むかーしむかし、とあるところに赤ずきんと呼ばれる女の子がおりました。 ある日、赤ずきんはお母さんにお使いを頼まれます。 「鈴音ちゃん、ちょっとだけお願いしてもいいかな?」 「はーい、ママ。」 ……はい、其処の人。思いっきり困った目でこっちを見ない。 この物語では鈴音さんが赤ずきんで、お嬢ちゃんがそのお母さんなんです。 例え赤ずきんが180cm越えの身長だとか、片方腹黒毒舌策士ロリで誘い受けとかそんな事は突っ込んじゃいけません。 「さ、策士って失礼な……。って言うか、そのダメ過ぎる記号の羅列はどーゆー事なんだろう……。」 「ん、どうしたのママ?」 「え?ううん、別になんでもないよ?」 外野の言葉をスルーして笑顔のお母さん。伊達に世間を騙してはいません。 「……あの作者、後で確実にコロス。」 「ま、ママ……?」 マジ怒りのお母さんを見て、ちょっと腰が引けてる赤ずきん。 でも、そうも言っていられません。だってお話が進まないから。 「ええっと、私に用事って何なのかな?」 「あ、そうだった。  このお料理を、おばあさんに……。」 其処まで言って、言葉を止めるお母さん。 「……このまま届けなかったら、比良坂さんの出番は無くなっちゃうんだよね。」 「ちょ、ちょっとママっ!?」 流石はお母さん、いきなりの物語無視発言です。 「そ、それは不味いよ!」 「えー。  だってわたし、比良坂さんの敵だしー。」 既にやる気の無いお母さん。 ……相変わらずのミスキャストぶりに正直作者も凹み気味です。 「駄目だよママ!  確かにこのままお料理を届けなかったら、母様の出番も無いけど……。」 「……無いけど?」 ここで赤ずきん、対お母さん用の切り札を炸裂させます。 「えっちでケダモノさんで、でも優しく犯してくれる狼さんの出番も無くなっちゃうんだよ?」 そうです。 此処で話が終わると言う事は、当然赤ずきんも狼に出会う事は無いのです。 「うっ……そ、それは……。」 「それに、今回父様は正式に狼さん役なんだよね?  って事は……誰に遠慮する事も無いから、いつもより凄い事もしてくれたり……。」 「……はぅ。」 ぼんっ。 赤ずきんの言葉を聞き、顔を赤らめるお母さん。 「そんな……駄目だよお兄ちゃんっ。  幾ら森の奥だからって、お外で後ろからなんて……きゃんっ♪」 お母さん、完全にピンク色の妄想を垂れ流しっぱなし。 そんな駄目お母さんに気づかれぬよう、赤ずきんはお料理をこっそりと持ち。 「じゃあママ、私はこのお料理を届けに行ってくるねっ!」 「ひゃんっ……今日のお兄ちゃん、いつもよりえっちさんだよ……。」 ……相変わらずのお母さんを放っておいたまま、家を出ました。 「るーるるるっるー、今日もいいてんきー。」 激しくサザエ的な歌を歌いつつ、おばあさんの所に向かう赤ずきん。 と、其処へ。 「あー……がおー。」 激しくやる気の無い声と共に現れたのは、件の狼です。 何処からどう見ても只の人……もとい狼なのですが、何故か極一部の妖怪に激しく人気があります。 そして普通に衣服を着てるんですが……まあ、そんな狼も居るでしょう。たまには。 「こんにちは、赤ずき」 「父様っ♪」 ぎゅむっ。 「ちょ……こら、鈴音!  此処のシーン、こんなじゃないだろっ!」 流石は狼大好き娘の赤ずきん。 案の定シナリオ無視で、狼に抱きつきます。 「大丈夫大丈夫。  ある程度なら、アドリブで動いてもいいって偉い人に言われてるから。」 「そんなのアリか……?」 アリです。って言うか馬鹿正直に物語進めても全然面白くないからむしろ推奨です。 「んな無茶苦茶な!?」 喧しいです。 そんなに物語をちゃんと進めたいのであれば狼が勝手に頑張ればいいだけです。 「こ、このへっぽこ作者……後で絶対に殺すっ。」 何か勝手に殺意を抱いている狼を他所に、肝心の赤ずきんは……。 「えいっ。」 「うをっ!?」 