「今日のホームルームは進路希望の用紙を配る。  各自真面目に進路を検討して記入するように。」 ホームルームの時間。 担任が珍しく真面目に進行していた。 「進路希望、ねえ…。」 ちょっと前なら、少しは真剣に考えようかなあ、って思ったんだけど…。 ……ぶっちゃけ、『贄』だしなぁ。 「…なあ、比良坂。」 「…何かしら?」 横で紙を弄んでいた比良坂に声を掛ける。 「『贄』って、進路に入るか?」 「……は?」 「いやほら、ぶっちゃけまともな人間の道は歩めないだろ?  だから、まともな進路を考えても無駄だなあって思って。」 「……それは、その…。」 俺の台詞を聞き、俺から目を逸らす比良坂。 ……ああ、こいつ勘違いしてるな。 「…言っとくが、別に『贄』になったのを後悔してる訳じゃないぞ。  だから気にするなよ。」 「……べ、別に気になんてしてなくてよ。」 「…それならいいけど。」 ぎゅ。 比良坂の手を、そっと握る。 「……ありがとな、比良坂。」 「……馬鹿。」 頬を赤く染め、俺を見つめる比良坂。 そして。 「………とりあえず、背中に感じるやけに硬いモノは何ですか、お嬢ちゃん?」 「ちょっとした特殊隠密携帯用鉈だよ、お兄ちゃん……くすくす。」 「…申し訳ありませんでしたお嬢ちゃん。ですからソレはご容赦下さいませ。  って言うか、何その突っ込み場所が多すぎる武器は。」 ……もしかして、自作だったりしないよね、お嬢ちゃん? 「むー……わたしが目を離すと、すぐに比良坂さんとイチャイチャするんだから…。」 何事も無かったかのように、鉈を何処かに消し去るお嬢ちゃん。 ちなみに何故回りの人間が気づかないのかは謎だ。隠密だからか? 「そう言えば、比良坂とお嬢ちゃんは何を書いたんだ?」 「……至って普通よ。別に見せる程でも無いわね。」 「えへへ……わたしも普通だよ。」 無関心を装っている比良坂と、にっこりと笑みを浮かべるお嬢ちゃん。 …あー。 「……もしかして、どっちも『お嫁さん』とか書いてたり?」 「っ!?」 ぼんっ。 案の定、顔を真っ赤にする比良坂と。 「…ん♪」 嬉しそうに、俺を見つめるお嬢ちゃん。 「えーと…ぶっちゃけそれでいいと思うし、凄く嬉しいんだけど……。」 ちらり、とまわりを見回す。 「「「………。」」」 ぎろり。 ちゃきっ。 『確実にコロス』って感じの目線を向けつつ、またもや木刀を構える男子クラスメート諸君。 だから、君達は何処に其れを隠し持っていたのか。 あと……数名程女子クラスメートも同じ動きをしてるんだけど、なんで? 「……とりあえず、それを提出するのは止めておいてくれ。  流石に学校に提出する書類で『お嫁さん』は不味いっぽい。」 「…別に書いては無いけれども、書き直したくなったわ。」 「…むー。」 なんだかんだ言いつつも、『お嫁さん』の文字を消す比良坂とお嬢ちゃん。 「それじゃわたしは、『料理人』にしてみようかな。」 「『料理人』かぁ……。」 ちょっと想像してみる。 ――宙を舞う野菜。目の前で細切れになる肉。 包丁で滅多刺しにされ、切り分けられていくでっかい魚。 そして、そのカオスな空間の真ん中で――。 『……きょーうはお兄ちゃんの大好きな、ハンバーグっ♪』 返り血を浴びつつ、満面の笑みで、挽き肉を捏ねるお嬢ちゃん。 ……ただ問題は、その肉は『何の肉』なのか――。 「……色々と凄そうだね。うん。」 「…ふぇ?」 「あ、いやいや……なんでも無いんだ、うん。」 ……ま、まさかね。そんなとんでも空間にはならないだろう。 はっはっは。 「ね、お兄ちゃん…ちょっと耳貸して?」 「ん?」 お嬢ちゃんに言われ、俺はお嬢ちゃんの方に顔を寄せる。 「……もしかして、食材が浮いたりスプラッタだったりって想像した?」 「………お嬢ちゃん、もしかしてサトリ?」 「むー……お兄ちゃん、酷いっ。」 ほっぺたを膨らませ、お嬢ちゃんが俺を睨む。 …可愛いんだけどね。 「…ごめんなさい。」 「よっぽど急いでない限り、お料理の時にまで『力』使わないもん。  それに……洋食のコックさんよりは小さな居酒屋、とかの方がいいかな……。」 「そうなんだ…てっきり、料理の鉄人っぽいのかと。」 「うーん……わたしとしては……。」 「…お客さん、来ないね。」 「まあ、この吹雪じゃなあ…。」 雪国の山奥。 俺とお嬢ちゃんは、其処で小さな居酒屋を開いていた。 来るお客さんは殆どが顔なじみ。 ちゃんとしたメニューも無く、その時入った食材と、お客さんのリクエストで料理を作る。 「ま、たまには……ゆっくりするのもいいんじゃないかな?」 「お兄ちゃん…此処、いつもゆっくりでしょ。」 俺の台詞に、割烹着を着たお嬢ちゃんが苦笑する。 「……まあ、村の人間しか来ない店だからね。」 「うん。……わたしにとっては、都合のいい場所だし。」 「こら、そう言う事言わない。  …俺にとって、お嬢ちゃんは…ただの可愛い奥さんなんだから。」 「……ん♪」 嬉しそうに微笑むお嬢ちゃん。 ……いかん。ちょっと邪な考えが。 「……どうしたの?」 「んー…。」 外は吹雪。村の人間ですら、表に出ようとはしない。 と言う事は……飛び込みでお客さんが来る事も無いだろう。 ……うむ、大丈夫だな。 「…お嬢ちゃん。」 ぎゅ。 「あっ……。」 背後から、お嬢ちゃんをそっと抱きしめる。 そして。 「お、お兄ちゃんっ……。」 「ん?」 「て、手がっ……。」 もぞもぞ。 「……手が、どうかしたの?」 「やっ……だ、駄目だよっ……んっ…。」 「大丈夫。こんな吹雪の中、お客さんなんて来ないから。」 「…だ、だけどっ……ひゃんっ!?」 さわさわ。 「や、やぁっ……。」 「そんな事言っても…此処は、こんなになってるのに?」 何故か濡れた手を引き抜き、お嬢ちゃんの前に翳す。 「…ち、違うもんっ……。」 「ふーん…それじゃあ、この濡れてるのはなんなのか…説明して貰えるかな、お嬢ちゃん?」 「……し、知らないっ。」 「そっか……それじゃ、おしまいにしようか?」 「…え?」 ゆっくりと離れると、戸惑いながら俺を見つめるお嬢ちゃんの姿が。 「お、お兄ちゃん…?」 「確かに、お客さんが来るかもしれないのにえっちな事はいけないよね。  うんうん、お嬢ちゃんの言う通りだ。」 「……っ。」 俺の言葉に、お嬢ちゃんの瞳が揺れる。 「…さて、と。  俺は奥から食材を持って……。」 「……や。」 きゅ。 お嬢ちゃんの手が、俺の服の裾を掴む。 「…どうしたの?」 「……ずるいよ、お兄ちゃん。」 潤んだ瞳。赤く染まった顔。 「……わたしが、その気になったの、分かってるのに……。」 お嬢ちゃんの手が、俺の手を掴みなおし……。 「…ん、ふぅっ……。」 くちゅり。 「わたしの、ココ……もう、いっぱい…。」 「……うん。  お嬢ちゃんのココ、凄く濡れてるし……。」 そのまま、指をゆっくりとナカに入れる。 「あんっ…。」 「…凄く熱くて、いっぱい締め付けてくる。」 