※完全な番外編です。話の繋がりはありません。  そして馬鹿話なので、そのつもりでお読み下さい。 むかーし、むかし。 ハチおばあさんが川で洗濯をしていると。 「お、でっかい桃発見!」 で、早速持ち帰り、信哉おじいさんに見せました。 「…ふむ。早速頂くとしよう。」 すっ。 おじいさんは、『風神雷神』を振りかぶり……って。 「てぇぇぇいっ!!」 「ちょっと待てっ!?」 すぱんっ。 「よ、避けてなきゃモロに喰らってた……。」 「……むぅ、中から小日向殿が。これは面妖な。」 「いや、一応俺は桃太郎って扱いだから…そのまま名前で呼ぶのはどうなんだ?」 「それなんだが、偉い人からコメントが今届いたぞ。  『色々めんどくさいから、それぞれのキャラ名でも構わない』だそうだ。」 ……それでいいのか作者。こっちは楽でいいんだけど…。 「と言う訳で、早速鬼を退治してこい!」 「いきなりか!?」 「安心してくれ、小日向殿。  このような事があろうかと思い、すでに食事も作ってある。」 そう言って、俺に何かを手渡す信哉おじいさん。 「……コレは?」 「無論、『生ハムいちごパン』だが、何か問題でも?」 しかも、ご丁寧に3つも……。 「あ、有難く受け取っておくよ。」 「うむ。道中、様々な困難が待っていると思う。  だが、小日向殿ならきっとやり遂げる事が出来ると信じているぞ!」 「そうそう。そしてちゃんと金銀財宝を持ってきてくれ。  ……ぐふ、ぐふふふふ……。」 ……一体何を想像したんだ、ハチは。 まぁ、とりあえず。 「杏璃直伝アッパー!」 「ぐべらっ!?」 どしゃ。 「……と言う訳で、行って来ます、おじいさん、おばあさん。」 「達者で。」 「……ぐふっ。」 あ、ハチが逝ったか。 「さて、桃太郎と言えば3匹のお供を連れて行くって話になってるんだけど……。」 「あ、あのっ。」 「ん?」 声のした方向を見ると。 其処には、妙に胸の大きいお猿さん役が。 「えっと、きびだんごは別に無くても一緒に行きたいんだけど……物語上仕方無いから、  きびだんごを下さい、雄真くんっ。」 「……えーと。」 しまった。物語はきびだんごなんだよな……。 「……ごめん。今回の話、おじいさんが信哉だったからさ……。」 俺は、お猿さん……めんどいから、春姫でいいや。 春姫に、信哉の『生ハムいちごパン』を見せる。 「…コレ、食べなきゃ駄目なのかな……?」 「いや、もはや話も滅茶苦茶だから、ある程度は変更してもいいと思うけど……。」 「なら、その……。」 ちらり。 「……雄真くんに、キスして欲しいかな。」 顔を赤く染め、上目遣いで見つめる春姫。 「駄目?」 「……まさか。むしろ、こっちからお願いしたいぐらいだよ。」 「雄真くん……。」 「春姫……。」 お猿さんの春姫を仲間に加えました。 無事春姫を仲間に加え、更に道を進むと。 「やっと来たわね、雄真!」 其処には、犬耳犬尻尾を付けた杏璃(服装は『Oasis』仕様)が。 ……うわ、滅茶苦茶可愛い。 「…雄真くん、鼻の下伸びてるよ。」 「え?あ、いや……。」 ジト目で睨む春姫から目を逸らしつつ、俺は杏璃に話しかける。 「杏璃も俺と一緒に鬼退治をしてくれるのか?」 「甘い、甘いわね雄真。  このあたしが素直に頷くと思ったの?」 …いや、原作ではきびだんごと引き換えで、素直について来てくれるんですけど。 「じゃあ、どうするつもりなんだ?」 「勝負よ、雄真!あたしを従わせるだけの実力があるなら、  あたしに勝てる筈よ!!」 びしっ、と俺を指差し宣言する杏璃。 …さて、どうしよう。 「……あの、雄真くん。