どさっ。 「えへへ、うっかり倒れちゃった♪」 「どう見ても足引っ掛けただろ!?」 体型差も手伝い、あっさりと狼を押し倒します。 「えっと……お話の通りだと、私は此処で少し時間を潰さないといけないんだよね?」 「……まあ、その通りだけど。」 そうしないと、狼がおばあさんを食べる時間が生まれないのです。 「だから鈴音、お前は暫くここら辺りで時間を潰して」 「やだもん。」 赤ずきん、いきなりの任務放棄宣言です。 伊達に母親から色々と学んだだけはあります。姿形的には全然似てませんが。 「やだもん、って……。」 「……だって父様、今から母様のところに行くんでしょ?」 「まあ、比良坂がおばあさん役だからな……。」 仕方ありません。他にキャスト居ませんから。 ……別に年齢順で選んだ訳じゃ無いです。本当にありませんよ? 「でもって……狼さんだから、おばあさんを『食べる』んだよね?」 「そりゃそうだろ。そう言う話なんだから。」 さも当たり前のように言う狼。 ですが、赤ずきんはぎろり、と狼を睨みつけます。 「……どう言う意味で『食べる』の?」 「……え”。」 一番突かれたくない部分を突かれ、狼の声が裏返ります。 「いや、それは……物語通りに……。」 「本当に母様をまる呑みなんて出来ないよね?  それに……母様が死んだら、母様の『贄』である父様も死んじゃうでしょ?」 「……仰るとおりです。」 「って事は……。」 さわさわ。 「こ、こらっ!?」 「……こーゆー事するんでしょ、父様?」 服の上からゆっくりと狼のいけない部分を撫で回す赤ずきん。 さり気なくお腹の上に馬乗りして狼が逃げられないようにしている辺りに、熟練の動きが伺えます。 「ふかふかのベッドに、母様を組み伏せて……。  『お話上逆らっちゃ駄目だろ』とか言って、母様にイジワルしながら……『食べちゃう』んだよね?」 「……う。」 むくり。 「……ほら。  やっぱり父様、そんな事考えてた……。」 赤ずきんの言葉に、思わず息子さんが反応してしまう駄目狼。 そんな狼に、赤ずきんはにっこりと笑みを浮かべながら。 「……ママにこの事、言っちゃおうかなぁ?」 「!?」 さり気ない惨殺確定宣言を受け、狼の顔が一気に蒼ざめます。 「此処の世界だと、ギロチンとか斧とかになっちゃうのかなー。  それとも、もっと凄い拷問道具もあったりとか……。」 「って、父親を脅すなっ!」 「……ええっと、ママの真似をしてるだけなんだけど。」 「……あー。」 思わず納得してしまう狼。 ……確かに、お母さん譲りです。 「…でね、父様。」 「あーもう何だよ……。」 「……此処で『私が暫く動けなくなるぐらい疲労すれば』、物語的にも狼的にも一番だと思うんだけど?」 「ぐっ……。」 正にその通り。 物語の進行的にも問題ありませんし、赤ずきんがお母さんのところに戻る事も無いので 狼的にも安心です。 「だ、だけど……。」 「……駄目?」 じーっ。 「…ようやく着いたか。」 暫く後。 狼はやっと、おばあさんの家にたどり着きました。 ちなみに、予定より随分と時間が過ぎています。 具体的には2・3回イケナイ事をするぐらいの時間です。 「さて、狼として家の中の様子を探ってみるか。」 こっそりと窓に近づき、中を覗き込む狼。 ですが……。 「……あれ?誰も居ない?」 家の中はもぬけの殻。 おばあさんどころか、子蜘蛛の姿すら見えません。 「むむ……時間が大分過ぎたから、何処かに散歩に行ってるとか?」 「……ええ。何時まで経っても狼が来ないから、少し森を散歩していたのよ。」 狼の背後から声がします。 ですが……狼は振り向けませんでした。 何故かと言うと。 「ええっと……気のせいならいいんだが、びしびしと感じるのは……殺気?」 「……――さん。  自分が先程まで鈴音に何をしていたか、覚えているかしら?」 ぞくり。 更におばあさんからの殺気が膨れ上がります。 