺の疑問には、この人が答えてくれました。 「あらあら、雄真さん……首筋のそれは、悪い虫に刺されたのですか?」 「…は?」 小雪さんの台詞に、みんなの視線が俺の首筋に行く。 …そして何故か、みんなの視線も、鋭いものに。 「……あの、なんでみんな、そんな目で俺を睨む?」 「…雄真くん、その首筋のは……何かな?」 「首筋って言われても、俺には何の事だか……?」 『うーん……宣戦布告?』 『……はぁ?』 『…それじゃ、お大事に。……後、頑張ってね♪』 準の台詞が、頭の中で蘇る。 ……ま、まさか。 あの馬鹿、俺の首筋に…キスマークを!? 「小日向雄真……お主、これだけの女子に囲まれても飽き足らず、  ついには……男にまで手を出したのかっ!?」 「ち、違う!と言うか、俺にそんな趣味は無い!多分!  だから思い切りビサイムを振りかぶるな伊吹っ!?」 「兄さん、多分ってなんですか!どう言う事ですかっ!  詳しくはっきり明確な回答を今すぐ求めますっ!!」 「そんな変な部分への突っ込みはいいからっ!」 「…とりあえず、お風呂場で何があったのか、何をしたのか……。  全部話して貰えるよね……小日向くん?」 にっこり。 ヤバイ。小日向くん、と来た。 春姫が本気で怒ってる。しかも今回は、目どころか顔も笑ってないし。 「……ゆうまぁ。あたし、確かに女の子らしくないけど……。  だからって、準ちゃんに手を出さなくてもっ……。」 「ああああ、違うから泣かないでくれ杏璃……。」 杏璃は杏璃で俺の胸で泣き出してしまうし。 「み、皆様、落ち着いて下さいっ。  幾ら小日向様とはいえ、渡良瀬様に手を出すなんて事は……。」 上条さんが俺のフォローをしてくれている……筈だよね? ……小日向様とはいえ、って部分がちょっと、いや大分気にはなるんだけど。 「そうですよ皆さん。  ……でも、準さんが雄真さんに本気になった、と言う可能性も……うふふ。」 「う。」 「「「「「!!」」」」」 しまった。小雪さんの台詞に、無意識に声を出してしまった。 ……マズイ。この状況は、凄くマズイ。 「……反応したよね、小日向くん?」 「い、いや、コレは……。」 「…雄真。正直に言って。……あたしより、準ちゃんの方がやっぱり……。」 「違うから!ああもう、杏璃があの頃の状態にっ……。」 「ど、どうしましょう!兄さんを悦ばせる方法は、全部準さんから学んだのに……。」 「やっぱりアイツが元凶かっ!?」 「ふ、ふふ……まさか、あの者に先を越されてしまうとはな……。」 「越されてって……い、伊吹!?お前は何か物凄い誤解をしてないかっ!?」 「……悦ばせる……?」 じろり。 「……うっ。」 マズイ。唯一冷静な上条さんが、すももの台詞に反応してる。 いや、隠すつもりは無いけど…この場で上条さんまで攻撃に回られるのは勘弁願いたいぞ。 「くっ…。」 こうなったら最後の手段。 多少の代償は払っても、此処は小雪さんの力を借りるしかない。 俺は小雪さんに、アイコンタクトを試みる。 「……。」 ぱっ。 小雪さんが、手をパーにして俺に見せる。 …五つか。 ……やむを得まい。 俺は小雪さんに分かるように、小さく頷く。 「まあまあ皆さん、少し落ち着きましょう。」 「で、ですけど高峰先輩っ…!」 「きっと準さんも、悪戯心でキスマークを付けられたのだと思いますよ。」 小雪さん、ナイスフォロー! 「…そ、そうかな……。」 「そうですよ杏璃さん。ですから気を落とさないで下さい。  ……男の人は、好きな女性の泣き顔を見ると辛いのですよ?」 「…あ。」 はっとした顔をする杏璃。 「いや、誤解とは言え、悪いのは俺だから。  ごめんな、杏璃。」 「う、ううんっ。あたしも、勝手に疑ったりして……ごめんね。」 まだ涙目だけど、笑いかけてくれる杏璃をみて安心する。 良かった。 「……とは言え、このままだとやっぱり気持ち的に宜しくないですよね、皆さん?」 「……は?」 きゅぴーん。 突然光る小雪アイ。 …えーっと、何をしでかすおつもりですか? 「…準さんの付けたキスマークが気になるのでしたら、私達も雄真さんにキスマークを  つけてしまえばいい……簡単な事です。」 「なんですとっ!?」 急に何を言い始めるのですか小雪さんっ!? 「……杏璃ちゃん!」 「オッケー、春姫!」 がしっ。 がしっ。 「なっ!?」 春姫と杏璃に、両腕を押さえられ。 「えへへ……えいっ。」 「ちょ、ちょっと待てすもも!」 すももに、上着を脱がされる。 「では、私達は下を脱がせましょうか……うふふ。」 「…で、では失礼致します、小日向様っ。」 「下を脱がせる必要は無いでしょう小雪さん!  上条さんもホントに脱がせようとしないでくれっ!?」 「…ちぇ。  仕方が無いですから、足を押さえましょう。」 小雪さんと上条さんが、俺の足を押さえる。 「さぁ伊吹ちゃん、レッツキスマーク!」 「わ、私からか!?」 「はい!キスマークを付けたら、他の人と交代ですよ?」 「ふむ……此処はやはり、見えるように首筋に……。」 「か、勘弁してくれえええっ!?」 結局、みんなにキスマークを付けられる事となった。 しかも……。 「あーっ、みんなだけ楽しそうな事して、ずるーい!」  かーさん達も混ぜてー。」 「混ざらなくていいから!」 「…息子にしるしを残すのも、母親の勤めよね。」 「いや、全然関係無いし!」 「……うふふ、では私は雄真さんの乳首の下辺りにでも付けましょうか。」 「どうしてそんなに嬉しそうなんですかゆずはさんっ!?」 ……もはや、多くは語るまい。 その後暫く、長袖しか着れなかったし……。