「……暑い。」 玄関。 外に出た瞬間、俺はそう呟いた。 「やっぱり、大人しく部屋でのんびり……。」 「…駄目ね。」 がしっ。 有無を言わさず、俺の右腕を取る比良坂。 「今日はたっぷりと、私に付き合って貰うのだから。」 そう。 俺達の住んでいる所も、ついに梅雨が明け。 梅雨の間引きこもり状態だった比良坂も、外に出かけられるようになったのだ。 「ちーがーいーまーすーっ。」 がしっ。 「今日はわたしのお買い物に付き合ってくれるんだもんね、お兄ちゃんっ。」 そう言って、俺の左腕を取るのはお嬢ちゃん。 そのまま、半目で比良坂を見つめながら。 「何処かの引きこもり妖怪さんは、梅雨が明けても引きこもっていればいいんです。  と言うか、一生『巣』に引きこもってて下さい。」 「……そうなった場合、私は――さんを糧にしなくてはいけないわね。  となれば必然的に、――さんも私と共に『巣』に篭る事になるけれど?」 「あー……二人とも、とりあえず仲良く……。」 ぎろり。 「――さん、少し黙ってて下さる?」 「少し静かにしててね、お兄ちゃん?」 何故かこんな時だけ綺麗に揃う二人。 「……ういっす。」 でもって、あっさり従ってしまう俺が居たり。 いやほら……折角の外出なのに、いきなりスプラッタとかちょっと嫌な訳ですよ。 「とは言え、このままだとずっとお出かけ出来ないしなぁ……。」 ……むぅ。 ならば仕方が無い。 「右、左……よし。  暫く人は来そうに無いぞ、と。」 人影を確認した後、俺は言い争いを続ける二人の背後にこっそりと近づいて。 「ていっ。」 むにゅん。 むにっ。 「きゃっ!?」 「ひゃんっ!?」 いきなり鷲掴みにされ、驚きの声を上げる比良坂とお嬢ちゃん。 ……何処を鷲掴みにしたかは察してくれ。 「い、いきなり何を……。」 「お、お兄ちゃん……。」 「はいはい、喧嘩しないの。  今日は二人とも仲良くお出かけするんです。」 むにゅむにゅ。 むにむに。 「あっ……。」 「やんっ……。」 「でもって、仲良く出来たら俺からご褒美をあげようかなって思ってるんだけどなー。」 と言っても、俺の懐具合だと安物の服を1着って所だろうけど。 「そう言う訳なので、二人とも喧嘩しないの。」 鷲掴み攻撃を止め、俺は二人の様子を伺う。 「「……。」」 「あ、あれ……?」 何故か頬を赤く染め、俺を見上げるお嬢様方。 こ、これは……やり過ぎちゃいましたか? 「これはその……喧嘩してる比良坂とお嬢ちゃんの動きを止めようとした  だけでありまして……。」 「……馬鹿。」 かぷっ。 「う……。」 首筋に甘噛みをする比良坂。 比良坂がこの行動を取ると言う事は……。 「……お兄ちゃんが悪いんだもん。  わたし達に、えっちな悪戯するから……。」 さわさわ。 「あぅ……。」 比良坂に合わせるように、ズボンの上から我が息子を撫で回してくるお嬢ちゃん。 「とは言え、――さんの言う事も一理あるわ。  ……そうでしょう、小娘?」 「……仕方ありません。  今回だけはお兄ちゃんの顔を立てて、比良坂さんと仲良くしましょうか。」 がしっ。 がしっ。 にこやかに笑みを浮かべつつ、俺の腕を取るお嬢様達。 そのまま、何故か家の方に俺を引きずっていく。 「え……あの、比良坂さん?」 「ふふ……『主』に淫らな事をした『贄』には、其れ相当のお仕置きをしなければ……ね?」 ずるずる。 「お、お嬢ちゃん?」 「えへへ……ちゃんと比良坂さんと仲良くお仕置きしてあげるね、お兄ちゃん♪」 ぱたん。←玄関の閉まる音。 ――でもって、数時間後。 商店街。 「……――さんの、えっち。」 「……お兄ちゃんの、ケダモノさん。」 「仕掛けてきたのはそっちでしょ!?」 ショーウィンドーを眺めながら満足そうに俺の腕を取る二人に対し、心からのツッコミを入れる。 「…途中からは満更でも無かったように見えたけれど?」 「……そうでも無い、と思いたい。」 多分違う筈。きっと。恐らく。 「……玄関の扉に私を押し付け、容赦無く犯した癖に。」 「げふっ。」 