「わーい、またわたしの勝ちー♪」 「むむむ……。」 居間。 ゲームのパッドを握り締め、俺は呻き声を上げていた。 そして、その隣には…嬉しそうにガッツポーズをするお嬢ちゃんの姿が。 「これで10連勝だよ、お兄ちゃんっ。」 「…何故だ。  最初にこのゲームを教えたのは俺なのに……。」 よくある対戦格闘ゲーム。 それで…見事に俺はボコボコにされていた。 「お嬢ちゃん…いつの間にか練習してた?」 「うーん……何回かやったら、ある程度コツを掴んだみたい。  だから、そんなにはやってないと思うけど…。」 「…そうだよなぁ。  基本的に、比良坂もお嬢ちゃんも大抵俺と一緒だし。」 「……ん♪」 にっこりと微笑むお嬢ちゃん。 ……むぅ。今日も可愛いなぁ。 「…で、其処の比良坂さんや。……大丈夫か?」 「くっ……。」 俺以上にボコボコ……つーか、完全に遊ばれていた比良坂は、悔しそうに お嬢ちゃんを睨みつけていた。 「お兄ちゃんとだと、まだ対戦になりますけど。  比良坂さんは……ふっ。」 「こ、この小娘はっ……!」 鼻で比良坂を笑うお嬢ちゃん。 笑われた比良坂は、自らの腕を『化身』させ……って、ちょっと待て。 「こらこら、一体何をしてるんだ比良坂?」 「……この小娘に、格の違いを分からせてやるのよ。」 「格の違いって……ゲームで負けたからって実力行使ってのは、どうかと思うぞ?」 「……う。」 俺に半目で見つめられ、比良坂の動きが止まる。 「…な、なら……――さんが何とかなさい!  私の『贄』なのだからっ!」 「また無茶苦茶な……。」 ……とは言え、このままお嬢ちゃんに負けるのもなんか悔しいなぁ。 しかし…実力はお嬢ちゃんが圧倒的に上。かと言って、比良坂みたいに実力行使は……無理だな。 俺が即座に肉片だし、そもそもそんな事したくないし。 さて、どうしたものか……。 「むぅ……。」 ……うむ。やはりこの方法しか無いか。 「あー、比良坂。  先に確認しとくが……お嬢ちゃんに勝てるなら、どんな方法を使ってもいいんだよな?」 「勿論よ。  小娘のコントローラーを破壊しようが、小娘の動きを封じようが構わないわ。」 「いや、それはそれで問題がある気もするが…。」 其処までして勝ちたいか、比良坂。 「むーっ。  お兄ちゃんが相手でも、比良坂さんのお手伝いをするなら…手加減しないもんっ。」 言葉と同時に、お嬢ちゃんのまわりに現れる鉈、鋸、アイスピック。 そしてアヒル隊長を筆頭としたアヒル小隊。 ……むしろ最大の敵はアヒル隊長だ。アレはマジで痛い。つーか即座に俺が肉片と化す。 「まあ、とりあえず……ほい、比良坂。」 まずは比良坂にコントローラーを渡して。 「でもって……どうぞ、お嬢ちゃん。」 「…ふぇ?」 太腿を叩きながら、お嬢ちゃんを手招きする。 「あれ?  俺の膝の上に座るの、嫌かな?」 「…そ、そんな手にはのらないもんっ。」 「そっか……じゃあ、仕方が無いから……ひらさ」 ひゅんっ。 ぽふっ。 「早っ!?」 言葉通りの瞬間移動。 俺が比良坂を呼ぶ前に、お嬢ちゃんは俺の膝の上に座っていた。 「…比良坂さんに座らせるぐらいなら、わたしが座るの。」 不機嫌そうに言うお嬢ちゃん。 だけど……まわりに浮いてた凶器が無くなったって事は、本当は嬉しいのだろう。 「……――さん?」 それに反比例して、機嫌が悪くなった比良坂が俺を睨みつける。 「待て。これも比良坂に勝たせる為の作戦の一つだっての。」 