どうやら、おばあさんは赤ずきんと狼の『道草』を全部知っているようです。 「兎も角、家に入りなさい。  言い訳なら、それからじっくりと聞きましょう。」 「……ういっす。」 で、家の中に入った狼とおばあさんはと言うと。 「確か……『真面目に役を演じよう』と言ったのは――さん自身だったわね?」 「……ごめんなさい。」 狼、即土下座。 狼としてのプライドなんて欠片もありません。 「それが蓋を開けてみれば……始まって早々、鈴音をいきなり穢すなどと……。」 「ぐぁ……。」 狼としては『脅された』とか『向こうが仕掛けてきた』とか色々言い訳は出来たのでしょうが、 結局のところは自分が赤ずきんを美味しく戴いてしまっているので何とも言えません。 「それで……――さんとしては、何か言い訳はあるのかしら?」 「いや、無い。  例え途中の過程はどうであれ、結局コトをしてしまったのは俺だ。  だから……責任云々は全て俺にある。鈴音は全然関係無い。」 「……そう。  つまり、其れ相当の覚悟は出来ていると言う事ね?」 ぎろり。 並みの人間なら気絶しかねない程の眼光で狼を睨みつけるおばあさん。 ですが、狼も数々の修羅場を潜り抜けているので、この程度ではびくともしません。 「勿論だ。  物語的には不味いかもしれないが、此処で俺が惨殺されると言うのなら、それでもいいと思う。」 おばあさんの目をじっと見つめ、覚悟の程を示します。 その状態が、暫く続いた後。 「……仕方無いわね。」 ふぅ、と小さくため息をつくおばあさん。 「一度引き受けた以上、物語をやすやすと変える訳にもいかないでしょう。」 「……いいのか?  上のほうは、ぶっちゃけどうなってもいい感じらしいが……。」 いやいやいや。 此処で狼惨殺でグッドエンドだと、後々の展開的にこっちも困るのですが……。 「五月蝿い黙れ駄目作者。」 こ、この駄目人間め……。 「それお前だろ。」 ……こほん。 此処で進行役がぶち切れても仕方ありません。話を進めましょう。 「さて……話を進めるとなると、私が――さん……もとい、狼に食べられる訳だけれど……。」 「……ああ。」 其処で、狼とおばあさんの間に沈黙が訪れます。 「「……。」」 何故かお互いに目を逸らし、動きが止まります。 「……ケダモノ。」 「いきなり何を言うか。」 「ならば、今何を考えていたか言って御覧なさい。」 「……どうやって物語を進めようかなって……。」 「……ベッドを使って、どうやって物語を進めるつもりだったのかしら?」 「うぐっ!?」 どうやら図星だったらしく、狼が僅かに仰け反ります。 「……。」 そんな狼を半目で見つめていたおばあさんでしたが、暫くするとベッドの方へと歩き出し。 ぽふ。 ベッドに入り、布団を被ってしまいました。 「えっと……比良坂?」 「く……くー。すぴー。」 ……上の人も思わず突っ込みたくなるような狸寝入りです。 「……これはつまり、そう言う意味でいいのかな?」 「っ……。」 狼の言葉の所為かは知りませんが、おばあさんは狼に背を向けました。 「…そうだよな。  これはあくまでも物語を進める為に、仕方なくおばあさんはベッドに入ったんだよな?」 もぞもぞ。 きゅ。 狼もベッドに入り、そっとおばあさんを抱きしめます。 「出来れば、ちゃんとおばあさん……いや、比良坂の顔が見たいんだけどな。」 「……。」 もぞもぞ。 「……。」 狼の方に向き直るおばあさん。 その顔は真っ赤です。 「あー……その、なんだ。  ……出来るだけ優しく食べるからな。」 「……馬鹿。」 「うわ、遅刻も遅刻、大遅刻だ……。」 もうまわりも随分と暗くなった頃。 慌てておばあさんの家にやって来たのは赤ずきん。 「母様、怒ってるだろうなぁ……。」 自分にも厳しく他人にも厳しいおばあさんを思い出し、身震いをする赤ずきん。 