「玄関のチャイムが鳴ってるのに、わざと腰を動かして……わたしのナカを楽しんでたのに。」 「ぐふっ。」 的確な言葉の刃が、俺の心に刺さりまくりです。 「まだ何か言う必要があるかしら、――さん?」 「それとも、もっとさっきのお話をした方がいいのかな?」 「すみませんでしたごめんなさい。俺がとっても悪かったです。」 俺、全面降伏。 「ふふ……――さんは相変わらずケダモノなのだから。」 ぴとっ。 「えっちなケダモノさんだもんね、お兄ちゃん♪」 ぴとっ。 何故か嬉しそうに身体を預けてくる比良坂とお嬢ちゃん。 ……これはつまり。 「そんな――さんは、私が責任を持って管理しなければ……ね?」 「ケダモノさんが暴走しないように、わたしがちゃんとご奉仕するんだもん♪」 「……二人とも結構お悦びですか。」 あーもう。 暫くケダモノ自重しようと思ったけど、こんな風に笑みを浮かべられたら自重出来ません。 「って……本来の目的を忘れるところだった。  今日は何か買うものがあるんじゃ無かったっけ?」 俺はぴったりと引っ付いたままのお嬢ちゃんに問いかける。 「んー……お兄ちゃん、本当に付き合ってくれる?」 じー。 「勿論。…と言っても、俺はセンス全然無いから服とかだったら役立たずだけどね。」 「それは大丈夫だよ。  ……って言うか、お兄ちゃんじゃないと意味無いもん。」 「……はい?」 「準備出来たよ、お兄ちゃんっ。」 「ういっす。」 試着室。 俺はお嬢ちゃんの声を合図に、試着室の中に入る。 すると。 「……どうかな?」 其処には、白と青のストライプの下着に身を包んだお嬢ちゃんが。 「うむ、お嬢ちゃんに凄く似合ってると思うですよ。」 「ホント?」 「うい。  つーかお嬢ちゃんは元が良いんだから、どんな服も下着も似合うと思うよ?」 「良かった……とりあえず、第一段階はクリアだね。」 「……第一段階?」 「ん♪」 俺の問いに、お嬢ちゃんは笑みを浮かべながら。 「……えいっ♪」 ぴとっ。 すりすり。 「ぬ、お……?」 お嬢ちゃんが俺に抱きつき、そのまま身体に擦りつく。 「えへへ……どう、お兄ちゃん?」 「な、何が?」 「……えっちな気持ちに、なってくれた?」 じーっ。 「……なってません。」 そう言いながら、俺は上目遣いで見つめるお嬢ちゃんから目を逸らす。 「…本当に?」 すりすり。 「……ちょこっとだけなりました。」 「……ん♪」 ああ、俺って相変わらず駄目人間……。 「じゃあ、その下着を買うって事でいいのかな?」 「うん。  お家に帰ったら、この下着でいっぱいお兄ちゃんを誘惑するんだもんっ。」 「……これ以上ですか。」 ……これ以上ケダモノさんになったら、本格的に人間廃業だと思うんだけど。 「で……気のせいだとは思うんですが、その手に持った下着は何ですか比良坂さん?」 「…は?」 お嬢ちゃんの言葉を聞き、俺は振り返り背後を見る。 すると。 「……随分と小娘の下着を褒めていたようね?」 「うをっ!?」 ぎろり、と俺を睨みつける比良坂が。 つーか、全然気配とか何も感じなかった……って、それぐらいは出来るよな。 最近完全に忘れつつあるけど、女郎蜘蛛だし。 「まったく……――さんは私の『贄』であるという自覚が足りないのでは無いかしら?」 そう言いつつ、比良坂は持っていた下着を俺の目の前に。 ……これ、結構エロい下着ですよ?しかも紐パンだし。 「……これは?」 「それが下着以外の何に見えるのかしら?」 「そりゃ俺にも下着に見える。  問題は、何故これを俺に渡すかって事なんだが。」 考える。 ……考えた。 「まさか比良坂……これを俺が穿けとっ!?」 「違うわよっ!」 「ひ、比良坂さん……ついに其処まで歪んでしまったんですねっ!」 「貴方も合わせなくて良いわよ、小娘っ!!」 俺とお嬢ちゃんのボケにきっちりと突っ込んでくれる比良坂。 ボケた方としても非常に有難い。 「まあ、冗談はこれぐらいにして……つまりは、俺に着替えの手伝いをしろと?」 「ええ、その通りよ。  それとも……まさか断るとは言わないでしょうね、――さん?」 きゅ。 むにゅん。 