「…本当ね、――さん?」 「勿論だ。それは間違いない。」 …問題は、その方法が許されるか、なんだが。 「まあいいから、二人とも対戦を始めなさい。」 「…そうね。今度こそは勝たなくては。」 「お兄ちゃんが何をするかは分からないけど……比良坂さんだったら、  負ける事なんてありません。逆にフルボッコにしてあげます。」 「……振る、ボコ?」 小首を傾げる比良坂。つーかボコって何だ。 そしてお嬢ちゃん、フルボッコなんて言葉をどうして知っていますか? 「…今度こそ勝たせてもらうわよ、小娘。」 「今度も返り討ちにしてあげます、比良坂さん。」 始まる対戦。 そして案の定、ガードすら知らない比良坂が、お嬢ちゃんの攻撃をまともに喰らう。 「うっ…。」 「ほらほら、どうしました?  もう少しで、一本取っちゃ……ひゃうっ!?」 突然、上ずった声を上げるお嬢ちゃん。 …まあ、当然なんだけど。 「お、お兄ちゃんっ!?」 「ん?どうかした?」 なでなで。 「ど、どうして…わたしのお腹、触ってるの?」 「いやほら、単なるマッサージだけど?  お嬢ちゃん、ずっとゲームを続けてるから…疲れてるかなと思って。」 さわさわ。 「やんっ…!  …お兄ちゃんの触り方……えっちだよ…っ。」 「気のせいじゃないかな?  ……ほら、動きが止ってるよ?」 「はうっ!?」 画面を見ると、動きを止めたお嬢ちゃんのキャラを、比良坂が操るキャラがタコ殴りしていた。 「ひ、卑怯ですよ比良坂さんっ!」 「気を取られている貴女が悪いのでしょう?  …――さんに抱きしめられて、撫で回されて……っ。」 比良坂のコントローラーからミシミシと音がする。 そして何故か、比良坂のキャラの動きが良くなる。 「兎も角なんでもいいからとっとと負けなさい!  そしてこの対戦を速やかに早急に終わらせるのよ!!」 ――その動き、まさに修羅。 今までのへっぽこぶりは何だったのか、ぐらいの勢いで連続技を叩き込んでいく比良坂。 そのまま、一本先取。 「さあ次よ、小娘っ!」 「くっ…嫉妬に狂った比良坂さんが、ここまで強いなんて…。  だけど、もうお兄ちゃんに惑わされたりはしませんよ!」 お互いが巧みにキャラを操り、一進一退の攻防。 俺は最高のタイミングで妨害をしようと、その戦いを見守る。 ……そして、その時は来た。 「…今だっ。」 さっきと同じように、俺はお嬢ちゃんのお腹を撫で回そうとして…。 「えいっ。」 「「えっ!?」」 ぽいっ。 突然、コントローラーを投げるお嬢ちゃん。 予想外の行動に、俺も比良坂も動きが止まる。 さわさわ。 「うっ…!?」 下半身に感じる、ちっちゃな手の動き。 「お、お嬢ちゃんっ!?」 「えへへ……お兄ちゃんに悪戯されないように、  わたしがお兄ちゃんの動きを封じちゃうんだもんっ♪」 俺を見上げ、にっこりと微笑むお嬢ちゃん。 その間も、俺のモノへの攻撃は続いてて……。 「お兄ちゃん…ズボンの上からでも分かるぐらい、おっきくなっちゃったよ?」 「そ、そりゃあ……こんな事されたら…。」 おっきくなります。コレ、当たり前。 「ね、お兄ちゃん……えっちな事、もっとして欲しい?」 そう言って、薄く笑うお嬢ちゃん。 ……う。 「……いや、別に?」 「…嘘は駄目だよ、お兄ちゃん。  こっちの素直な子は、びくん、ってなったよ?」 「……くそう。嘘のつけない息子が憎い。」 しかし…これはこれでチャンス。 