いきなり家に入るのは怖かったのか、窓からこっそりと中の様子を伺います。 すると、其処に見えたのは。 「……。」 何故か不思議に上下しているベッドと布団。 そして僅かに見えるのは……多分狼とおばあさんなのでしょう。 つまりは……まだお食事の真っ最中と言ったところでしょうか。 「……てえいっ!!」 どかっ! 掛け声と共に、思いっきりドアを蹴破る赤ずきん。 「うわっ!?」 「きゃっ!?」 勿論、驚いたのはお食事中の狼と食べられていたおばあさんです。 「母様、一体何してるのっ!」 「こ、これは、その……。」 突然の事に一瞬とまどうおばあさん。 ですが、それもほんの一瞬で。 「……それを言ったら、貴方は何故こんなに遅くなったのかしら?」 「そ、それは……。」 後ろめたい事がある赤ずきんは、思わず言葉を噤んでしまいます。 「……あー。」 そして根本的な原因でもある狼は、無い知恵を振り絞ってこの場をどう治めようかと考えます。 ……そして、狼が出した結論とは。 じゅぷっ。 「んあっ…ちょ、ちょっと――さんっ……。」 「ええい五月蝿いっ。  赤ずきんが来る前に食べられてないといけないんだから、おばあさんは大人しく俺に喰われろっ。」 「やっ……そんな、鈴音が居るのにっ……。」 狼はこの場でおばあさんを食べながら、物語を強引に進める事にした模様です。 おばあさんは一応嫌がりますが……まあ表面だけのようです。 何だかんだ拒否の言葉を言いつつも、自ら狼の首に腕を回して抱きついてしまっていたりします。 「こ、こんな……孫の前で、食べられるところを見られるなんてっ……。」 「……っ!?  こら、そんなに締め付けたら……っ!」 「〜〜〜っ!!」 赤ずきんに見られている事を思い出したのか、おばあさんが急激に上り詰めます。 そして。 かぷっ。 「っ……だ、出すぞっ!!」 どくんっ。 どくっ、どくんっ……。 それを我慢する為に狼の首筋に噛み付いたのが、逆に狼の引き金を引いてしまいました。 「くっ……初音っ……。」 「っ……ぁ……。」 おばあさんはぎゅうっと狼を抱きしめ、狼の欲望を自分のナカで受け止めます。 ……そんな時間が、暫く続いた後。 「……可愛かったぞ、初音。」 「……馬鹿。」 耳元で囁く狼が愛しくて、おばあさんは更に狼を強く抱きしめました。 「っ……。」 困ったのは赤ずきんです。 お話は完全に狂ってしまっているし、それ以上に問題なのは。 「……父様ぁ。」 ……赤ずきんも、スイッチが入ってしまった事です。 「母様ばかり、ずるいよ……。  私も、食べられる筈なのに……。」 瞳は潤み、顔は真っ赤に染まった赤ずきん。 そんな赤ずきんを、狼が見逃す訳はありません。 「やれやれ……これも物語を進める為だし、仕方が無いか。」 苦笑しつつ、おばあさんを抱きしめたままベッドに座る狼。 そして、ゆっくりと赤ずきんの方を向き。 「……おいで、鈴音。」 「さて、と……。」 更に数時間後。 狼は身支度を整え、寛いでいました。 「そろそろ、猟師が俺を倒しにくる時間かな?」 時計を見て、狼が呟きます。 「……キャスト的には、一人しか浮かばないんだよなぁ。」 自分の職場の上司でもある人外な父親を思い浮かべ、大きくため息を付く狼。 ……どう転んでも惨殺です。良くて即死でしょうか。 「ま、仕方が無いか……。」 椅子から立ち上がり、ゆっくりと身体を動かす狼。 その途中、ふとベッドに目を向けると。 「……こうやって大人しく寝てる分には、どっちもお嬢様なんだけどなぁ。」 「「……すー。」」 狼に美味しく食べられたおばあさんと赤ずきんが、ぐっすりと寝ていました。 しかもどっちもうっすらと笑みを浮かべ、とても幸せそうです。 ……食べられた筈なのに幸せ?とか無粋な突っ込みは禁止です。 こんこん。 「お、来たか。」 ノックの音を聞き、狼はそっと扉を開きました。 「珍しく時間通りに来たな、おや……じ……。」 