くちゅっ、くちゃっ。 「やっ……指、動かしちゃっ……あぅっ…。」 「……気持ちいい?」 「…い、いいけどっ……指じゃ、嫌なのっ…。」 ぎゅ。 お嬢ちゃんの手が、ズボンの上から俺のモノに触れる。 「コレが、欲しいの…っ。お兄ちゃんの、コレで……。」 「…つまりは、さ。」 お嬢ちゃんの耳元に、口を寄せる。 「……今日も、俺に……たっぷりと、犯して欲しいって事?」 「っ……!」 ぶるり、とお嬢ちゃんが身体を震わせる。 ……そして。 「……うんっ。  わたしを、いっぱい……お兄ちゃんのコレで、いっぱい……犯して欲しいのっ。」 「…そして、わたしを背後から抱きしめたお兄ちゃんの大きなモノが、容赦なく突き入れられるの……。」 「「「………。」」」 がたん。 ちゃきっ。 「待て待て待てっ!?  あれは水沼さんの妄想だから!実際にやった訳じゃ無い!」 無表情のまま木刀を持って近寄ってくるクラスメート達に、慌てて弁明する。 「って言うかおじょ……水沼さんもいい加減帰って来てくれっ!」 「……ふぇ?」 俺の魂の叫びに、ようやくお嬢ちゃんが現実世界に帰って来た。 そして、まわりの異様な状況に気づき。 「…も、もしかして、わたし……。」 「水沼さん…実は、以外にえっちだったのね。」 「…はうっ。」 委員長に突っ込まれ、お嬢ちゃんは真っ赤な顔で机に突っ伏してしまった。 「まったく…表向きはか弱い少女の癖に、実際はとんでもない事を考えているのね、水沼さんは。」 「あぅぅ……。」 比良坂の嫌味すらも、お嬢ちゃんには聞こえていないっぽい。 …これは暫く、そっとしといた方がいいだろうな。 「まあまあ、水沼さんはそっとしておくとして……比良坂はどうなんだ?」 「…え?」 「え、じゃない。進路だよ、進路。  もう決まったのか?」 「それは、その……。」 俺の言葉に、目を彷徨わせる比良坂。 ……まあ、ぶっちゃけまだまだ世間に慣れてない比良坂だ。 仕事と言われても、さっぱり思いつかないんだろう。 …だからと言って、素直に『妖怪』とも書けないだろうし。 ……いや、『妖怪』って進路か?って突っ込まれると困るんだが。 「……そ、そう言う――さんはどうなのかしら?  折角だから、お聞かせ願えるかしら。」 「って、いきなり俺かよ。」 恐らく、俺の言った事を参考にしようって腹なんだろうけど……。 うーむ……進路ねえ。 「俺ねぇ…無難に何処かの企業のサラリーマン……『会社員』かなぁ。」 「そりゃまた無難って言うか何も考えて無いだろお前。」 「やかましい其処の情報屋。そう言う本当の事を言うんじゃ無い。」 んな事言われても…比良坂とお嬢ちゃんが幸せであれば、法に触れるような 職業じゃない限りはどうでもいいし。 って言うか、二人が居れば大抵の事は乗り越えられそうだしなぁ…色々と。 「……馬鹿。」 「…えへへ。」 何故か頬を赤く染めてこちらを見つめる比良坂と、 同じく頬を赤く染めて俺に微笑むお嬢ちゃん。 ……えーと、これはもしや。 「また喋ってましたか俺は……。」 「いやー暑い暑い。  なんかココだけ局所的に暑いなー。」 「ホントホント。  あーあー暑い暑い。」 「……五月蝿い黙れ其処の生徒会長と委員長。」 くそう、ここぞとばかりに茶化しやがって……。 「そ、そう言うお前らはどうなんだっ。」 「ふむ……俺か?」 顎に手を当て考え込む高田。 「『情報屋』と書きたい所だが……。」 「絶対駄目。