お嬢ちゃんの意図は良く分からないけど、今ならお嬢ちゃんのキャラを殴り放題の筈。 「比良坂、今のうちに……って、あれ?」 「……。」 ぎろりっ。 コントローラーを動かすのを止め、じっと俺を睨みつける比良坂。 ……マジで怖いんだが。 「あれー、どうしたんですか比良坂さん?  わたしはコントローラーを手放してますから、ご自由に攻撃していいんですよ?」 「い、言われなくても…そうしようと思っていたところよ。」 「そうですよねー、流石は比良坂さんです。  …もっとも、その間に…。」 じーっ。 「うおっ!?」 ズボンのジッパーを下ろし、トランクスの中にお嬢ちゃんの手が入ってくる。 「う……お嬢ちゃんっ…。」 「……おっきくなったお兄ちゃんのコレは、わたしが鎮めちゃいますけど。」 トランクスをずらし、俺のモノを外に出すお嬢ちゃん。 そのまま、ゆっくりと扱き出す。 「お兄ちゃん……このまま手でしたほうがいいの?  お口でぺろぺろってして……ごっくん、ってしたらいいの?  それとも……。」 もう片方の手で、お嬢ちゃんが自分のスカートを摘む。 そして……俺に見せ付けるように、ゆっくりとたくし上げて。 「ケダモノさんになって、このままわたしを無理矢理犯して……。  そして…白いのを中にいっぱい、びゅくびゅくって……する?」 「………。」 ぷつんっ。←あっさりと理性の箍が外れた音。 「お、お嬢ちゃんっ!!」 「あんっ……駄目ぇ、お兄ちゃんっ♪」 「って、あっさり負けてどうするのよっ!」 ごしゃっ。 「へぶっ!?」 「お、お兄ちゃん!?」 顔面に物凄いスピードで飛んできたコントローラー。 ケダモノさんモードになっていた俺はそれをまともに受け、そのまま床に倒れてしまった。 「…――さん。  私の指示を忘れ、小娘の色気に惑わされるなんて…少々、お仕置きが必要かしら?」 立ったまま俺を見下ろし、睨みつける比良坂。 「お兄ちゃんに何をするんですか、比良坂さんっ!」 「五月蝿いわね。  私の『贄』をどうしようと、私の勝手でしょう。」 「…そんな事言って、単にお兄ちゃんがわたしに欲情したのが悔しいだけの癖に。」 「ち、違うわよっ!  私はただ、自分の役割をあっさりと忘れた事に対して怒っているだけであって…。」 「あれー?  お兄ちゃんへの指示は『わたしの妨害をする』ですよねー?  わたしは今、まんまとお兄ちゃんの罠に嵌ってコントローラーを手放してる訳ですから、  お兄ちゃんはちゃーんと役割と果たしてますよねー?」 にやり、と笑うお嬢ちゃん。 しかも、俺のモノを比良坂に見せ付けるように弄びながら。 …まさか。 「お嬢ちゃん…もしかして、すでに負ける気満々だったの?」 「だって、あんなえっちな触られ方したら……ゲームなんかより、  お兄ちゃんにいっぱい可愛がって欲しいもん…。」 俺の胸に、顔を擦り付けるお嬢ちゃん。 「と言う訳ですから、わたしの負けですよ、比良坂さん。  良かったですね?」 「くっ……。」 試合に勝って、勝負に負けた。 まさに、今の比良坂の状況。 ……なんだけどさ。 「…あの、お嬢ちゃん?」 「…聞きたくないもんっ。」 俺の考えている事が分かったのか、即座にそっぽを向かれてしまった。 …それでも、俺のモノは手放さないのは流石と言うか、何と言うか。 「どうせお兄ちゃんの事だから、絶対に比良坂さんに助け舟を出すに決まってるんだから。  だから、聞く耳持ちません。」 「むぅ……。」 完全に俺の動きが読まれている。 …とは言え。 「……どうしても?」 さわさわ。 「やんっ……お、おにいちゃんっ…。」 「…できれば、ふたりとも仲良く可愛がりたいんだけどな。」 くちゅり。 「やっ…指、動かしちゃ……駄目だよぉ…。」 「んー……やだ。」 ちゅぷっ。 「あんっ…あ、くぅんっ……。」 うむ、お嬢ちゃんはコレで大人しくなるだろう。 ……方法が限りなく鬼畜だが、まあ考えない事にして。 「さて……比良坂?」 「……。」 ぎろり。 無言で睨みつけてきましたよ? 「いや、その……ご機嫌斜めなところ悪いのですが、一つ発言をさせていただいても宜しいでしょうか?」 「……下手な事を言ったら、細切れにするわよ。」 言葉と同時に湧き出る子蜘蛛達。 …うわぁ、何時に無く本気だな。 「えーと……見ての通り、お嬢ちゃんの動きを完全に封じた訳ですが……はたして、これで本当に良いのかと。」 「…どう言う事かしら?」 「その…比良坂程の大妖怪がこのような卑劣な手段を使われるのは、宜しく無いかと思うのです。」 「……それで?」 「…やはり、同条件で勝ってこそでは無いのかと。」 「同条件……っ!?」 ぼんっ。 俺の言いたい事が分かったのか、比良坂の顔が真っ赤に染まる。 「……どうかな?」 …こうやって俺から振れば、比良坂の事だから。 「…確かに、一理あるわね。  『贄』如きに身体を預けるのはあり得ない事だけれど……この場合は、やむを得ないわ。」 ぽふっ。 俺の隣に座り、寄りかかってくる比良坂。 「……さ、さあ。  ――さんの、好きになさいっ。」 「…一応、先に言っとくが。  比良坂に夢中になりすぎて、対等じゃ無くなったら……ごめんな。」 「っ……馬鹿。」 それから、暫く後。 「あむっ……ちゅ、ぺろっ……。」 「んっ……んふっ、んむっ……。」 「うっ…くぁ……。」 蠢く二つの舌。 俺はその快楽に耐えながら、二人の頭を撫でつつ。 「……き、君達?  そろそろゲームを再開……って言うか、ゲームパッド握れよっ。」 「ぷぁっ……でも先に、こっちの敵を倒さないと……落ち着いてゲーム出来ないもんっ♪」 「ちゅっ……邪魔は排除するのが基本……何か問題でもあるのかしら?」 手で俺のモノを扱きながら、くすり、と笑う人外のお嬢様達。 「とは言え……もう何度も出しているにも関わらず、未だに衰えを見せないわね。  ……このケダモノは。」 かぷかぷ。 「うぁ……。」 潤んだ瞳で、首筋を甘噛みする比良坂と。 「やっぱり、ケダモノになったお兄ちゃんを退治するには…。」 くちゅり。 「んっ……ココじゃ無いと、駄目なのかなっ…。」 俺の手を取り、自分の大事なトコロに押し付けるお嬢ちゃん。 「〜〜っ。」 い、いかん。 このまま流されてはいかん。 これじゃ、いつもの二の舞になってしまうっ。 「ふふ……仕方が無いわね。」 笑みを浮かべながら、もう片方の手を取る比良坂。 そして……。 くちゅり。 「なっ…!?」 「んっ……。」 スカートを捲り、俺の手を押し当てる。 「……私をこんなに淫らにさせておいて、これでお仕舞い、なんて事は……  無いわよね、――さん?」 「あ、ううっ……。」 「お兄ちゃん…ごっくん、もいいけど……やっぱり、一緒に気持ちよくなりたいな……。」 「う、あっ……。」 ぷつんっ。 「比良坂っ!お嬢ちゃんっ!」 「きゃっ…!」 「やんっ…!」 結局、今日も俺はまんまと二人の策略に嵌り。 勝負はそのままお流れになりましたとさ。