扉を開けた狼は、訪れた猟師を見て動きが止まりました。 何故なら……どう見てもその猟師はちっちゃいからです。 具体的には、小学生ぐらいな背丈であり……何より特徴的なのは、その身体のまわりに アヒルの模型が浮いてる事でしょうか。 「悪い狼さんが居るのは……此処かなぁ?」 「お、お嬢ちゃんっ!?」 「違うよ、お兄ちゃん。  わたしは、赤ずきんやおばあさんにえっちな事をして美味しく食べちゃう狼さんを退治する  猟師さんだよ♪」 言葉の最後に『♪』なんて付けていますが、猟師さんの目は全然笑っていません。 と言うか、アヒル隊長以下アヒル小隊が浮いてる時点で殺る気満々です。 「あ、あの……本当の猟師役の人は、何処へ?」 「ふっふっふ……おばさまに頼んで、おじさまを足止めして貰ったの。  その間に、わたしが上の人を脅し……じゃなくって、代わりにってお願いしたの。」 「……へっぽこ作者め、俺を売ったな。」 いや、だって生身の人間にアヒル小隊はマジ死亡フラグって言うか……。 ……失礼。話を進めましょうか。 「えっと、割と本気……ですよね。そうですよね……。」 「さーて、物語通りに退治するからね、お兄ちゃん♪」 相変わらず笑ってない笑みを浮かべつつ、惨殺宣言をする猟師さん。 鉄砲は構えていませんが、今すぐにでもアヒル小隊が狼の身体を貫かんと狙いを定めます。 「……せめて、場所を変えるぐらいはいいかな。  此処でアヒル小隊乱舞喰らったら、この家も壊れちゃうだろうし……。」 ちらりと狼がベッドに目線を向けると、未だにぐっすりと眠っているおばあさんと赤ずきんの姿が。 「……むしろ比良坂さんごと纏めて……。」 「確実にに鈴音も巻き込むと思うんだが……。」 狼の的確な突っ込みに、殺意の波動にのまれていた猟師さんも少しは落ち着いたようです。 「……じゃあ、森の奥にする。  あそこなら、どう足掻いても助けは来れないだろうし。」 「ういっす……。」 ――そして。 「ひゃうっ……。」 くちゃり。 「おかしいなー。  どうして猟師さんは、こんなに濡れちゃってるのかなー。」 案の定、猟師は狼にいいようにされていました。 と言うか、おばあさんの家で即座に狼を倒さなかった時点で、猟師の負けは既に決まっていたとも言えます。 狼の言葉には嘘は無いので、いつもの通り猟師はあっさりと懐柔され、籠絡された訳です。 「もしかして……期待してたのかな?」 「っ……ち、違うもんっ!」 「……そっか。  じゃ、止めちゃおうかな。」 そう言って、狼は指の動きを止めてしまいました。 「ぁ……。」 困ってしまうのは猟師です。 既に数回、自分が果てそうになる度に動きを止められてしまい、まだ一度も果ててないのです。 「やっ……やだよ、お兄ちゃんっ……。」 『えっちな狼さんには、えっちなお仕置きをいっぱいする』と言っていた猟師でしたが…… 最早それどころの話ではありません。 狼を見上げ、必死に懇願します。 「なら、ちゃんと素直に言って欲しいな。  ……お嬢ちゃんは、俺にどうして欲しいの?」 「あぅ……。」 猟師の心の中で、激しい葛藤が起こります。 このまま楽になって、狼に美味しく食べられてしまうべきか。 一応物語通りに狼を倒し、森の奥で二人っきりでラブラブなハッピーエンドを迎えるべきか。 ……どっちもすでに原作からは大きくかけ離れていますが、突っ込んでも無駄です。 「わ、わたしは……猟師さんだから……。」 ちゅぷっ。 「ひゃんっ!?」 くちゅくちゅ。 「やっ、ダメ……そんな、動かしちゃっ……。」 「……じゃあ、止める?」 ぴたり。 「や、やだぁっ……。」 「……支離滅裂だよ、お嬢ちゃん。」 苦笑しつつ、猟師を抱き寄せる狼。 そして、猟師の手を取り……とある部分へと導きます。 「あっ……。」 「早く猟師さんが素直になってくれないと……我慢しきれなくなって、代わりの獲物を探しちゃおうかなぁ。  