ちょっと耳貸してくれる?」 「ん?」 ごにょごにょ。 「…どうかな?」 「……うん。それで行こう。」 春姫のアドバイスを受け、俺は杏璃の方に向き直る。 「ふふん、何か春姫にアドバイスを受けたみたいだけど……そう簡単に行くかしら?」 「……そうだな。だから、杏璃は諦めるよ。」 「………え?」 まさに、豆鉄砲を喰らったかのような顔で動きを止める杏璃。 「いや、やっぱり鬼退治は危険だし、無理に付いて来て貰うのも悪いし。」 「え?ええっ?」 「だから、杏璃は残ってもらうって事で。」 そのまま、杏璃の前を通り過ぎようとする。 「ま、待って!」 きゅ。 杏璃が、俺の服の裾を掴む。 「どうした?」 「だ、だって、原作では犬も連れて行ったんでしょ!連れて行かないと変じゃない!!」 「って、言われても……すでにおじいさんから渡されたのがきびだんごじゃ無いし。」 「あのね、杏璃ちゃん……私も、きびだんごは貰ってないけど、雄真くんと一緒だよ?」 「あうっ…。」 俺と春姫の指摘に、杏璃の声が小さくなる。 「…と言う訳だから。杏璃はゆっくりしててくれ。」 「大丈夫だよ杏璃ちゃん。鬼はちゃんと、私と雄真くんで退治してくるから。」 「……ゃ。」 ぎゅっ。 「…杏璃?」 俺の胸に杏璃が抱きつく。 「……嫌。雄真と一緒に居れないなんて、嫌なのっ。  雄真と一緒がいいの。きびだんごとか、勝負とか、どうでもいいから……。」 「…やっと本音が出たか。」 「杏璃ちゃん、結構意地っ張りだから……。」 くすくすと笑う春姫。 「じゃあ、一緒に行くか、杏璃?」 「…いいの?  あたし、雄真の傍に、居てもいいの……?」 じー。 涙目で、俺を見上げる杏璃。更にたれ耳付き。 勝てません。 「……ああ。俺も、杏璃が傍に居てくれると、心強いよ。」 「…ゆうまぁ……。」 そのまま、目を閉じる杏璃。 「んっ……。」 「……ん。」 ……キスをする直前、春姫の目線がちょっと怖かったけど、気にしない事にした。うん。 お犬さんの杏璃を仲間に加えました。 「さて、次はキジな訳だけど……。」 「…やっぱり、高峰先輩?」 「…小雪さんよね、順番的にも。」 右側に春姫、左側に杏璃が抱きつく状態で、道を進む。 ……他の人々が怪訝そうな目で見るのが、ちょっと悲しい。 「……やっぱり、似合ってないのかな?」 杏璃が魔法服+犬耳犬尻尾と言う事で、春姫も衣装チェンジ。 魔法服+猿耳猿尻尾となった。 「いや、結構可愛いと思うけど…。」 「うん、あたしも可愛いと思うわよ。」 ただ、問題点はそこじゃ無くて……。 「…耳と尻尾付けた可愛い女の子を二人連れて歩いてりゃ、そりゃ怪訝な顔されるよな。」 「えっ?」 「雄真、何か言った?」 「いや、何でも無い。」 ……聞かれてなくて良かった。 一人ずつならまだしも、二人同時攻撃だと勝てないからな。 「あの、そこのお方。」 「はい?」 声のする方向を見る。 そこには。 「こんにちは、雄真さん。」 「「「……。」」」 にっこりと微笑む、何かが。 具体的には説明しにくいけど、一番分かりやすい例で言うと……紅白歌合戦の小林さん? どう考えても、間違った格好だ。 「……えーと。」 「…ゆ、雄真くんっ。」 「こ、こう言うのは雄真の担当でしょ!」 「お、俺か!?」 俺の背中に隠れる春姫と杏璃。 …突っ込みたく無いなぁ。 「…まず確認しますが、キジで合ってますか?」 「はい、キジですよ。」 「……何故にそのような格好を。」 「これぐらい派手なら、すぐに見つけていただけるかと思いまして。」 「……まぁ、確かに。」 嫌でも目立つな。 「…もしかして、今までずっとこの格好で待ってたんですか?」 