比良坂が俺の腕を取り抱きしめる。 すると当然……結構大きめな胸が自己主張してくる訳で。 「…し、仕方無いな。  『贄』として、比良坂の言う事は聞かないといけない訳だしな。うん。」 「ふふ……物分りが良くていい事。  そんな――さんには、たっぷりとご褒美をあげなくては……ね。」 すっ。 ゆっくりと俺の頬に手を伸ばす比良坂。 「…ちなみに、どんなご褒美なんだ?」 「それは……――さんが一番分かっている事では無くて?」 比良坂がゆっくりと目を閉じる。 「……そうだな。」 俺も比良坂の頬に手を添え、ゆっくりとそのご褒美を……。 がぶり。 「……痛いです、お嬢ちゃん。」 「……うーっ。」 味わえませんでした。 つーか、割と本気で手を噛まれてます。 「お兄ちゃんの馬鹿、変態、えっち、ケダモノっ。  比良坂さんにあっさり誘惑されちゃ駄目だもんっ。」 「あら、私はただ着替えのお手伝いをお願いしただけに過ぎないわ。  ……まあ、それで――さんが欲情してしまったのなら仕方無いけれど?」 かぷっ。 「こ、こら……。」 「小娘のような噛み方はしないから、安心なさい。」 お嬢ちゃんと同じように、比良坂も俺の指を口に咥える。 そしてそのまま甘噛みしたり、舌で舐ったり……って。 「ひ、比良坂っ……。」 「ちゅっ……どうしたのかしら、――さん?」 一旦口から離し、薄く笑みを浮かべる比良坂。 「それとも……何か別の事でも思い浮かべてしまったのかしら?」 「……五月蝿い。」 『とある行為』を激しく思い浮かべてしまったけれど、このまま流されるのも癪なので否定する。 「……なら、思い浮かべるまで続ける必要がありそうね……んっ。」 「うぁ……。」 再び指を口に含み、舌を動かし始める比良坂。 しかもご丁寧に、俺を上目遣いで見つめる徹底振り。 「うううっ……。」 い、いかんっ。 このままだと、とてもいけない方向に向かってしまうっ。 「おーにーいーちゃーんー……。」 「はっ!?」 声の方へ振り向くと、俯いたままふるふると全身を震わせるお嬢ちゃんが。 ……これは不味い。物凄く怒ってる感じですよ? 「ええっと、コレはつまりその、色々な事がありまして……。」 「…………もん。」 「……え?」 「……比良坂さんには、絶対に負けないもんっ!」 ぱくっ。 「うおっ!?」 何故か知らないけどお嬢ちゃんも俺の指を咥えてるー!? 「ちゅるっ……お口でするのは……んっ……わたしの方が、上手だもんっ……あむっ。」 「はぅっ…!?」 あまりの気持ちよさに、思わず声が出てしまう。 「ちょ、ちょっと待った。  比良坂もお嬢ちゃんも、試着の途中だから!」 そう言って、俺は慌てて二人の口内から指を引き抜く。 「……。」 「むー……お兄ちゃんが誤魔化したー。」 不満そうに見つめる人外お嬢様二人……と言うか、一人は言葉にしてるけど。 「ああもう、そう言うのは後で幾らでもしていいから。  兎に角今は、ちゃんと下着を選んでとっとと買いなさいっ。」 「……仕方が無いわね。」 「お兄ちゃんがそう言うなら……。」 俺の言葉を聞き、何とか二人の素敵な誘惑……もとい、暴走は止まったようだ。 ……残念じゃないぞ。全然残念なんかじゃないんだからな。 ――その後。 俺と比良坂とお嬢ちゃんと三人で、イチャイチャしたりラブラブしたりしつつも お買い物やらウインドウショッピングやらと済ませ、家に戻ってきた。 ……戻ってきた、訳なのだが。 「……で、何故に帰ってきて早々に俺は拘束?」 玄関の扉を閉めた途端、お嬢ちゃんの力によって金縛りにされ。 そのまま動けない俺を比良坂がゲット。 でもって、比良坂に担がれた俺は自室のベッドに転がされ、ご丁寧に素っ裸にされた後、 手足を蜘蛛の糸でベッドの四隅に固定されて今に至る、と。 「あの……俺、何か二人のご機嫌を悪くするような事をしちゃいましたか?」 「ええ、その通りよ。」 「わたし達、お兄ちゃんに怒ってるんだもん。」 しゅるり。 ぱさっ。 「って、何故に服をお脱ぎですかっ!?」 俺に見せ付けるように、自らの衣服を脱ぎ捨て、下着姿になる二人。 