例えば……まだぐっすりと寝てる筈の、おばあさんや赤ずきんとか?」 「……だ、駄目っ。」 ぎゅううっ。 「いでででででっ!?  ちょ、お嬢ちゃんっ!?」 「あっ……ご、ごめんお兄ちゃんっ!?」 見た目は子供、実際は妖怪。 大人顔負けの力で息子を握りつぶされそうになり、狼から大量の汗が噴き出しました。 「ひ、酷い目にあった……。」 「だ、大丈夫……?」 「……どうかなぁ。  もしかすると駄目になっちゃったかもしれないし、此処は確認しないといけないかなぁ……。」 そう言って、にやり、と笑う狼。 こう言っている時点で確実に大丈夫なのですが……。 「そ、そうだよね。  駄目になってたらいけないから、確認しないと、だよね……。」 ゆっくりと狼のモノを撫で回す猟師。 「でもって、この原因を作ったのはお嬢ちゃんなんだから……当然、責任を取ってくれるよね?」 「……うん。  わたしが悪いんだから……責任を取らないと……。」 「そうそう。  だから……どんな風に犯されても、逆らえないよね……?」 「あ……。」 狼の言葉に、ぶるり、と大きく身体を震わせる猟師。 そして。 「……。」 「……ん?なあに?」 「……犯して。  わたしの事、いっぱい……。  お兄ちゃんが満足するまで、わたしのナカで、びゅくびゅくって……。」 『責任を取るために犯されるのは仕方が無い』と言う表向きの理由が用意されたお陰で、 猟師はようやく本音を口にしました。 「……こう言う部分は、比良坂とそっくりなんだよなぁ。」 くすくすと笑いながら、猟師の身体を持ち上げる狼。 そして、自分のモノの上に猟師の身体が来るようにして。 「……じゃ、確認するからね?」 「……ん。」 ――こうして。 狼は見事、三人を美味しく食べてしまったのです。 その後、どうなったかと言うと。 「まったく、どうして私が皿洗いなどを……。」 「……そりゃあ料理できない唯一の存在なんだから、当然だろ。」 「そーですよねー。  むしろその程度で許してあげてるんですから、感謝して皿洗いして下さいね、比良坂さん?」 「こ……この小娘は……。」 「か、母様、落ち着いて……。」 狼はおばあさんの家にちゃっかりと居座っていたのです。 その上三人をまる呑みするのを止め、自分の為に奉仕させると言う鬼畜の所業を行っていました。 「でも、皿洗いをする姿が様になってきたよな。」 「……全然嬉しくないわね。」 「そうか?個人的には奥さんっぽい感じでいいと思うんだが……。」 「っ……。」 ぼんっ。 些細な言葉に顔を赤らめるおばあさん。 「ば、馬鹿な事を言ってないで、とっとと終わらせるわよ!」 「はいはい。」 笑みを浮かべながら、横で一緒に皿を洗う狼。 「……。」 とてとて。 「ん?」 「……わたしも皿洗いするもん。」 面白くないのはお母さん兼猟師です。 嫌がらせ的な意味で皿洗いをおばあさんにさせたのに、狼といい雰囲気になっては 全くの逆効果です。 「あら、これは料理が出来ない私への罰なのでしょう?  ちゃんと罰は受けるから、小娘は向こうでゆっくりと寛いでなさい。」 にやり。 「くっ……。」 おばあさんとお母さんの間で火花が散ります。 正に一触即発なこの状態の中、当の狼はと言うと。 「父様、父様の分の皿洗いは終わったんでしょ?  だったら今度は私に構って♪」 「って、ベッドで何をどう構えと言いたいんだっ!?」 「もう……父様ったら、どうしたらいいかなんて知ってる癖に……。」 赤ずきんに引きずられ、超特大ベッドに入る寸前でした。 「つーか、何で俺より力が上なんだ!?  俺、これでも『贄』なんだが!?」 「それは勿論、父様への愛のお陰♪」 「そんな無茶が通るかぁっ!?」 ずるずるずる。 「えへへ……今日はどんな風に狼さんに犯して貰おうかなぁ……。」 「まーてーっ!?」 ……どう見ても赤ずきんが狼を陵辱しそうな感じですが、きっと気の所為でしょう。 