「はい。  ですが……何故か皆さん、私を遠ざけられているみたいで……少し寂しかったです。」 「あー…。」 「…分かる気がします。」 「……そ、そうね。」 一斉に頷く俺達。 「でも、無事に雄真さんに見つけていただいたので、良かったです。」 「ま、まぁ、そうかな……?」 「では、私にきびだんごを下さいな。  ……もしくは、雄真さんのキスでも結構ですよ?」 きゅぴーん。 小雪アイ……いや、この場合はキジアイ?が光る。 と言うか、何故にキスと知っていますか小雪さん? 「それは勿論、タマちゃんに監視をお願いしていたからです。」 「だから思っている事に突っ込まないで下さい。  ……と言うか、俺の居場所分かってるならその格好の意味は何ですか!?」 「……タマちゃん、ゴー!」 『わ、わて、今回は何もぉぉぉぉ……』 ちゅごーん。 「すみません、タマちゃんの爆発音で何も聞こえませんでした。」 「…いいです。これ以上突っ込むとタマちゃんがどんどん減りそうですから。」 「はい。賢明ですよ、雄真さん。」 にっこりと微笑む小雪さん。 …この笑顔を見ると、勝てなくなるんだよな。 「えーと、ご承知だとは思いますが、きびだんごはありません。  ですので……キスでよろしいですか?」 「あの、雄真さん……。」 そこで、小雪さんが頬を赤く染め。 「…優しく、お願いしますね?」 「……ああもうっ。」 ぎゅ。 あまりに小雪さんの仕草が可愛すぎて、思わず抱き寄せてしまった。 「ゆ、雄真さん?」 「小雪さん…その表情、反則です。  そんな顔されたら、男ならイチコロですから…俺以外には、しないで下さいね?」 「……はい。  雄真さんだけ、ですね?」 「そうです。俺だけ、ですからね。」 小雪さんの頬に手を添える。 「…ん。」 「んっ…。」 そのまま、俺と小雪さんは暫くの間、唇を重ねた。 キジさんの小雪を仲間にしました。 「さて、これで無事仲間も揃ったし、早速鬼退治に……。」 つんつん。 「雄真さん、あれはなんでしょう?」 「ん?」 背中をつつかれ、俺は小雪さんの向いている方向を見る。 「……な。」 其処には、何故かダンボール箱に入ったすももが居た。 箱には『すもも箱』と書いてある。 そして、頭には……猫耳? 「…どう見ても、すももちゃんよね。」 「うん…何処からどう見ても、すももちゃんだと思うけど……。」 杏璃と春姫も、不思議そうな、困ったような顔をしている。 まぁ、ぱっと見捨て猫……って言うか、捨てすもも、だからなぁ。 「と、とりあえず行ってみるか……。」 そのまま、みんなですもものところへ。 「…な、何してるんだすもも?」 「あ……。」 俺達の姿を見つけたすももが、目を輝かせる。 だが、それも一瞬で。 「お、遅いじゃないですか兄さんっ。  このまま拾ってもらえなければ、どうしようかと思ったじゃないですかっ!」 「いや、拾うとか以前に、一体此処で何をしてるんだ……?」 俺の質問に、すももはえっへん、と無い胸を張り。 「勿論、鬼退治に行く兄さん……じゃ無くって、桃太郎のお供になるために  待ってたんです!」 「いや、お供って言われても……全員揃ってるぞ?」 「……え?」 俺の答えに、すももがきょとん、とした顔をする。 「えっと……私がお猿さんで。」 「あたしが、犬ね。」 「私がキジです。」 「で、俺が桃太郎。全員居るな。」 「……ほ、ホントです!わたしの役がありませんよ兄さんっ!?」 がっくんがっくん。 「うをっ!?」 突然立ち上がったすももに掴みかかられ、更に揺さぶられる。 「ど、どうしましょう兄さん!