しかも、二人とも今日買った下着をちゃんと身に付けてるし。 「小娘にあっさりと誘惑されて欲情してしまう愚かな『贄』には、お仕置きが必要よね?」 「比良坂さんのお口じゃ全然感じないように、今日はお兄ちゃんにきっちりとお仕置きです。」 二人はくすくすと笑いながら、俺の方に近寄ってくる。 「いや、ちょっと待とうよ比良坂にお嬢ちゃん?  今日はもうえっちな事は無しにして、大人しくお休みした方がいいんじゃないかなと……。」 俺は最後の良心をフル稼働させて、説得を試みる。 「……此処をこのようにさせて、説得力があるとでも思っているのかしら?」 なでなで。 「もう……お兄ちゃん、すぐに大きくしちゃうんだから……えっち♪」 さわさわ。 ……駄目でした。主に俺自身が駄目駄目でした。 つーかぶっちゃけ、二人が下着姿になった時点で大きくしちゃってたんだけどさ。 「と言う訳で、今日はお兄ちゃんのこの悪いおちんちんを……。」 「……果てるまでお仕置きするから、覚悟なさい。」 くすり。 薄く笑みを浮かべるお嬢様二人。 それに対し、俺は……。 「……宜しくお願いします。」 白旗を揚げるしか出来なかった。だって縛られてるし。 ……いやまあ、元から逆らうつもりなんて無いんだけどさ。 何故なら……この後の結果が、なんとなく読めたから。 でもって、暫く後。 「くっ……。」 びゅくんっ。 「んんっ…!」 比良坂の口内に、何度目かの射精。 そして、いきなりの射精に比良坂の動きが止まる。 「…大丈夫か?」 「ん……ふ、んっ……。」 ごくん。 俺の言葉に反応するかのように、比良坂が口に溜まっていた精液を飲み込む。 「こ、これで……っ。」 「あー……ごめん。  比良坂が俺のを飲んでくれたかと思うと……。」 幾度となく出したにも関わらず、俺のモノは再び大きくなっていたりする。 「お、お兄ちゃん……。」 「……って、小娘!?」 お嬢ちゃんが俺のモノの上に跨る。 「今日は――さんをお仕置きすると、自分で言っていたでしょう!?」 「言ったけど……もう無理だもんっ。  お兄ちゃんの白いの、いっぱい飲んじゃって……わたし、もう……。」 そう言いながら、自分のアソコをゆっくりと押し広げるお嬢ちゃん。 其処はすでにびしょびしょに濡れていて……俺のモノを入れる準備が整っていた。 「だからと言って、そうなったら私達はまた、――さんの思うがままに……。」 「……ごめんなさい、比良坂さんっ。」 くちゅり。 「うあっ……。」 「ひゃあんっ……!」 比良坂の言葉を無視し、お嬢ちゃんが一気に腰を落とす。 そうすれば当然、俺のモノがお嬢ちゃんの中に挿入される訳で。 「き、きついっ……。」 今まで相当焦らされてたからなのか、お嬢ちゃんのナカは何時も以上に窮屈で、 俺のモノを容赦無く締め付けてきた。 「……っ。」 当の本人であるお嬢ちゃんは、遠くを見つめたまま小さく震えている。 ……って、もしかして。 「お嬢ちゃん……まさか、挿れただけで……?」 「……お兄ちゃんが悪いんだもんっ。  わたしにいっぱいごっくんさせたのに、いつまでも降参しないからっ……。」 くちゃっ。 「くぅっ……。」 「だから……今度、はっ…お兄ちゃんと、んっ……一緒に……あんっ!」 ゆっくりと腰を動かすお嬢ちゃん。 …ヤバイ。 コレは、そんなに持たない……っ。 「…――さんっ。」 ちゅっ。 「んっ!?」 突然、比良坂が俺の上半身に覆いかぶさり、無理矢理唇を重ねてくる。 「な、比良坂……んっ。」 「ちゅっ……小娘なんて、見させないわっ……んんっ。  ――さんは……私だけを見ていればいいのよっ。」 お嬢ちゃんの行動で、どうやら比良坂も我慢出来なくなったらしい。 「次は私なのだから……分かってるわね、――さん?」 で、結局。 「…すー……。」 「……おにいちゃぁん……。」 俺に縋りつき、ぐっすりと眠るお嬢様二人。 まあ、つまり……結局はいつも通りになりました。 「さて……今日もばっちり勝利したのはいいんだが。」 ……この蜘蛛の糸、何時解いて貰えるんだろうなぁ。