分かってるわね?」 じろり。 委員長の視線が、高田を容赦無く貫く。 「…ま、無難な線で言えば『新聞記者』とかどうだ?  具体的にはスポーツ新聞の怪しい三面記事担当。」 「……嫌な程に具体的すぎだ。」 そして大事なネタは個人的に取っといて裏で色々使うんだろうな…。 「んで、お前はどうするんだ委員長?」 「わ、私?え、ええっと…。」 いきなり高田に振られ、委員長も考え込む。 「…うーん……いきなり振られると、コレと言ったものが…。」 「俺としてはプロレスラーとかお勧めなんだが。  あのアイアンクローは十二分に通用すると思うぞ。」 「ちょ、高田…。」 …こいつ、どうしてそんなに地雷を踏みに行くのか。 でもって。 「……。」 がしっ。 「ふをっ!?」 「通用するかどうか、アンタの身体で試させてもらうわっ!」 めきめきめきめきっ。 「ぐあああああああっ!?」 「……ぶちまけろっ!!」 めしゃっ。 「……げふっ。」 どしゃっ。 委員長が手を離すと、ゆっくりと高田が地面に突っ伏した。 …あ、ちょっと痙攣してる。でもいつもの事だから大丈夫だろう。 「……うん、決めた。  私、法律を守らせる方面の人になるわ。」 「さ、さいですか…。」 手をわきわきとさせながら、力強く宣言する委員長。 「……何処かのアンポンタンが暴走しないように、きっちりと締め付けないと。」 まだ地面に倒れたままの高田を見つめつつ、委員長が呟く。 「…ま、まあいいんじゃないかな。うん。」 これも、委員長の高田への愛だろう。多分、きっと。 「んで……結局、どうするんだ比良坂?」 「そうね……。」 一瞬、比良坂は考えた後。 「私も無難に『会社員』になっておこうかしら。  ……勿論、特に大した意味は無いわよ。」 「いや、別にそんな事は聞いちゃ…。」 「……無いのよ。分かったわね?」 ぎろり。 「……はい。」 これ以上聞いたらコロス、と言わんばかりの視線で射抜かれた。 ……俺が悪いのか?そうなのか? 「比良坂さんが『会社員』って言うと……バリバリのキャリアウーマンってところ?」 「…え、ええ。勿論そうね。」 委員長の問いに、曖昧に答える比良坂。 …多分、キャリアウーマンって言葉の意味すら分かって無いな。 「ふむ……お前と比良坂さんが同じ職場に入った時の風景がすぐに想像できた。」 「…一応聞くけど、どんなのだよ高田。」 「あー……出来たぞ、比良坂。」 「言葉遣いに気をつけなさい、――さん。  此処では…私は、貴方の上司なのだから。」 とんとん、とペンでプレートを突く比良坂。 其処には、『部長』の文字が。 ……ちなみに、俺はとても平社員ですが、何か? 「…書類をお持ち致しました、部長。」 「よろしい。では見せて貰えるかしら?」 比良坂…部長に書類を渡す。 書類を受け取った比良坂は、一通り書類を読んだ後。 「……駄目ね。やり直し。」 「なんだとっ!?」 あっさりと書類を机の上に放り投げた。 「この書類じゃ、私には分かっても相手先には伝わらないでしょう。  それに、此処の部分……数値が間違ってるわね。それに此処も疑わしいわ。」 「……う。言われてみると。」 的確な指摘に、俺の言葉が止まる。 「と、言う訳だから……明日までに再度仕上げなさい。」 「……それはつまり、今日も泊り込んで仕事しろって事か?」 「そんな事を言うつもりは無いわ。  ……この書類の訂正さえ終われば、帰って構わないのよ?」 じろり、と睨みつける比良坂。 