わたし、要らない子ですか!?仲間はずれですかっ!?」 「ちょっと待て!とりあえず揺さぶるな!!」 「あっ……ご、ごめんなさい兄さん……。」 ようやく落ち着いたのか、すももの揺さぶりが止まる。 「…と言うか、猫は桃太郎に出ないと思うんだが。」 「……そ、そうでした。  猫耳が可愛くて、気づきませんでした……。」 がっくりと肩を落とすすもも。 ……まぁ、すももだからな。本当に気づかなかったんだろう。 「……で、どうしよう?」 とりあえず、背後に居る三人に問いかける。 「別にいいんじゃないの?一緒に連れて行けば。」 「うん、私も杏璃ちゃんの意見に賛成。お話には無いけど……今の時点で大分違ってるし、  問題は無いんじゃないかな?」 「そうですね。  それに、仲間は多い方が心強いです。」 どうやら、みんなOKらしい。 「と言う事だから…一緒に来るか、すもも?」 「はい!頑張って鬼退治をしちゃいますよ〜。」 子猫さんのすももを仲間にしました。 で、様々な苦労の末、俺達は遂に鬼ヶ島へ。 「良くぞ来た小日向雄真……いや、桃太郎よ!  我が名は赤鬼!お主達の旅も、今日此処で私に負ける事によって」 「すももさん、ごー!」 「い・ぶ・き・ちゃぁぁぁぁんっ!」 「な、何故にすももが居るのだっ!?」 がしっ。 「鬼娘の伊吹ちゃん、ラブリーです萌え萌えです思わず食べちゃいたいです〜〜〜っ。」 「ま、まだ私は台詞の途中…ま、待てすもも!何故に私の服を脱がすのだ!?」 「うふふふふ、い〜ぶ〜き〜ちゃ〜ん〜♪」 「え、あ、や……ひゃあああっ!?」 …えーと。 「さあ雄真さん、残るは青鬼一匹です。」 にこやかに言う小雪さん。 「…い、いいのかコレで?」 「…い、いいんじゃないかしら?……少なくとも、あたしはタッチしないわよ。」 色んな意味で大変な伊吹を見ないように、目を逸らす杏璃。 「…の、ノーコメント。」 両手で、真っ赤な顔を覆っている春姫。 でも、目の部分は隠れてないから、しっかり伊吹とすももの行動は見てるんだけど。 『ねぇさん、青鬼を見つけましたで〜』 「何処ですか、タマちゃん?」 『あっちでっせ〜』 「…と言う訳ですので、よろしくお願いしますね、雄真さん。」 「俺だけですか?普通、みんなで行くものじゃ……。」 「駄目ですよ雄真さん。  ……沙耶さん……もとい、青鬼さんは恥ずかしがりやさんですから。」 このこの、と俺の背中を突付く小雪さん。 …え?何の話ですか? 「…ですから、雄真さん一人でお願いします。」 「……物凄く話がかみ合ってない気がしますが、行って来ます。」 「たしか、ここら当たり……。」 「はっ!」 ぶぅんっ。 「うをっ!?」 間一髪で、俺は金棒を避ける。 そして。 「きゃあっ!?」 どしゃっ。 「…あー、金棒が重すぎて、自分まで倒れちゃったのか……。」 「くっ……。」 「って、ぼーっと見てる場合じゃ無かった。  えいっ!」 俺は倒れた青鬼に馬乗りになり、押さえ込む。 「大人しくしろ!  …って、何か前に見た展開だな。」 「ま、参りました……。」 大人しく降参する青鬼。 そして、そのまま俺に抱き付いてくる。 …抱きついて? 「か、上条さん?」 「そ、その、……私、初めてですので、上手く出来ないかもしれませんが……。」 何故か、頬を赤く染める青鬼。 青なのに分かるのかよ、って突っ込みは厳禁。 と言うか、またこの展開なのか!? 「いや、その……。」 「…やはり、私では駄目でしょうか……?」 じーっ。 「……そんな事は無い、けど。  ほら、俺は桃太郎だし、そっちは退治される役だし……。」 「で、でしたら、その……。」 