「ふふ……まさか私を出し抜こうなどとは考えていないわよね、鈴音……?」 「鈴音ちゃん……ちょっとわたしとお話しようか……?」 「うっ……。」 狼の必死の時間稼ぎの間に、おばあさんとお母さんが赤ずきんに気づいたようです。 「全く、油断も隙も無い……。」 「むー……どうしてこんな悪い子に育っちゃったかなぁ……。」 「「ええっと……。」」 どう考えても親が悪いと思う訳ですが、流石に赤ずきんも狼も言えなかったようです。 ……まあ言ったらどうなるか分かっているから言わないでしょう。 「兎も角、――さんは私と皿洗いの続きをするのよ。」 むにゅん。 狼の腕を取り、自らの胸を押し付けるおばあさん。 「……嫌とは言わせないわよ?」 じろり、と睨みつけてはいますが、狼にはこれがおばあさんの照れ隠しだと言う事はバレバレです。 「お兄ちゃんっ。」 ぴとっ。 今度はお母さんが、狼の身体にぴっとりと引っ付きます。 「お兄ちゃんはわたしと二人っきりで狩りに行くんだもんっ。」 じーっ。 上目遣いで見つめつつ、こっそりと狼の手と指を絡ませている辺り、やっぱり策士です。 「って、母様もママも父様を誘惑しちゃ駄目っ!」 「失礼ね。これの何処が誘惑していると言うのかしら?」 「そうだよ鈴音ちゃん。むやみに人を疑っちゃ駄目だよ?」 さっきまで喧嘩していた筈なのに、今度は協力して赤ずきんを攻めるおばあさんとお母さん。 敵の敵は味方、と言う事でしょう。 そして、原因を作った狼はと言うと。 「……。」 色々と耐えていました。 おばあさんの胸の感触、ぴっとりと引っ付くお母さんの身体。 更には。 「もう、父様もなんとか言ってよー。」 むにゅん。 背後から胸を押し付け抱きついてくる赤ずきん。 「……あ。」 にやり。 最初に気づいたのはお母さんでした。 「……それより前に、狼さんの『お食事』が先かな?」 なでなで。 「はぅっ……。」 「えへへ……こっちの狼さんは、食べても食べても足りないって言ういい子さんだね♪」 笑みを浮かべながら、服の上から大きくなってしまったモノを撫でるお母さん。 「全く……相変わらずのケダモノね。」 かぷっ。 「ひ、比良坂っ!?」 「ふふ……でも、私は狼に逆らえない存在なのだから……穢されても、文句は言えないわね。」 首筋に甘噛みをしながら、狼の手を取り自分の胸に導くおばあさん。 悲しいかな、狼はその誘惑に逆らう事が出来ず……。 むにむに。 「んっ……ほら、既に私を穢そうと……。」 そう言いながらも、おばあさんは更に狼の首にキスを繰り返す始末。 どう見ても悦んでいます、本当に有難う御座いました。 「父様…おっぱいだったら、こっちにもあるよ♪」 むにゅん。 「ぬ、お……。」 「母様にしてるみたいに、私にも悪戯していいんだよ……。」 正面に立ったお母さんの代わりに、赤ずきんが自分の胸にもう片方の手を押し当てます。 「母様。」 「…ええ。」 くすり、と笑う二人。 そして。 ぐいっ。 「うをっ!?」 どさっ。 「さあ、逃げられなくてよ。」 「たっぷりご奉仕するからね、父様。」 おばあさんと赤ずきんに押し倒され、狼はベッドに追い込まれました。 更に。 「猟師さん、突撃っ♪」 ぽふっ。 「えへへ……これで逃げられないもんっ。」 倒れた狼の上に馬乗りになるお母さん兼猟師。 両脇にはおばあさんと赤ずきん。 「あー……。」 一瞬だけ、色々と考えた狼でしたが。 「…よし、分かった。  狼として、それ以前に男として逃げる訳にはいかないな。」 にやり。 「度胸だけは認めてあげましょう。  でも……今日こそは、――さんの全てを吸い尽くしてあげるわ。」 「今日もいっぱいケダモノさんになっていいからね、お兄ちゃん……。」 「えっちな事、いっぱいしてね……父様。」 ……とまあ。 今日も今日とてエロエロ三昧でしたとさ。 おしまい。