「…今日も残業させていただきます。」 「よろしい。…行きなさい。」 「……うむ。実に分かりやすく、ありえそうだとは思わないか?」 高田の問いに、クラスメートの大半が一斉に頷く。 だが……。 「…お嬢ちゃん、どう思う?」 「……幻想って凄いよね、お兄ちゃん。」 みんなに聞こえないように、小声でぼそぼそと話し合う。 「だって、なぁ……。」 「…比良坂さんですから、むしろ……。」 「…これでよし、と。」 深夜。 書類を仕上げた俺は、ゆっくりと伸びをひとつ。 そして……机の下に居る上司に話しかける。 「いい加減、書類の作り方は覚えたんじゃ無いのか……比良坂?」 「っ……。」 真っ赤な顔で、俺を睨みつける比良坂。 だが、その手は俺のモノをゆっくりと扱いていた。 「まったく……何時までこんな『罰』を受け続けるつもりだ?  自分で書類が作れさえすれば、俺にこんな風に……。」 「きゃっ!?」 比良坂の口先に、俺のモノを突き出す。 一瞬驚いた比良坂だったが、俺をぎろり、と睨みつつも……。 「んっ……ちゅぱっ…。」 「……ご奉仕しなくてもいいのにな。」 頭脳明晰、そして美しい女性……更には、記憶改竄とか色々やれば、出世も早い訳で。 たった数年で、比良坂は部長の地位にまで上り詰めていた。 だが……そんな比良坂にも、パソコンや携帯電話…現代の物が使えないと言う ある意味致命的な弱点があるのだ。 勿論、入社した当初から教えてはいるのだが…如何せん、覚えが悪い。 そこで、出来るようになるまで比良坂に対し『罰』を与えるようになった。 ……なった、んだけど。 「…なあ、比良坂。」 「んむっ……?」 口に咥えたまま、俺を見上げる比良坂。 「俺があんまりにも忙しくて、ノートパソコンに入れたまま会社から持って帰ってきた仕事があったんだが…  翌朝目が覚めたら、綺麗に出来上がってた事があったんだよな。」 「……っ。」 何故か、俺から比良坂が目を逸らす。 「あの夜は、仕事をしなくちゃいけないって分かってたんだけど……  誰かさんのおねだりを受けて、たっぷりと可愛がっちゃって、そのまま寝ちゃったんだよなぁ…。」 「…あむっ。」 「お、おいおい…。」 突然激しくなる比良坂の奉仕。 …まるで、それ以上先を語らせないように。 俺はその快楽に何とか耐えつつ、言葉を続ける。 「お嬢ちゃんかと思ったけど、お嬢ちゃんは違うって言うし……。  ……一体何処の誰が、俺の書類を完成させたんだろうな?」 ゆっくりと比良坂の頭を撫でつつ、語りかける。 ……まあ、犯人は目の前の一人しか居ない訳だけど。 「ぷぁっ……そんな事、ちゅっ……私が知る訳無いでしょうっ。」 「本当に……素直じゃ、無いなっ……。  ……ごめん、比良坂。もうっ……。」 「……んっ。」 再び口の中に咥え込んだ比良坂が、小さく頷く。 「…うぅっ!」 「んむぅっ……!」 どくんっ。 吐き出される白濁。 それを、比良坂がいつものように飲み干していく。 「んっ……ん、んむっ……。」 とくっ……とくんっ……。 「……は、ぁ。」 「…大丈夫か?」 「……大丈夫よ。  こう何度も飲まされれば、嫌でも慣れるわね。」 「嫌だったなら、別に無理して飲まなくても……。」 「……あむっ!」 「うあっ!?  ちょ、比良坂、今甘噛みするなっ……。」 出した直後は凄くデリケートで感じやすいんだから、そんな事をされたら、またっ……。 「…本当にケダモノね、――さんの此処は。  