さわさわ。 「うわっ!?」 青鬼……もとい、上条さんが、突然、俺の下半身……息子をゆっくりと撫で回す。 「こ、小日向様に、その、『貫かれて』退治された、と言う事で……。」 「…それ、誰に言われたの?」 「……わ、渡良瀬様に。」 「まーたアイツかっ!?」 すももと言い、上条さんと言い……アイツはどうしてそんな変な事しか教えないかなぁ。 『でも嬉しいでしょ、雄真?』 「……ノーコメント。」 「…え?」 「あ、いや、こっちの話。」 ……最近、良く準の幻影を見るなぁ。 疲れてるのか? 「あ……こんなに、大きく……。」 でも、息子は元気でした。 そして、真っ赤になりつつも、手を止めない上条さん。 ……なんか、目が潤んでいるのは気のせいですか? 「あ、あの…上条さん?」 「……小日向様っ。」 ぐっ。 突然、上条さんが俺の首に手を回し、引き倒す。 そのまま、俺の耳元に顔を寄せ。 「一瞬の気の迷いでも、戯れでも構いません。  どうか、今だけ……私に、沙耶に……お情けを、下さい……。」 「……っ。」 身体を震わせ、呟く上条さん。 …ああもう。こんな言い方するなんて……。 「……上条さんは、ズルイな。」 「…え?」 「そんな言い方されて、断れる男なんて、絶対居ないよ?」 ぎゅっ。 俺も、お返しとばかりに、上条さんを強く抱きしめる。 「……嬉しいです。小日向様に、抱いて頂けるなんて……。」 「…違うでしょ。」 ちゅ。 頬に不意打ちでキス。 「俺は今から、青鬼を退治するんだから。  ……そんな喜んじゃ駄目。」 「そ、そう言われましても……。」 「それじゃ、退治するの止めちゃおうかな?」 「そ、そんなっ。」 慌てて緩んだ顔を元に戻そうとする上条さん。 だけど。 ちゅ。 「…っ。」 ちゅ。 「……こ、小日向様っ。」 「何?」 頬、首筋、おでこ……そして、唇。 いろんな所に、キスの雨を降らせる。 ……勿論、その状態で上条さんが真面目な顔を維持できる訳も無く。 「…ずるいです。そのような事をされたら……。」 「……嬉しくて、顔が緩んじゃう?」 「っ……小日向様っ!」 顔を真っ赤にしつつ、俺を睨む上条さん。 そんな顔も、とても可愛くて。 「……上条さん。」 「…は、はい。」 「……いいかな?」 「……はい。小日向様になら、喜んで……。」 「ただいまー。」 「お帰りなさい、雄真くん。  ……あれ、上条さん?」 青鬼…上条さんと一緒に帰って来た俺を、春姫が不思議そうな顔で見つめる。 「とりあえず、素直に降参したから、退治せずに捕まえてきたんだ。  これからは心を入れ替え、良い行いをするって誓ってくれたし。」 「は、はい。  悔い改め、これからは良い行いをしていこうと思います。  ……その、小日向様と共に。」 顔を真っ赤にして宣言する上条さん。 ……うん。その気持ちは凄く嬉しい。嬉しいんだけど…。 「…雄真くん。後で、ちょっとお話があるから。」 「…嫌なんて言わないわよね、雄真?」 「……はい。」 ああ、また二人にお説教されるのか…あまり嬉しくは無いけど、今はスルー。 「それで、赤鬼の方は……。」 ちらり。 「えへへ、これからは伊吹ちゃんと一緒に良い事をしますよ〜。」 「…ちょ、ちょっとだけだぞ?すももが言うから、仕方無く、だからな!」 「わたしが言うからですか……う、嬉しいです伊吹ちゃ〜んっ!!」 「ま、またなのかすももっ!?」 ……あー。 伊吹、また地雷を踏んだな。 「ま、まぁ若干不安はありますが、伊吹も大丈夫そうですね。」 「それじゃ、これで鬼退治は終了だね、雄真くん。」 「さーて、後は……どうしよう?」 