あんなにたっぷりと出したのに……まだ駄目なのかしら?」 指で先っぽを撫で回しながら、薄く笑う比良坂。 その笑みに…俺はあっさりと、魅了されていた。 「…そうだ。  未だにパソコンが使えないって言い張る比良坂には……きっちりと、『罰』を与えないとな。  だから……俺に犯されても、仕方が無い訳だ。」 「……そうね。  ――さんに、犯されても……仕方の無い事、ね。」 机の下から出てきた比良坂が、ゆっくりとスカートを捲り上げていく。 「……えっちだな、比良坂は。  こんなにびしょびしょに濡らして…。」 「…失礼ね。  これは……――さんに何時無理矢理突き入れられてもいいように、あらかじめ  濡らしておいただけに過ぎないわ。」 「……そうだとすると、あらかじめ一人で弄って…。」 「……今の発言は撤回するわ。」 「じゃあやっぱり、俺の咥えた所為で、こんなに…。」 「…ああもう、そんな事はどうでもいいでしょうっ!?」 がしっ。 「うをっ!?」 椅子に座った俺の上に、比良坂が圧し掛かる。 「つべこべ言わず、――さんは私を容赦なくケダモノのように犯せばいいのよっ。」 「……この状況だと、比良坂が俺を犯してる気が……んむっ。」 「んっ…。」 実力行使。 俺の言葉は、比良坂の柔らかい唇によって遮られた。 そして。 「これ以上……焦らさないで。」 「っ…。」 潤んだ比良坂の瞳に見つめられ…俺は、あっさりと陥落した。 「……知らないからな。  あんまり比良坂が可愛いすぎて、手加減できないかもしれないぞ。」 「……ええ。  ――さんの好きな様に、私を……犯して。」 「……そして、比良坂さんのナカにおっきなお兄ちゃんのモノが捻じ込まれ……って、  どうしてわたしが比良坂さんの幸せなラブラブシーンを妄想しなきゃいけないのーっ!?」 がおーん。 「いや、其処まで想像しておいて吼えられても……。」 むしろ聞かされた俺が色々と大変だ。 つーか、コレは幸せなラブラブシーンなのだろうか? 「はっはっは……流石は水沼さん。  そっち方面では相当コアな筈の男子諸君が、身動きひとつ出来ない状態ですよ。」 高田の声にまわりを見ると、机に突っ伏したまま身動きの出来ない男子クラスメート諸君が。 「……はっはっは。  てめぇら、比良坂さんで一体何を想像しちゃったのかなー?」 がたん。 凄くにこやかに笑いながら席を立つ。 うん、ちょこっとだけ色々しばき倒しても大丈夫だよな。きっと。多分。恐らく。 「ちょ…高田、アンタっ!?」 「…しまった、俺とした事が。  ――の奴、比良坂さんと水沼さんの事になると本気で容赦無い!」 「「「なにいっ!?」」」 なんか男子諸君が騒がしい気がするが…まあいいや。 ……どうせもうすぐ嫌でも黙るんだし。つーか永遠に黙らせる。 「た、高田!お前がやらかした事なんだから、何とかしろっ!生徒会長だしっ!」 「無茶言うな担任っ!つーかアンタも協力しろっ!!」 「俺には奈那美が居るから嫌だっ!」 「それなら俺だって瑞樹が居るだろっ!?」 高田と担任が言い争ってるけど…まあ良し。あいつらは標的じゃ無いし。 ……さて、潰すか? 「……落ち着きなさい。」 「……えいっ。」 むにゅんっ。 ふにゅっ。 「うを?」 前から比良坂、後ろからお嬢ちゃんに抱きしめられる。 うわ、ふにふにすべすべで柔らかくて……和むなぁ。 「……って、あれ?  俺……なんで握りこぶし?って言うか何をしようと?」 「「…はぁ。」」 比良坂とお嬢ちゃんから同時にため息が出る。 「全く…私や小娘…もとい、水沼さんの事になると、我を忘れてしまうのだから。」 「でも……其処までお兄ちゃんに思って貰えて、嬉しいな…。」 「……良く分からんけど、とりあえずは大丈夫。  だから……。」 「……疑わしいわね。」 ぎゅむっ。 「お兄ちゃんが本当に大丈夫って確認出来るまで…このまんまだよ♪」 ぎゅっ。 右腕を比良坂、左腕をお嬢ちゃん。 所謂、両手に花状態。……実際は両手に妖怪、なんだけど。 「……あー。  流石に教室から出たら止めるようにな、比良坂。そして水沼?」 「…ええ。」 「はーい。」 そしてこの状況をあっさり許す担任も、中々いい度胸をしてると思う。 「……そう言えば、さっきからやけに静かな奴が居ると思うのだが。  なあ…夏木?」 「っ!?」 高田の言葉に、『キング・オブ・墓穴』こと夏木奈那美の身体が震える。 「べ、別に大した事は書いて無いわよっ!?」 「ふむ…そう言われると、ますます紙の内容を見てみたい訳だが。」 にやり、と笑う高田。 「ほ、本当に大した事なんて書いて無いんだからっ。」 「なるほど……じゃあ見せたらどうかね?  普通の内容なら、問題無い筈だが?」 「ううっ……。」 ちらり、と夏木が目線を向けた先は……恋人であるところの担任。 「……。」 そしてその担任は、無言で頷き返す。 「…いいわよ。見なさいよ。」 「ふむ…?」 高田に手渡された紙を、高田が見つめる。 …勿論、委員長、俺、比良坂、お嬢ちゃんも居たりする訳だが。 「……『お嫁さん』か。普通だな。」 「…なんか拍子抜けね。てっきり物凄いものが書いてるかと思ったけど。」 「……あんたら、あたしを何だと思ってるの?」 好き勝手言う高田と委員長の言葉に、夏木の頬が引きつる。 「でも…本当に普通だな。」 「…そうね。」 「…本来なら、進路に『お嫁さん』って書くのはあんまり普通じゃ無いとは思いますけど。」 つまらなそうに答える比良坂と、苦笑しながら答えるお嬢ちゃん。 「す、好き勝手言わせれば……。」 「お、おい?」 ぶるぶると身体を震わせる夏木と、嫌な予感でもしたのか夏木を見つめる担任。 そして。 「別に本当の事なんだから、『お嫁さん』って書いたって何も問題無いじゃないっ!!」 「「「……は?」」」 一斉に首を傾げるクラスメート諸君と。 「……orz」 がっくりと膝を付く担任。 …えーと、つまりは……。 「……すでに、結婚済みって事なのか?」 「…はうっ!?」 お約束通り、大きな墓穴を掘った夏木が頭を抱える。 「…まさか、学生の内に籍を入れるとは……流石ですな。」 「……五月蝿い黙れ。」 にやにや笑う高田と、本当に苦い顔をする担任。 「って事は、やっぱり一緒の家に?」 「…っ。」 委員長の突っ込みに、真っ赤な顔で俯く夏木。 …すでに其処までですか。そうですか。 「新婚さんって事は……やっぱり色々してるんだろうなあ。」 「ふふ…それは是非ともお聞きしたいわね。」 「ええ…今後の参考になりそうですし。」 「え……あ、う……?」 比良坂とお嬢ちゃんに見つめられ、少し後ずさる夏木。 「…ちょ、ちょっと!二人はあんたの管轄でしょっ!?」 「まあ、そう言えない事も無い訳だが……。  ……俺も聞いてみたいから諦めろ。」 「う、裏切り者ーっ!?」 結局、残りの時間は先生と生徒から夫婦になったお二人への質問タイムとなった。 ……ご愁傷様。