首を捻る杏璃。 「あらあら、決まっているじゃありませんか杏璃さん。」 「…小雪さん?」 きゅぴーん。 「私達は、言わば雄真さんのペット、下僕、奴隷ですから。  それはもう、雄真さんの欲望の赴くまま、好きなように……うふふ。」 「ぶっ!?」 いきなりとんでもない事を言う小雪さん。 「ペットでも下僕でも奴隷でもありませんから!  と言うか、欲望の赴くままってなんですか!?」 「……嫌ですか?」 じー。 「…そ、そんな目で見ても駄目ですよ!  なあ、みんな!」 俺は、まわりに居るみんなを見回す。 「……あ、あのね、雄真くん。」 「なんかデジャヴを感じるけど……なにかな、春姫?」 「……雄真くんが望むなら……いいよ?」 ぱさっ。 「って、何で服を脱ぐんだ春姫!?」 「…ゆうまぁ。」 ぎゅ。 俺の背後に、何かが抱きつく。 そして。 ぷにゅん。 柔らかい感触も。 「……あたしを、忘れちゃ、や。  いっぱい、ご奉仕するから……。」 「って、もしかして杏璃も脱いでるのかっ!?」 い、いかん! 何か前回よりも更にマズイ気がするっ!! 「こ、こうなったら……。」 「駄目ですよ、雄真さん。」 「駄目ですよ、兄さんっ。」 がしっ。 がしっ。 「うをっ!?」 小雪さんとすももが、俺の腕に抱きつく。 「って、二人とも脱いでるし!?」 「うふふ……逃がしませんよ、雄真さん。  鬼退治を成し遂げた『ご褒美』……頂きます。」 「えへへ……兄さんに喜んで貰える様に、通りすがりの準さんから、  いっぱい技を習いましたから、期待してくださいね!」 「通りすがるなよ準っ!!」 ああ、マズイ。本当にマズイ。 こ、ここはっ。 「い、伊吹!上条さんっ!!」 「…うむ。分かっている。  沙耶、頼むぞ。」 「はい、伊吹様。」 がこん。 上条さんが、岩から出たレバーっぽいものを引く。 ごごごごごごごご。 「……海流を操作しました。  これで、この島に船が来る事は出来ないかと。」 「よし、完璧だな。」 「完璧だな、じゃ無いっ!!  それじゃ、この島から出られないって事だろ!?」 「……そうだが、何か?」 不思議そうに首を傾げる伊吹。 「何か、じゃ無いっ!  俺が帰らないと、おじいさんとおばあさんが心配するだろ!」 「……まぁ気にするな。」 「気にするぞ!  と言うか、それ以前にこの状況は良くないと思わないのか?」 「……私は鬼だから、人間の一般知識には疎い。だから知らん。  なあ、沙耶?」 「…わ、私も知りませんっ。」 「そんな無茶苦茶な……。」 だが、そんな伊吹の台詞に。 「…じゃ、じゃあ、私も猿だから分からない、って事で……。」 「勿論、あたしも犬だから知らないわね。」 「キジですから。」 「猫さんですから、知りません。」 「みんなして嘘付くなっ!!」 特に春姫。分からない事で、って何だ。 「…まあ、鬼に負けたと思って諦めろ。」 「す、好き勝手な事を……。」 「そ、その分……たっぷりと尽くしてやる。  行くぞ、沙耶!獣風情に負けてはならん!」 「はい、伊吹様!」 「って、ちょ、ちょっと待てっ!?」 ……こうして、桃太郎とその手下は、自らを犠牲にし、鬼を封じ込めたのでした。 めでたしめでたし。 「って、あれ?かーさん達の出番は無いの?」 「折角、鬼の総大将って肩書きを手に入れたのに……。」 「あらあら、それじゃあ信哉さんと八輔さんを人質にしたのは無駄でしたか?」 「あの……魔法を使って空を飛んで、鬼ヶ島に行くのは出来ないんですか?」 「「「!!」」」 ……えっと。 鬼の総大将や通りすがりの準にゃんも封じ込める事に成功する予定です。まる。